#42 気まずい関係?
紺は桜と共に屋台を回りながら妹達を捜していた。
辺りを見回して歩く紺の少し後ろでゆっくりついていくのは桜。
そんな時、桜の肩にすれ違う人の肩がぶつかる。
「きゃ…」
桜の立派なソレは激しく揺れては浴衣が少しはだけてしまった。紺はそんな桜の手を取り、
「大丈夫?」と。
桜は顔を真っ赤にして、
「う、うん大丈夫!仕方ないよ、人がいっぱいいるしね。」
とにかくこの二人、会話がぎこちない。
それもそのはず、紺は一度この九重桜の告白を断っているわけで。
しかもクラス一の美少女だった彼女を。
理由は妹達の面倒に追われていてそれどころじゃなかった、というものなのだが、桜はそのショックを拭い切れず大学進学まで取り消すくらい落ち込んだのだ。
紺には内緒だが、大学には最初から行かなかった。それほどのショックだった。
しかし今、またこうして二人で歩くチャンスが訪れている。内心、浮かれて仕方ないのだ。
「と、当真君、あれ…」
「ん?射的かぁ。九重、お前なんか取ってほしいものあるか?射的は得意だぜ?」
「え?そ、そうだなぁ…アレなんか、いいかな。」
桜の指さす先には可愛いぬいぐるみ。ここでそれを選ぶのもまた桜の作戦だろうか。
「よし、任せとけ。」
……
……
「と、当真君…ごめんね何か…」
「は、はは…なんてこたねーな。」
目的のぬいぐるみをゲットする為、小銭を全て費やした紺だった。
そんな二人の前を気分良さげにピョンピョン跳ねながら歩くのはシャロットだ。シャロットはフランクフルトを二本持ち食べ歩いていたのだが、
『のんよ⁉︎』
敢え無く転倒。服がケチャップだらけになってしまう。ピョンと起き上がり砂にまみれたフランクフルトを見てシュンとする神の姿には哀愁を感じる。
シャロットはフランクフルトを紺と桜に無理矢理手渡しては再び屋台の海へ消えていった。
「ど、どうすんだよ、これ。」
「う、うん…どうしよっか。」
桜は紺に取ってもらった熊のぬいぐるみを片手に困った表情を浮かべた。
そして時間は過ぎて空は暗くなる。
メインイベントの打ち上げ花火が上がり、二人はそれを見上げていた。側から見れば、二人は恋人同士なんだけど。
周りには幻想的な花火の光に感化されたカップル達。中にはキスなんかするペアもいて、二人は少し、気まずい気分になる。
「なぁ九重?」
「…何?当真君?」
「あ、いや…なんで俺だったのかなって。」
紺は空を見上げたまま、徐ろに言った。
桜は同じように空を見上げ、
「それ、聞いちゃう?」と笑う。
「…だな。」
二人を照らす花火を少し離れた場所から眺める妹達の視線に気付くことなく、紺と桜は花火を堪能するのだった。
答えがでるのは、まだ先になりそうだ。
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