#35 協力者
紺はそこで環奈の帰りを待つ事にした。
そんな紺に先程とは違う警察官が声をかける。帽子を深くかぶったその人物は紺の隣で視線を合わせずに語りかける。
「何をしている?…捕縛者、こんなところで呆けている時間はないぞ?」
「お、お前は…」
紺に話しかけたのはシャロットの協力者だった。あの夜から二日後、紺はシャロットに連れられて彼に会いに行っていた。
一連の事件の後始末を担当する神の使徒、と彼は名乗り数十時間後、つまり今この時間帯に闇が動くとの情報を伝えたのだ。
闇喰を滅すること、それはこの世界の為だと彼は言った。紺が具体的な理由を教えろと言い寄るがそれには答えなかった。
朱音の提案をのんだのは、今回のターゲットが那月環奈だろうと協力者が言っていたからだ。環奈の近くにいれるこのポジションはそれなりに都合が良いと紺は思ったのだろう。
嫌々なフリをしながら護衛に従事する紺は協力者に言った。
「何言ってんの、ちゃんと環奈ちゃんは見て…」
「那月環奈は現在、闇喰の憑依したストーカーに追われている。場所はライブハウスの裏で捕まるのは時間の問題だ。」
「なんだと?…ライブハウスの裏道だな!すぐに行く!」
「待て、お前…シャロットはどうした?」
「…あ…そういえばあの野郎…賞味期限切れ間近のプリンを全部食べた後に駆けつけるって言ってたんだけど、まだ来てないな…こんな時に…」
「…あの人形が。お前は那月環奈を探し出せ。…あの人形は俺が見つけて連れてくる。
行け、時間はあまりないぞ?」
紺は頷きライブハウス裏へ走った。途中、数人のファンとすれ違いながら路地裏へ着いたがそこに環奈の姿はなかった。
ふと地面に光るものを見つけた紺はそれを拾う。
「これは…コンタクトレンズ?」
紺はそれをポケットに入れて暗い路地裏の更に奥へ走って環奈の名を呼んだ。
「くそ、こんな時にシャロットがいれば…場所を特定してくれるんだが…」
…
その頃、当真邸。
『お腹いっぱいなのよー!のよのよー!』
プリンの在庫処分を完了した幼女は満足そうにお腹をさすっている。
朱音はそれを見て頭を抱えた。
「あんたね…どうでもいいけどゴミくらいは捨てなさいっての!」
『のよのよ〜?もしかして怒ってるのよ?最近、ロリ紺が皆んなを手懐けてきたから怒ってるのよ?
のんよーー!朱音は素直になれないのよー!』
そう言ってぴょん、ぴょんと跳ねて舌を出すシャロットに強烈な回し蹴りを繰り出した朱音のスカートは激しくなびく。
『当たらないのよー!お、可愛いパンチーなのよーーのんよーー!!!!』
「あー、もう!マジでウザいコイツ!」
そんな時だった。リビング内の時間が切り取られたように停止して色を失う。
テレビを見ていた藍音も、激昂する朱音すらも動きを止めた。
「おい、仕事だ。」
『…あ…』
「クク…お前…楽しそうだなぁ?ええ?」
『のよ?…まぁ、いいのよ。闇喰も半数は捕らえたのよ、この水筒に。全て捕らえて早く帰りたいのよ。』
「あぁ、そうだなぁ…クク…」
『お前も神の使徒ならもっとそれらしくするのよ?』
「お前には言われたくないな。行くぞ、人形が。」
…
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