第5話


 今朝4時頃、高馬女子高等学園生徒である駒形サクラは、中庭において絞殺死体となって発見された。級友の突然の死に、戸惑いと絶望を隠せない教師たちと生徒たちであるが、彼女の死にはいくつかの不審な点があった。


 まず、ポニーテールの彼女が、一夜にしてショートカットになっていたこと。彼女の髪は自室の洗面台から発見されたので、おそらく彼女自身が切り落としたのであろう。


 それから、彼女の死体の手には、電動ノコギリが握られていたのである。



 食堂に集められ、事の顛末を聞かされた俺は確信した。駒形の野郎、俺の身代わりになりやがった。ポニーテールを切り落としたのは、犯人に身代わりだと気づかれないためであろう。何らかの理由で、中庭に行かざるをえなくなった駒形は、反撃をするために電動ノコギリを持ちだし……。


 俺はうずくまって、頭を抱えた。そんな俺に、声をかけて来る人物がいる。


『いやー、マジで死ぬとは思わんかったわ。びっくりびっくり』


 半透明で足のない駒形サクラである。


「ぎゃああ! 出たあああ!」





「なんで推理小説に犠牲者の幽霊が出て来るんだよ! トリックとか推理とか色々ダメじゃねえか!」


『いやー、俺もこういう事になるとは思ってなくてさー』


 ふわふわと漂う駒形は、俺以外の人物には見えていないらしい。


「なんで中庭行ったんだよ。殺されちゃダメじゃねえか」


『昨日の夜、お前じゃなくって、他の生徒が中庭に誘導されちまってなー。で、俺が電ノコ持って守りに行ったら、返り討ちになっちまった』


 はっはっはっは、と笑う駒形は悲劇の女子高生には見えない。ノリが軽すぎる。そもそも前世の記憶を思い出した駒形は、自分の体に執着はなかったのかもしれない。


「で、誰が犯人なんだよ」


『もちろん八重垣マクトに決まってんだろ。この小説のタイトル、【八重垣マクトの事件簿】だぞ』


「あんな優男にやられんなよ」


『いや、あいつ強いから。なんでも、古武術【バリツ】を習得しているらしい。体格差もあるし、下手に戦闘は吹っかけないほうがよさそうだなー』


 なんなんだそれは。俺が顔色を青くしたり、もっと青くしたりしていると、駒形の幽霊は俺を指差してこう言う。


『伊勢崎、急げ。次の殺人が行われるぞ』


 駒形の言葉に、俺はハッとした。


『お前が、6人の犠牲者を守るんだ。奴の犯行を止めろ!!』


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