#33 JSアイドル環奈の憂鬱
「はぁ…憂鬱だなぁ…」
「どうしたの、環奈ちゃん?」
これは朱音とその友達である那月環奈が夏休みにショッピングモールへ出かけた時の事だった。
環奈はある悩みを抱えている。それは、
「明日、握手会なんだよね…」
「そうなんだ!アイドルも大変だね…でも、環奈ちゃんは握手会とか結構好きだったんじゃ?」
「いや〜それがさぁ…」
環奈が言うには最近ファンになってくれた人物がいるのだが、その人が少しばかり癖があるのだと悩みを打ち明けた。
握手会の度、帰り道の道中を付け回すのだとか。
歩く速度を上げてみたり、帰り道を変えて遠回りするなどの策は打ってみたが駄目だと頭を抱える。
「それは災難だね…ケーサツとかに言った方がいいんじゃないかな?もしもの事があったら…
そ、それこそ大変だと思うよ?」
「でもね…ほかのメンバーに気を使わせたくないっていうかさ…」
「う〜ん…そうは言っても。ケーサツじゃなかったら大袈裟にならないかな?」
「ま、まぁ…それは確かに。」
「わかった!わたしに任せてよ!」
……
翌日、
「で、なんで俺がこのドSアイドルのお抱え運転手なんぞせにゃならんのだ?」
朱音の作戦、それは紺の起用だった。今日一日、環奈のSPとして起用された紺は朱音に悪態をつく。
そんな兄を睨み付ける朱音の鋭い視線に紺は言葉を失った。
渋々環奈を握手会の開かれる町の小さなライブハウスへと送り出す紺だった。
車内で紺は言った。
「環奈ちゃんって結構人気あんの?」
「む、あるに決まってるでしょ?下僕お兄さんは黙って車を運転する!私はメイクで忙しいの。」
「へいへい、わかりましたよお嬢様。」
気まずい雰囲気のまま目的地へと到着した二人は車から降りる。
「俺はどうすれば?」
「終わるまでここで待ってて。二時間もあれば終わるから。じゃ、行ってくる。あまり一緒にいるの見られると良くないから。」
環奈はそう言って会場へ向かって歩き出した。
紺はやれやれといった表情で車に乗り込み買っておいた缶コーヒーを一口飲む。
「二時間、か。長いな…」
…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます