18話、公園でかくれんぼ

 特にやる事が無く、一人でプラプラと公園を散歩していたら、この前一緒に、砂場でダムを作って遊んだ子供達を見つけた。

 だから、また勇気を出して声を掛けて仲間に入れてもらい、今度はかくれんぼをする事になった。

 ルールを知らなかったから簡単に教えてもらったけど、どうやら物陰に隠れて、鬼になった子に見つからないようにする遊びらしい。


 私は姿を消せるから、本気を出せば絶対に見つからないけども、それをやったら私が人間じゃないって事がバレちゃうし、なんだか卑怯そうだからやらないようにしないと。

 とは言っても。自分で言うのはアレだけど、隠れるのは得意中の得意だ。なんせ、生まれてからしばらくの間、人間から散々と逃げ回って隠れていたからね。


 今じゃもう、遠い思い出だわっ。


 草木がボーボーと生い茂った場所に隠れれば、流石に見つからないでしょう。人間の子供の目を欺くのは、難しい事じゃない。

 このままここにひっそりと隠れていれば、最後まで見つからないで私の一人勝ちね。ふふんっ、余裕だわっ。


「あっ、マリーちゃんみーっけ!」


「はえっ!? も、もう見つかっちゃったの!?」


「遠くからでも見えてたよー。マリーちゃん、隠れるのが下手だね」


「へ、下手っ? ……そんなぁ」


 すぐに見つかった挙句、隠れるのが下手とまで言われちゃった……。遠くからでも見えてたとか言ってたけど、人間って相当目がいいのね。侮ってたわっ……。

 どんどんみんなが見つかっていく。一番最初に私が見つかっちゃったから、私が鬼ってヤツをやらないと。


 正直に言うと、見つけるのも得意だ。なんなら、隠れるよりも得意かもしれない。

 ふっふっふっ、すぐに全員見つけてやろうじゃないの。覚悟しなさいよ!





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 どうしよう、人っ子一人見つからないわっ……。まさか、姿でも消してるっていうの? なによ、卑怯じゃない! 私も最初っからそうしておけばよかった……。

 ……待って、冷静に考えるのよメリー。まだ探してない場所はいっぱいある。公衆トイレの裏や、数ある茂みの中。木の裏や噴水の物陰。


 よくよく考えてみたら、同じ箇所を何回も歩き回ってるだけで、全然探してないじゃないの。

 ふふっ。そうと分かれば、ここから私の逆転劇の始まりよ。すぐに全員見つけだしてやるんだから!





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 い、いない……。どこにも、いない……。文字通り全部探し回ったっていうのに、どこにもいないなんて……。やっぱりみんな、姿を消せるんだわっ。そうよ、そうに違いない。

 ずるいわみんなっ。そんなの見つけられるハズがないじゃないの……。もうダメ、完敗だわっ。都市伝説である私を負かすなんて、相当の手練れね。


「マリーちゃん、探すのも下手なんだねっ」


「あっ、みんなっ! どこに隠れてたのよっ!」


「木の上や、公衆トイレの上だよっ。マリーちゃんが何回も素通りしてたから、見てて面白かったや」


「木の上っ!? す、すごいっ、そんな所に……」


 そこは見てなかったわっ……。木に登れるなんてすごいわね。とても身軽だわっ。確か、こういうのって忍者、って言うのよね。きっとみんなも忍者なのね。

 そう言われると、私もだんだん木に登ってみたくなってきた。だって、高い所から見た景色って良さそうだもの。みんなに聞いてみよっと。


「いいなぁ。私も、木に登ってみたいな……」


「マリーちゃんも? いいけど、登った事ある?」


「ううん、無いわっ……」


「そっか。じゃあ教えてあげるね、こっちにおいでよ!」


「いいの? うんっ、ありがとっ!」


 私のせいでかくれんぼが終わっちゃったけど、すぐに新しい遊びが始まった。みんな、明るい笑顔を私に送ってきてくれてる。

 ちょっと罪悪感があるけど、みんなはあまり、私を悪く見てないようだ。みんな優しいなあ。ずっとこうして遊んでいたい。


 私もみんなと同じ、人間の子供になったような気分さえ湧いてくる。都市伝説や怪異のたぐいではなく、普通の人間と変わりない、そんな気持ちがね。

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