#50 ハーレム


 ここ、当真家には今日もJS達が集まってくる。

 JSアイドル那月環奈は、紺を連れ回し、空手有段者の凪沙凪子は組手と称して戯れ、霊感少女みくりは新たなお友達を憑かせながら甘え、膝には可愛い妹、藍音ちゃん、もう片方には、吸血少女せつな、言うまでもなく、せつなは首元に噛み付いて離さない。


 一言で言って、大人気である。もはや、当初の目的、紺のロリコンを更生させる、は皆無。結局、皆が懐いてしまったのだ。

 おまけに幼女にまでキスされる紺を、キッチンから睨みつけるのは、今だに素直になれない朱音だ。



 あの時、……せつなとの戦いは、幼女神シャロットの活躍によって幕を閉じた。

 シャロットは心底機嫌が良さそうだ。赤い水筒を大事そうに両手で抱えながら、冷蔵庫を開ける。


「あ、シャロット!……プリンはご飯を食べてからに……っ」


『のよのよ?……素直じゃない朱音なのよ?』


「アンタ、ほんとムカつくよね。」


『褒めるななのよ、照れるのよ。朱音もツンツンしてないで、デレちゃえばいいのよ!』


「意味わかんないし。あんなロリコンのどこが皆んな……馬鹿みたい。」



 そんな朱音は置いてけぼりで、JS達は近いうちに訪れる、クリスマスの話題で持ち切り。紺にプレゼントを予約しているようだ。


「おい、待て!妹達なら分かるが、なんでお前らの分まで買わなきゃならん!」


「えー、ケチ!」と、環奈。

「ケチ!」と、凪子。

「ケチケチ!」と、みくり。

「ケチケチー!」と、せつな。

「紺にぃに、ケチなの?」と、藍音。


「あー、わかったわかった!何でも好きなもの言え!ただし、一人頭、五千円まで!」


 金額指定に大ブーイングが巻き起こるが、紺もそこは譲らない!


『のよ!五千円分のプリン!』


 シャロットも踊り出し、お祭り騒ぎに。朱音は、はぁ、と溜め息をつく。そんな朱音に紺が言った。


「朱音も何が欲しいか考えとけよー?」


「なっ……べ、別に、何でもいいよ……」


 朱音は一人、リビングから出ると、廊下で俯いてしまった。欲しいものだって、本当はある。ファンシーショップに置いてあった可愛い鞄が欲しいのだ。

 しかし、朱音はそんな事を言えない。素直になれないでいる。

 いつしか朱音は、紺に懐いていく友達や妹達に、いけない感情を抱き始めていた。皆んな……


 皆んな……


 みんな……



 ……消えちゃえばいいのに……



 ……ソウダ、ミンナケシテシマエ……



 ……え?……だれ?……



 ……ミンナケシテ、ヒトリジメシテシマエ……



 ……そ、そんな事……



 ……モット、カンタンナホウホウモアル……



 ……簡単な、方法?……



 ……ウバッチマエ、ソンナヤツノ命ナンテ、


 ……ウバッチマエバ、ダレノモノデモナクナル、


 ……ナラ、オマエノソノキモチモ、


 ……ハレルッテモンダ!……ドウダ?


 ……チカラヲ、カシテヤロウカ?


 ……ジャマナ神サエモ、凌駕スルチカラヲ、


 ……オマエナラ、ヤレルサ……


 ……トウマ、アカネ、キミハ、ツヨイカラ……


 ……深炎の……魔力……私の……力……


 ……ソウダ、ユダネロ……我ニ、ユダネロ!



 ……紺兄……私の紺兄、私の、私の私の私の私の……私のだ……紺兄は私のお兄ちゃんだ……ダレノモノでもない、私のっ……


 紺兄、大好きっ……違う……大嫌いっ……そんな、こと、違うよ、好きだもん……嫌いだもん……


 ……ワタシハ……紺……ニィ……タスケ、……



 …………

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る