#28 幼女相談室
その夜、紺は当たり前のようにベッドへ潜り込んでくるシャロットに昼間の話を持ちかけた。
みくりのお友達、取り憑いた霊の成仏の件である。成仏しないと悪霊になってしまうと言っていたのが気になり解決策がないかと聞いた。
『のよよ。それはわたちの専門外なのよ。』
「そ、そうか…」
『でもなのよ、少し警戒が必要かも知れないのよ。心に迷いや悩みがある時…』
「…闇喰が現れる。…おいまさか今度はみくりちゃんが⁉︎」
紺は振り返ってシャロットの肩を掴む。彼女の小さな身体は激しく揺れ、水筒と首元の鍵穴も小さく音を立てた。
『お?遂に襲ってくるのよ?にしし〜わたちはいつでもウェルカムなのよ〜?』
「茶化してないで答えろっての…」
『警戒するに越した事はないのよ。これから数日間はみくりと一緒に行動する事をお勧めするのよ。何かあった時にすぐに対応出来るように。』
「なんなんだよ…闇喰ってのは…何が目的でそんな事をするんだ。」
『それは…な、何でもないのよ。早く寝るのよ。それとも眠れない夜にするのよ?』
シャロットは頬を赤らめ艶やかな表情で意地悪に笑い、紺に唇を近付けてくる。紺はその顔面を平手で押し返しては幼女に背を向けた。
「寝ろ。お前とは…闇との闘い以外でキスする気はない。」
『しゃいなんだから、なのよ。』
…
そして翌日、藍音に頼みみくりを家に呼ぶことにした。お茶会と称して。
因みに本日も姉、朱音は外出中である。
そして昼前、チャイムが鳴り来未みくりと、ついでに暦せつながやって来たのだった。せつなは相変わらず眠たそうにしていたが、紺を見るなり喉をゴクリと鳴らした。
「こ、こんちは…みくりちゃんとせつなちゃん…ま、まぁ上がって。」
リビングにあがったみくりは大きな紙袋をソファの前のローテーブルに置いて、ふぅ、と一息ついた。大きな袋はkokonoe洋菓子店の袋だ。
『のよのよのよ?そ、それは爆乳天使桜のお店のっ⁉︎のよーー!!』
「ふふっ、シャロットちゃん、ここの焼きプリン大好きって言ってたもんね。お母さんに言ってお小遣いもらったから買って来たんだぁ、皆んなで食べよう?」
みくりは袋から箱を取り出しては封を切る。
『のんよーー!プリン!プリン!』
「こら、はしたないぞ〜。みくりちゃん、ありがとうな。今、ジュース入れてくるから座っててくれ。藍音、手伝ってくれるか?」
「うんっ…手伝う…!」
こうして何気ない女子会が始まる。姉グループと違ってこの妹グループはとても静かだ。せつながチラチラと紺を見ているのが気になるが、そこは気付かないフリで切り抜ける。
こうして何もなく一日が終わった。
その夜も当たり前のようにベッドへ潜り込んでくるのは幼女神シャロットだ。シャロットは紺の背中にピタリとくっついてはすぐに眠ってしまった。
紺は暫く眠りにつけず、考え事をしていた。もし、みくりが闇に取り入られてしまった場合、今度はどんか手段で攻撃してくるのか。
最初の藍音は完全に闇が主導権を握っていた。無数の腕のようなものが無造作に襲いかかってきた。がむしゃらに突っ込んで何とか無力化に成功したがこちらのダメージも大きかった。
次の凪沙凪子は、どちらかと言えば闇に完全に取り込まれてはいなかったように見えた。とはいえ、あの鉄拳に風の加護は反則級の強さで闇抜きでも正直勝てる気がしなかった。
あの時は朱音が頑張ってくれたおかげで窮地を脱した。
そして次はおそらく来未みくりだとシャロットは推測する。霊をけしかけてきたりするのだろうか。それとも藍音のように闇が主導権を握るか。
時刻は深夜二時。
紺は目を閉じる。
…
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