#38 お前にキッスは百年早いのよーー!

 


 色のない路地裏に赤い血が散る。それは壁を、そしてコンクリートの地面に飛び散りモノクロに溶け込んで消えた。


「ぐおぉ…こりゃ…キツい…ぞ…」


 裂かれた紺の両肩からとめどなく流れる血を見てはほくそ笑む環奈。彼女は地面に膝を落とした紺に歩み寄り、その小さな唇を近付けては悪戯に笑う。


「お兄さんのカラダ、…が、ホ…ゔっ…シ…」


「環奈…ちゃ…ん…?」


「…げ…っ…」


 環奈の様子は明らかにおかしい。紺に何かを伝えようとしている、しかし、声にならず意識を奪われていくのだった。やがて環奈の気配は消え、完全に闇喰に身体の主導権を握られる。


 環奈は仕切り直しとばかりに紺に迫る。しかし、


「…ぐっ…あま…いぜ…闇喰…!」


「…⁉︎」


 後方から繰り出した紺の拘束魔術が環奈の身体に絡まる。紺は少しずつ、その数を増やしていく。


「…っ!…やめ…っ!」


「まだ…まだだ…!…」


「くっそぉがぁ…モウスコシだト言うノ…に!…キサマ…カラダをよこセがぁおぃ…!」


 鎖の効果は長く保ちそうにない。強力な力で次々と拘束を解いていく環奈は眼を血走らせ奇っ怪な雄叫びを上げる。

 残り一本、この鎖が解かれると紺に打つ手はなくなってしまうだろう。


 その時、


『のんよーーーーーーーー!』


 空からあの声が聞こえてくる。


『ロリこぉーーーーん!キッスなのよーー!』


(くっそ…遅いっての…)


 シャロットはそのまま地面に墜落する。数秒、地面で死んだように見えた神はぴょんと飛び起きては目の前の環奈を指指し小さな胸を張る!


『のんよ?お前なんかがロリ紺の唇を奪うなんて、笑わせるななのよ!』


「貴様…ナニものダ?そこをドけ!」


『お前にキッスは百年早いのよ!さ、ロリ紺!

 わたちとキッスなのよ!』


 シャロットは振り返りぴょんと跳ねては、ダイレクトに紺の唇を奪う。


「ぬがっ⁉︎い、いきなりっ?って…ゔぁぅ…」


 シャロットは紺の身体に溶け込んでいく。紺の傷は癒え、魔力は格段に増幅する。神の力を器に取り込む事で発揮される力を紺は一気に放出する。


 それは強力な渦を路地一帯に発し、環奈をその場から弾き飛ばした。


「形勢逆転、だな!お遊びは終わりだ!」


「くっ…くくっ…」











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