#14 正義の味方
「帰りにスーパーで買い物しとくかね。」
無事に朱音にお弁当を届け終えた紺とシャロットは帰り道に買い出しを済ますことにした。
そんな二人が校庭から出ようとした時、聞き覚えのある声が紺の耳に飛び込んできた。その声は校舎裏から聞こえてきたみたいだが。
紺はそっと現場を覗いてみた。
「これに懲りたら今後は弱いものイジメをしないこと!わかったら行きなよ?」
黒髪ショートの少女は三人の男子の前で腕を組んでいる。凪沙凪子だ。
男子達は尻尾を巻いて口々に捨て台詞を吐き去って行くのだった。
口々に、「男女」だの、「怪力女」だのと。
凪子は、フン、と澄ました顔でイジメられていた男の子に手を差し伸べ笑顔を見せる。
「立てる?教室まで一緒に行く?ほら、怖がらなくていいから。」
男の子は凪子の手を握り、すっくと立ち上がる。
「あ、ありがとう…自分で教室に戻るから、だいじょーぶだよ。」
「そう、偉いね。君は強くなるよ、きっと。」
男の子はじゃあね!と手を振り元気に教室へ帰って行った。
…チャイムが鳴る。午後の授業まで後五分の合図である。
(相変わらず、だな。凪子ちゃんは。)
まさに正義の味方、その言葉が良く似合う。そんな女の子だ。
紺は朱音が小学校に入学した時の事を思い出す。あの時も、いや、あの時から彼女は、
凪沙凪子は正義の味方だったな、と。
四年前、あれは紺がまだ中学三年生だった頃の話だ。朱音は親父に真っ新の赤いランドセルを買ってもらって喜んでいた。早く学校に行きたいって聞かなくて朱音を諭すのに苦労した事を思い出す。
仕事の虫の父も流石に入学式には出席していた。母はその時には既にいなかった。朱音の晴れ姿を見られなかったのは心残りだったであろう。
無事に入学式も終え、楽しみにしていた学校生活を満喫する筈だった朱音が…目を真っ赤にして泣いて帰って来た時の事は今でも鮮明に覚えている。
朱音はその変わった瞳の色で、男子達にイジメられて帰って来たのだ。小さな子供なんてのは残酷なもので、少し人と違うというだけでイジメの対象になってしまうのだ。
その夜は荒れた夜になった。
そんな時、朱音に手を差し伸べたのが、
そう、凪沙凪子だった。
彼女は当時、朱音よりもずっと小柄だった。そんな凪子が朱音を守っていたのだ。
彼女の強さは当時から尋常ではなかった。四歳から空手を習っていたのもあるが、今思えば風の精霊の力もあったのだろう。
そんなチート級の強さを誇る凪子に朱音はどんどん惹かれていった。
そして朱音は凪子と同じ空手スクールに通った。
彼女のように強くなりたいと、そして彼女みたいに誰かを守りたいと。
紺は昔の可愛い朱音を思い出して口元を緩めた。
…
『…何を一人でニヤニヤしてるのよ?キモすぎるにも程があるのよ?』
「キモいとか言うなっての。というか起きたなら自分の足で歩け。朱音に思いっ切り睨まれたんだからな?お前がべったりくっつくから。」
『にっしっし~』
「ほれ、買い出し行くぞ?」
『プリン!』
「…一個だけだぞ。」
『ケチ。』
…
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