#49 のよのよダンス


 遂に力尽きたか、幼女神シャロットは真っ白な地面にぽとりと落ち、動かず、勝負は決したかに見えた。

 闇喰はピクリと動かないシャロットにフラフラと近付く。そしてトドメを刺すべく、力を溜め始めた。巨大な闇の球は急激に大きくなり、シャロットの真上で落ちる時を待つ。そして、その時はすぐにきた。


 人の形をした、……せつなの形をした闇のそれは、右手を天に振り上げ、勢いよく振り下ろした。それを合図に、巨大な闇弾が落下をはじめた。

 ゴゴ…と禍々しいオーラを撒き散らしながら地面に這う憐れな神を呑み込んだ…



 かに見えた。


『甘いのよ…わたちは神なのよ、そんな簡単には負けられないのよ!』


 間一髪、ピョンと立ち上がったシャロットは落ちていた水筒を拾うとその栓を開けた。すると。闇の塊、闇喰の放った闇弾がその中に吸い込まれていく。……全てを吸い取ると、シャロットはすぐに栓を閉め、『にっしし』と、嬉しそうに笑う。

 そして、……


『のよ、のよ。のよよのよ!のよ、のよ。のよよのよ?』


 ぴょんぴょん跳ねては踊り始めた。


『のよ、のよ。のよよのよ!のよ、のよ。のよよのよ?』


 謎だ。全くもって謎の動きである。すると、その謎のダンスに反応するように、声が聞こえてくる。どこからか聞こえてくるその声は、シャロットのそれと同じ声だ。…一人、二人、声が増えていく。

 極めて憎たらしい声が何重にも重なり合い、その奇声?に耳を塞ぐ闇喰。


 更に増える。まだ増える!気が付けば、闇喰の周囲には無数の幼女神シャロットが取り囲んでいる。


『秘技、のよのよダンス!…この技は使えないと思ってたけど、お前の魔力を拝借したから使えたのよー!のよのよよ〜ん!』


 見渡す限りの幼女、見渡す限りのシャロット、見渡す限りのウザさ!……『のよ!のよ!』『のんよよん!』『のよのよ!』『のんよ?』

『のよーーーーーーっ!!!!』


 一斉攻撃が始まった。無数のシャロットは闇喰に突撃しては跳ね飛ばされ、突進しては跳ね飛ばされ、たまにプリンを一口食べ、気を取り直し突撃する!……徐々に闇喰にダメージが蓄積されていく。足元がフラつき抵抗する瘴気の塊が遂には打ち消される。


『にっしっし!トドメなのよーー!』


 一つになったシャロットは数ミリだけ大きくなり元のサイズに。とはいえ、小さくなっていたのに気付かないくらいのサイズ変化ではあったが。

 それは置いておいて、一つになったシャロットは赤い水筒を構える。


 ……そして、闇喰を……



 ………………


 ……








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