#32 勉強会=女子会


 夏休みの残すところあと一週間を切った頃の話。

 例によって例の如く、紺は妹達に取り囲まれていた。少女達は焦っていた。何故なら、


「や、やばいよ〜夏休みの宿題ぜんっぜん終わってないんだけどーー!」


 おきまりのパターンである。

 とは言いながらも、彼女達がリビングのローテーブルに座り囲むものはプリンの山で、宿題なんて中々進まないのが現実だ。


 いつのまにか勉強会は女子会へと変化し、紺は溜息をつくのであった。

 時刻は昼前、そんな時、那月環奈が言った。


「そういえば、今年もお祭り行くんだよね?」


 すると朱音が、


「うん、勿論だよ!8月30日、環奈ちゃんも行くよね?」


「あ、うん。行く行く!今年は浴衣着ちゃおうかな〜」


「浴衣いいね!」


 キラキラトークに花が咲きペンが止まる上級生達だが、下級生チームは一生懸命に宿題をしているようだ。紺は悩むみくりに答えを教えてやる。


「ここは、こうだ。みくりちゃん数字は苦手か?」


「あ、ありがとうございますっ…どうしても決められた式に数字を当てはめるのが苦手みたいで。」


「何となくその気持ちはわかるが、こればかりはルールに従ってやるしかないんだぜ?ほら、これなんかも今のと同じ要領でだな…」


「うん、うん…あ、ほんとど!凄いね、お兄さん。」


 そんな姿をみた凪子は自分のも見てくれとせがむ。すると、我れ先にと妹達が迫るのだった。


 結局、殆どの宿題を手伝うはめになった紺だったが、無事に宿題は終わった。時刻は午後二時、皆んなお腹ぺこぺこのお時間である。

 朱音はエプロンを着てキッチンに立っている。皆んなの昼食を作るためだ。凪子も、環奈も、そして妹の藍音、その同級生のみくり、せつな、皆、朱音の作る料理が大好物だ。


 完全に胃袋を掴まれている。

 紺は一人せっせとキッチンに立つ朱音の隣に立ちジャガイモの皮を剥くのを手伝う。


「紺兄、べ、別にいいから座ってなよ。」


「いいよ、手伝うから。朱音は次の作業に進め。」


「あ、ありがと…べ、別に何も出ないんだからねら。」


 朱音は頬を赤らめて言った。


「妹に何の見返りを期待するってんだ?」


「変態の紺兄なら色々あり得るよ。」



 こうして出来上がったのは肉じゃがとお味噌汁のセットだった。朱音の煮物はとにかく美味いと評判で、今はお転婆娘だが、大人になると間違いなくいいお嫁さんになるだろう。

 それを考えると少し胸が痛い紺だった。


 遅めの昼食を済ませた少女達は再び女子会を再開する。シャロットが買いまくってきたプリンを食べながら週末のお祭り話に花が咲く。


 紺はやれやれと部屋に戻った。そこには幼女の神、シャロットがいた。シャロットは紺のベッドの上で肩から下げた赤い水筒をコンコンと叩いたり振ってみたりしている。


 それを紺がじっと見ていると、シャロットはそれに気付き驚いたように目を丸くする。


『び、びっくりしたのよ〜?女子の部屋に入る時はちゃんとノックするのよ、常識なのよ?』


「…ここは俺の部屋だ。つうかさ、その水筒いつも肌身離さず持ってるけど、なんなんだ?」


『これはただの水筒なのよ。そんな事よりロリ紺、お前に会いたいという者がいるのよ。』


「俺に?」


『そう、わたちの協力者、でもある人物なのよ。…会うも会わないも、お前次第だけど、どうするのよ?』


「会う。そろそろお前らが何を考えているか、どうやって俺達の周りで不可解な事件が起きて、その事後処理をしているのか、聞きたいことは山ほどあるからな。」


 シャロットはクスッと笑い、『わかったのよ』と明後日に待ち合わせするからその時に共に来いと、紺に告げるのだった。


 …

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る