#43 プリンはわたちのもの
『のよのよのよよ、のよのよよ〜ん♪』
神、シャロットは上機嫌だ。我が物顔でリビングをぴょん、ぴょんと徘徊しながら肩から下げた赤い水筒を両手で抱える。
「何アイツ、機嫌良いよね…」
朱音はそんなシャロットを呆れた顔で見ては頭を抱えた。シャロットはそんな朱音を気にすることなくソファにドンと座りテレビをつけた。
今日は夏休み後の初めての日曜日、お昼にはお笑い番組。シャロットは毎週この番組を見るのが日課になっていた。
『のよよ!』
「は、反応がいちいちウザい…」
朱音はいつものようにキッチンに立つ。昼食は何を作ろうかと悩んでいると藍音が冷蔵庫を開けた。
冷蔵庫にはプリンが一つ。
藍音はテレビに夢中なシャロットの隙をついて最後の一つのプリンを胃袋におさめる腹づもりだろうか。
朱音は見て見ぬ振りで藍音にプリンを譲ってあげる。そこは姉として涙をのんで譲るのだ。
因みに紺は出かけている。誰とかというと、那月環奈である。これは朱音には内緒の話だ。
あの一件、環奈ははっきり記憶が残っている。あれからというものの紺はしつこく環奈に言い寄られているのだ。好奇心、そんなところだろう。
それはそうと、
藍音がプリンに手を伸ばした時だった。プリンがフワリと浮いて藍音の顔の横を通り過ぎる。
「……あっ、プリンが…!」
プリンはフワフワと飛んでシャロットの頭の上に着地する。シャロットはそれを短い手でなんとか取ると封を開け、躊躇なくプリンを捕食、ゴミを床に放り投げる。
藍音は瞳に涙を浮かべる。朱音の怒りは遂に限界を迎える。
「ちょっとエロ幼女!それは藍音が食べようとしていたんじゃない!アンタは既に私の分まで食べたでしょうがっ!」
包丁片手にゲキを飛ばす朱音をこの上ないくらいの憎たらしい顔で見上げたシャロットは逆ギレする。
『うるさいのよ!世界のありとあらゆるプリンはわたちの為に存在するのよ!ストックがないのが問題だと思うのよ?買って来て欲しいならお金を渡すのよ!』
「はぁ〜?アンタに頼んだらほんとにプリンしか買って来ないでしょ!無理!そしてシャロットは昼ごはん抜き!」
『の、のの、のんよぉ⁉︎そ、それは勘弁なのよ!嫌なのよ嫌嫌嫌なのよーー!』
駄々をこねる神。冷蔵庫の冷気に当てられて落ち込む藍音。包丁片手に激昂する朱音。
これが最近の当真家の日常である。
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