#51 朱音を追うのよ!
「……あれ?そういえば朱音は?」
紺はキッチンが散らかったまま、朱音の姿がない事に気付いた。朱音はいつもキッチンを綺麗に、清潔に保っている。妥協はしない。そんな朱音がキッチンを散らかしたままにしている事を不審に思った紺は首を傾げる。
「朱音……?」
『のよ。』
「どうした?幼女?」
『幼女じゃないのよ、シャロットなのよ。それはそうと、遂に最強の相手が闇に喰われたみたいよ?』
「なっ⁉︎まさかっ……朱音がか⁉︎」
『のよ。』
紺は小さく頷いたシャロットを押し退けて廊下に出た。しかし、そこには誰の姿もなかった。
『どうやら外に出てしまったみたいなのよ。ロリ紺、お前は朱音のことを見てなさ過ぎたのよ。』
「俺は……そんなつもりは。それに、朱音は俺に辛く当たるし、嫌われてそうで。」
『お前はヴァカなのよ。でも、朱音を倒せば闇も残すところ……とにかく、いまは朱音を追うのよ!』
「わ、わかった!場所は特定できるか?」
『完全には無理なのよ。でも…』
シャロットのアホ毛がピンと跳ねる。
シャロットはアホ毛の導きのままに、玄関から飛び出して、小走りで道を突っ切っていく。
紺はそれを全力ダッシュで追うが、あの小走りは極めて速い。
途中、ブロック塀やポストが粉砕されているのを横目に走る。もし、アレが朱音の仕業なら、一撃を喰らうだけでとんでもないことになる。
公園を通りすぎると、嫌でも目にうつる倒れたブランコ、ひしゃげた滑り台、空を仰ぐ鉄棒。
「お、おいシャロット!これ今までの比じゃねーぞ⁉︎どういう事だっ!」
『心の闇が大きいほど、闇は強くなるのよ!朱音の闇はとてつもなく大きいみたいなのよ!それもこれも、全部お前がロリコンだからなのよ、朱音は嫉妬しているのよ。嫉妬の闇は厄介、心してかからないと、最愛の妹に殺されることになるのよ、覚悟は出来てるのよ?』
「朱音に殺されるなら本望だよ!……まぁ、出来れば死にたくはないがな!」
『ロリ紺、今回だけは……』
「な、なんだよシャロット?」
『な、なんでもないのよ!そろそろ追いつきそうなのよ。ロリ紺、とりあえずキッスなのよ!』
「仕方ない、こい、シャロット!」
シャロットは振り返って後ろ走りになり、ぴょんっと紺に抱きついた。そしてその塞ぎ慣れた唇を小さな唇でしっかり塞ぐと、舌を絡める。
幼女は光になり、紺の身体に溶けるようにして消えた。
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