#52 兄妹喧嘩勃発なのよー!


「やっと見つけたぞ、朱音?」


 紺が辿り着いたのは、隣町の河原だった。その河原で一人佇む少女は朱音だ。

 朱音は声に気付き、ギリギリと首を曲げると紺をじっと見やる。そして小さくほくそ笑み、


「紺兄、ははっ、こんにぃだ!どうしたの?わたしを捜してこんなところまで来たの?」


「朱音、こんな所で何を。帰って皆んなで夕飯を……」


「……皆んなで?いつから紺兄はさ、皆んなのお兄ちゃんになったの?」


「え、いや俺は別に……」


「小学生を手懐けて、何を企んでるのか分からないけどさ、……マジでキモいよ。

 ……だから、皆んな消しちゃう事にしたよ?」


 朱音はそう言ってケタケタと狂気に満ちた笑い声を上げた。


「朱音!お前は闇に付け込まれてる!藍音や凪子ちゃんの時に見ただろ⁉︎今、それがお前を…!」


「違うよ紺兄?……この感情は、わたしの……

 当真朱音そのものの感情だよ!あっはははは!凄い力だよ!これなら凪子ちゃんにも勝てる!勿論、紺兄にだって……勝てるよ!」


「お、おい……シャロット?朱音は闇に操られてるんだよな?」

『最悪のパターンかも、なのよ。朱音のやつ、闇を逆に取り込んで自分のものにしているかもなのよ……つまり、皆んな消しちゃいたい気持ちは闇の仕業じゃなくて、朱音が本気でそう思っているのよ。お前が誰かに取られるのが嫌で、

 …………嫉妬しているのよ、朱音は。』


「……嫉妬……でも、そんな素振りは……」


『ずっと見せていたのよ、お前にずっと、SOSを送っていたのよ、朱音は。』


「俺が……気付いてやれなかった?」


 朱音は闇の瘴気を纏い力を高めていく。凄まじいまでの力を全身に浴びた紺は一歩後ずさり踏ん張る。


「安心してよ、紺兄は殺さないでいてあげる!憎いのは……紺兄に寄ってく邪魔なやつらだけ!

 ……一番めちゃくちゃにしてやりたいのは……


 …………元凶の幼女やろうだぁっ!!!!」


 見えない衝撃波が紺を弾き飛ばした。河原の地面を転がって数メートル先へ飛ばされた紺は体勢を整え地面を蹴る。そして転倒せずに朱音と対峙した。


「お、おい……シャロット。お前にめちゃくちゃ怒ってるぞ⁉︎」

『のよ。』

「のよ、じゃねーよ!」


『ごめんなさい、なのよ。……これ見よがしにキッスをしたわたちのミスなのよ。

 ……朱音がそんなに怒ってるとは思ってなかったから、ちょっとショック……』しゅん……


 割と真面目にショックを受けたシャロットは紺の中で項垂れた。


「と、とにかく朱音を止める!シャロット、協力しやがれ!朱音を止めないと大変な事に。……プリンを食えなくなってもいいのか⁉︎」


『それは駄目なのよーっ!』


「なら行くぞ!」



 紺は辺り一面に魔方陣を展開、その全てから拘束魔術の鎖を放った。

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