#30 上手に逝けましたぁ!
「今回は喰らう前に仕留めさせてもらうぞ。」
紺は再び拘束具、もとい拘束魔術を発動させ闇喰の行動を制限する。そして、
「消えろぉぉぉっ!!」
懐に飛び込み強烈な右ストレートを打ち込む!闇喰は元の靄のような姿に戻り拘束を解くが、
「もう、一発…これでっ、しまいだぁっ!」
そのまま左手を闇喰の胴体にあて魔力を解放、まともに喰らった闇は弾けるように消滅したのだった。凪沙凪子の時と違って今回は楽に倒す事が出来たようだ。
紺は気絶してしまったみくりを抱き上げる。涙の跡が頬に残っている。
『この子に取り憑いていた霊の反応が消えているのよ。心の一部が抜け落ちたような感覚がこの子を襲っていると思うのよ。』
「…そうか、今までずっとお友達として一緒に生きてきたんだな。とにかく、みくりちゃんを家に送ってやらないと。」
『む…ロリ紺!後ろなのよ⁉︎』
紺はシャロットの声で咄嗟に振り返る。
そこには、悪霊化寸前のゴンザレスが。見た感じ、苦しんでいるようにも見える。
するとみくりが目を覚ましたようだ。
「あ、れ…ゴンザレス…?」
みくりは自分の足で立ち、苦しむゴンザレスの元へゆっくりと歩いていく。紺はみくりを止めようとしたが、それをシャロットが止めた。
シャロットは紺の中から外へ飛び出して、首を横に振るのだった。
みくりは悪霊化に抵抗しているかのような動きを見せるゴンザレスにそっと触れた。
すると、ゴンザレスは母の胸で泣き止んだ赤子のように静まり、落ち着きを取り戻す。
「ゴンザレス…あなたは、ちゃんと成仏しよう。…見ててあげるから、大丈夫だから、お願い。」
みくりは俯き続ける。
「ほかのみんなは…もう…だけどゴンザレスは消えなかった…だから…って…?」
みくりが顔をあげるとそこには皆んながいた。紺が闇を消し去った事で捕食された霊たちは解放されていたのだ。
お友達はゴンザレスを取り囲むようにして光を放つ。霊が成仏する時、身体から白い光を放つ。
その白い光を、放っている。
「みん、な…」
ゴンザレスも、遂に光を放った。そして、
ーーーーーー
みくりのお友達は消えた。いや、皆一緒に成仏することが出来たのだ。
みくりは少し哀しそうな表情をしていたが、クルッと振り返っては頑張って笑顔を見せる。
「お兄さん、助けてくれてありがとう!お兄さんのおかげで…皆んないけたよ!」
「お、おう、そうか。…寂しくないか?」
紺は優しくみくりの頭を撫でる。みくりは照れくさそうに笑って言った。
「…大丈夫だよ…!だって、みくりには藍音ちゃんやせつなちゃんがいるから!…それに…
お兄さんもいるからっ!ふふっ」
こんなに自然に笑っているみくりは中々見る事が出来ない。これで彼女に取り憑いた霊は居なくなってしまったが、紺はこれで良かったんだな、と安堵するのだった。
問題はみくりの帰宅が遅くなってしまったことだが、紺と彼女が相談して今夜はこちらに泊まることにしたのだった。親御さんに連絡すると快諾してくれて一先ず安心することが出来た。
それから数日、紺の周りには凪子とみくり、そして藍音の姿が。
「お兄さん今日はみくりと遊んでくれるって…」
「違うよ!今日はあたしと組手を!」
「も~っ!紺にぃには誰にもあげないの~!」
『にっしっし~、モテモテなのよ!』
「いや、笑ってないで助けて…」
紺を貫く視線、、、キッチンに立つ朱音の怒りの視線である。朱音としては紺が次々と彼女達を手懐けてしまうのが心底気にくわないのだ。
本当は自分もそこに入りたい、そう思っているようにも見えるが…プイッと横を向いてしまう。
「…紺兄なんて…大嫌いなんだから…」
…
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