7.帰郷

 あれから何日か経ち、村は平穏な日々を取り戻していた。エイレスは長い間意識を失っていたが目を覚ました。

 片腕は失ったが足はなんとか無事だった。

 エイレスのそばにはエウが居て看病していた。エイレスが目を覚ました時。村人は大いに喜んだ。そして目を覚ましたエイレスの元に村長はやって来た。

 「村を代表してお礼を言う。ありがとうエイレス。」エイレスは最初はぼんやりとしていたがその意識がはっきりした時村長に言った。

 「いや。お礼を言わなければならないのは私の方だ。あの時助けてくれたのは村長だろう。それにエウ。ありがとう。今の私はあなた達のおかげで生きている」村長はなんのことだかと惚けたがエイレスには分かっていた。

 「私はこの命思うように使うことにするよ。剣士なんかやめだ。好きなように生きる。」

 エウも賛同した「それが良いです。皆と一緒に平穏に過ごしましょう。エイレス私はあなたともっと仲良くなりたいんです。友達に」そう言って、水色のピアスを渡した。

 エイレスは「これは」とエウに聞いた。

 「これはあの時、街に行った時に材料を買ってきて私が作ったんです。」それを聞き、驚きながら言う「ありがとうエウ。私の初めての友達だ」そしてエウの手をにぎるのだった。

 

 またある日にガーディンがやって来て容態はどうか聞いた。エイレスは「大分良くなった。」と答え感謝した。

 またガーディンも同じようにエイレスに感謝した。

 「実はあのままでは実際勝てたかどうかわからなかったんだ。エイレスがあそこでやってくれなければ駄目だったかもしれない。」エイレスは微笑みながら「嘘だろう」と言うがガーディンは「本当だ」と答え出ていこうとするがすぐに立ち止まり。

 「あと、あっちの剣士がお前にしっかり見届けたと言っていた。お前は意識を失っていて聞いていなかったかもしれないから一応伝えておく。」

 「分かった」エイレスは手を上げた。

 あの剣士はこれからどんなことをするだろうかと考えたが後悔のないように自分の望む道を歩んでもらいたいと思った。


 エイレスの傷が癒えもうすでに歩けるようになったある日のこと村長はエイレスを呼んだ。「一緒に来てくれないか」後をついていくとそこは大きな畑があり黒い花が多く咲いていた。

 「これは村の前にも咲いていた。」エイレスがそう言うと「この花はみんなここで育ったものだ。それを村に続く道に村人総出で植えたのだ」

 村長はそう話してくれた。また続けて言う「どうしてこんな花があると思うか」エイレスにはわからなかった。

 「この花は以前戦があった時に生まれたのだ。村のほとんどの人間が死んでいった。白い花がこの村にはもともと群生していたがその花は血に染まり黒く変色した。その戦を忘れぬように平和を祈りこの花は今でも育てられているのだ」

 その意味を知りエイレスは花を手に取りその悲劇を想った。

 「そんなことがあったとは知らなかった」

 村長はここにいればいずれ植える時が来ると言った。

 「その時はやってくれるな」エイレスは「もちろんだ」と答えた。

 

 エイレスは戦った時の剣を持ち隊長の葬られた。場所に訪れた。

 「私はあなたの言うとおり決めましたよ。剣士として夢を持っていたあの頃父上もあなたを誇りに想っていました。いつからか、変わってしまいましたね兄上。私は兄上を哀れに思います。志も周りから屈辱を受けそれによって変化してしまった。必死にそれと戦い生き抜いてきたことそれだけは私は誇りに思います。恐らく父上もそうでしょう。どうか安らかにお眠りください」そこにエイレスは自分の剣も一緒に葬ったのだった。






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黒い花 冷凍氷菓 @kuran_otori

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