スーパーマリオRPG

 RPGアレルギー。昔の私は、確かにそんな病気にかかっていた。入り込めたのは、前述した桃太郎伝説及び新桃太郎伝説、それぐらいの物だった。ドラゴンクエストⅢ(FC)を挫折したのが大きいのかもしれないが、不思議と避けていた。ドラゴンクエストもファイナルファンタジーも、発売日に手を出した事は一度もなかった。

「ロールプレイングゲームやった事ない人も~オーイエー!マリオと旅に出ようドラマを作ろう!ロールプレイングゲームやり尽くした人も~満足させますマリオです!」

 それでも、マリオならば何とかなるだろう。そう考えて手を出したのが、「スーパーマリオRPG」である。




 アクションゲームの大家の任天堂(当時の私の発想はそのレベルだった)と、ロールプレイングゲームの大家のスクウェアが手を組むとどうなるか。1+1=2になるのではないか、そう考えるのは自然な事だろう。だが、実際は1+1が3にも4にもなっていた。

 アクションコマンドと言う言葉が生まれたのもこのゲームだ。ボタンを押した、ハイ後は全員が勝手に動くだけ、1ターン終わりではない緊張感を持った戦闘。タイミングを合わせるのに四苦八苦もした。それでも、戦闘が楽しかった。経験値稼ぎもコイン稼ぎも苦になりにくく、レベルが上がりやすい。

 それで私は先に述べたようにスクウェアのゲームなどまったくやっていなかったから、そのスクウェア的な町づくり(具体的に何がどうなのかは言いにくいが)にも驚いた。これまでマップと言うのは平面的な物でありヘックス状の場所を歩いて行く物だと思っていた人間にとって、ジャンプして動ける町やフィールドと言うのもまた新鮮だった。ましてや、それが奥・手前込みとなると動くだけでも楽しかった。


 また、ストーリーも良い。マリオVSクッパ――――ではなく、第三の敵が現れる。その第三の敵を倒すために両者が手を組む――――と言う構図は後の作品でもいくらかあるが、その初出がおそらくこの作品である。

 また、現在のクッパのキャラが確立され始めたのもこの作品からだろう。

「オマエはオマエのシアワセをさがすのだ!」

 敵前逃亡のような形で自分の下を去った部下に対する言葉がこれである。大軍団の長であるカリスマ性と人物の大きさ、それと愛嬌。ついでに「ワガハイ」と言う一人称。おおむね、ここから現在までクッパのキャラは変わっていない。

 そしてピーチ姫である。こちらはキャラと言うより、単純に強いゆえに印象に残っている面がある。最初こそ体力も攻撃力も低いが、レベルを上げて行くとグーンと上がり、レベル30(頂点)まで行くとマリオを上回る。

(なおこのゲーム、レベルアップごとにHP・攻撃力&防御力・魔法攻撃力&魔法防御力のどれか1つにボーナスを選べるが、レベルを3で割って余りが0ならHP、1なら攻撃力&防御力、2なら魔法攻撃力&魔法防御力を選ぶと強くなる)

 そしてスペシャル技である。「みんなげんきになあれ」、わかりやすく説明すればベホマラー+状態異常回復――――これがFP(MP)4で使えるのがピーチ姫である。その上に前述の能力であり、中盤以降はほぼレギュラー固定となるだろう。マリオより強いピーチ姫、これが現実となっている世界でもある。

 無論、オリジナルキャラも忘れてはいけない。何と言っても人気が高いのはジーノだろう。カジオー軍団により破砕されたスターロードを修復するためにやって来た星の使者、ヒーロー人形に宿る事によりマリオと共に戦う存在。立ち居振る舞いも格好良ければ、戦闘でも格好いい。素早いし(このゲームの素早さはアイテムを付けない限り固定)、通常攻撃もスペシャル技も強力。洋の東西を問わず、スマブラ新作が来るたびに参戦させてくださいという願望が多いキャラクターである(私含む)。

 そしてマロである。ジーノと比べると地味な扱いが多いが、よく考えれば愛される要素は多いキャラだった。気がやや弱いが真面目で、泣き虫と言うコンプレックスを持つ自分の出生の秘密を探す少年。そしてその正体は遠い国の王子様。これだけの要素をしっかりと盛り込みながら余していない。彼の使うスペシャル技が、その後のゲームでもアイテム名として息づいている事もまたその証拠であろう。

 そして、「なにかんがえてるの」である。基本的には相手のHPを知るという技だが、これがメタフィクション、時事ネタ、他作品ネタと黒い任天堂の目白押しなのである。タイミングは合わせやすいのでやってみる価値はあるだろう。


「フィクションです。実際の人物には一切関係ありません。」

「主よ、種も仕掛けもない事をお許しください。」

「逃げちゃダメだ……逃げちゃダメだ……」

「マリオよ!私は帰って来た!」


 これはほんの一例である。


 またこれに類似した話として、クッパ城のカルディのクイズもある。

「テブラデスキー」

「キャット空中3回転ダナス」

「悶絶ムチムチプリン責め」

 一体今、何人が分かるのだろうか?「エクスデス」や「ケフカ」と言う名前まで出て来る。知っている人間にはニヤリと、知らない人間にはふむふむと思わせるネタの数々。いちいち、濃い。

 そしてマリオだ。近年は優等生的な役所の多いマリオだが、この作品では百面相とまでは行かないがかなり表情豊かであり(無口でボディランゲージが多い点はこの作品から受け継いでいる気がするが)、時に

「マリオもクッパには弱いし」

 と言われて殴りかかりそうになる大人げない一面も見せる。ある意味、これまででもっとも親しみやすいマリオと言えるかもしれない。




 さらに、やり込み要素も多い。隠し宝箱(キノコ城の広間の入り口の真上はワンチャンスの上に知らないと絶対に取れないと言うのは何とかして欲しいが)に、スーパージャンプ100回。私は必死に練習したが35~6回しかできなかった事もあり100回をやった人はまったく尊敬に値する。

「ソラミレドレドレ ミドソドレラシド ラシドレソドレミ」

 に反応した人はいるだろうか?

「ばくれつかぶと虫」

 のハイスコアはいくらだろうか?

 ブッキー坂のカブト虫を何匹捕まえただろうか?

 エンディングに上がった花火は何だっただろうか?

 デブヨッシーを見ただろうか(私は未だに見られていない)?

 スイーツに何回泊まっただろうか?

 ブッカーを何人まで増やしただろうか?

 クリボーたたきのハイスコアはいくらだろうか?

 ドゥカティのトロッコのタイムはいくらだろうか?

 パタパ隊の崖のぼりのタイムはいくらだろうか?

 クラウンカジノでスターのたまごを手に入れるまで粘っただろうか?

 それでリンクやサムス、アーウィンやブルーファルコンを見つけただろうか?

 そして何より、クリスタラーの曲に感動し、強さに打ちのめされ、そして勝利に感動しただろうか(私がファイナルファンタジー未プレイだったのもあるが)?

 ありとあらゆる思い出が詰まっているし、詰められるゲーム。ぜひぜひ、機会があればやってもらいたいゲームである。


















 そして、個人的にまた変な目覚め方をしてしまったゲームでもある。その残滓がこのカクヨムのどこかに残っているので、御用とお急ぎでない方は探してもらいたい。

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