#29 お友達
みくりの相談を受けて一週間、八月を目前にした日の事だった。
紺は来未みくりと共に各地の神社を回らされていた。何故そうなったのかというと、お友達、霊の成仏する場所は決まって神社だとみくりが言ったのが理由である。
紺は藍音を朱音に任せてみくりの友達成仏作戦に参加することにしたのだ。勿論、神、シャロットも同行している。
シャロットは姿を消して二人の後をつける。
町を出て、隣町の神社へも行ってみたが、お友達は断固として成仏を拒むのだった。
「ゴンザレス…?今日、成仏しないと…本当に悪霊になっちゃうかも…」
みくりはお友達に話しかけている。何もない場所を見上げて一人で誰かと話すみくりの姿は中々シュールで少しばかり怖くもある。
紺はそれをじっと見ているだけだ。そんな事を今日だけでどれだけやったのだろうか。
しかし結果は成仏せず。
それどころかみくりの中に閉じこもり、出てこなくなってしまった。
「みくりちゃん…悪霊になった霊はどうなるんだ?」
「わからない…でも小さい時、一度だけ悪霊になった子がいたの。その子は町中を暴れて悪い事いっぱいして…最後にはもっと大きなお化けに食べられちゃった。」
「…食べられた?」
「うん…それからはその子を感じられなくなって。」
…時刻は既に夕刻。小学生をあまり遅くまで連れ回すわけにもいかない紺はみくりを家の近くまで送り、妹達の待つ家に歩みを進めた。
「…なぁ、食べられたって…」
『のよ。もしかしたらその食べたお化けは闇喰の可能性があるのよ。闇喰は心の隙をつくのが得意なのよ。…相手が霊でもそれは変わらないのよ。』
「じゃ、じゃぁ…このままみくりちゃんわ帰らせて良かったのかな。」
『帰らせてあげないと、お前が誘拐犯になるだけなのよ。女子小学生を誘拐、さすがにマズいのよ。』
「そりゃそうか…おい、何か感じたらすぐに言えよ?その時に駆け付けるしかないしな。」
『言われなくってもそうするのよ?』
…
時刻は午後九時半、一人の少女は神社にいた。丘を登った先にある小さな神社だ。
日中、神社まわりをしていたが自分の住む町のこの神社には来なかったのだ。少女の正体は来未みくりである。
みくりは一人、何者かと話している。
「…ゴンザレス…」
するとみくりの前に具現化したゴンザレス、成仏出来ないお友達が姿を現した。
大きな身体の彼?はみくりの前で苦しそうに頭を抱えている。その身体からは真っ黒な瘴気が噴き出して、辺りを包んでしまった。
「ゴンザレス…駄目!悪霊になったら食べられちゃうから!だから…今ならまだ…きゃっ!」
ゴンザレスはみくりの小さな身体を吹き飛ばしてしまった。みくりは激しく地面を転がりうつ伏せでゴンザレスを見上げる。
「嫌…駄目だよゴンザレス!…もう…」
「…え…?この気配…。」
みくりは背後に覚えのある気配を感じる。ゆっくりと起き上がり振り返った先、
「あ…」
そこには、あの時の捕食者の姿があった。
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