14話-1、小さな鍋パーティー
まさか夕飯を購入した帰り道に、メリーさんと会えるなんて夢にも思ってなかった。なんでも話を聞いたら、公園で子供達と一緒に砂場で遊んでいたらしい。
大きなダムを作っている間に、人間の友達がいっぱい出来たとも言っていた。正直に言うと、とても羨ましい。
やはりメリーさんは、ちょっと一風変わった人間みたいに思えてきた。都市伝説の存在と言っても、関わってみるととても人間味があって可愛いし、見た目も中身も子供らしく見えてくる。
勢いで夕飯に誘ってしまったけど、メリーさんは料理とか食べるんだろうか。ポップコーンを食べているから大丈夫だと思うけど、他の食べ物の好き嫌いは無いんだろうか?
気になった私は、アパートに帰っている途中。メリーさんに「ポップコーン以外は食べた事はありますか?」と、質問をしてみたら「ばななってヤツを食べた事はあるわっ」と、言葉を返してきた。
どうやら、ポップコーンとバナナ以外の食べ物は口にした事がないらしい。これは大きなチャンスである。自慢ではないけれど、料理は出来る方だ。
美味しい料理を沢山振る舞えば、もっと私の部屋に来てくれるようになるかもしれない。あわよくば、一人では行きにくい水族館や動物園、遊園地にも誘ってみたいな。
そうこう妄想が膨らんでいく内に、私の部屋に着いてしまった。メリーさんにはテーブルの前に座って待ってもらって、パパッと作ってしまおう。
今日は、メリーさんに宣言した通りである鍋。中身は簡単でヘルシーな水炊きだ。ポン酢をつけて食べると、ご飯がものすごく進む優秀な鍋の一つである。
昆布とかで奥深さがある
コンソメスープの素とか、鶏がらスープの素を入れても美味しいけど、それだと水炊きというよりも野菜スープになってしまうので、それも入れない。
鍋に適量の水を入れ、最初からカットされた野菜と肉団子を入れるだけの、とても簡単な水炊きである。
手間もかからないし、洗い物も少ないし、安上がりで財布にも優しいとてもありがたい料理だ。
今回はメリーさんがいるので、具を少し多めに入れよう。野菜と肉団子のストックもあるし、もし、おかわりを要求されてもすぐに作れる。ぬかりは無いっ。
水炊きを作っている間に、ちょうどご飯も炊けた。いつもより多めに二合も炊いてしまった。
私は小食なので、いつもは半合で充分だけど、メリーさんにいっぱい食べてほしいという願いを込め、かなり多めに炊いたのだ。
予備に置いておいたお椀と箸を洗ってっと。これらはメリーさん専用にしてしまおう。何度もこの部屋に来てほしいですからね。
炊き立てのご飯を私とメリーさんのお椀に盛ると、とてもいい匂いが漂ってきた。この匂いは非常に好きである。食欲をくすぐって心を弾ませてくる。
先にテーブルの上に鍋敷きをセットし、両手に鍋掴みを装備。水炊きが入っている鍋をテーブルの上に置けば、部屋内は一気に夕飯の空気に包まれた。
「お待たせしましたメリーさん! 夕飯が出来ましたよ」
「これが、なべ?」
「そうです! 今、ご飯も持ってきますね」
ご飯と箸、それとポン酢とそれを注ぐ別皿をテーブルの上に置いてっと。メリーさんと私の別皿にポン酢を注げば、準備は万端である。
「この、白いのは?」
「それはご飯です。噛んでいくと、だんだん甘くなっていって美味しいですよ」
「この、茶色い液体は?」
「ポン酢です。鍋に入っている具に浸してから食べてくださいね」
そこから、メリーさんによる怒涛の質問攻めが始まった。鍋に入っている食材を一つ一つ指を差して、どんどん質問してくる。本当にポップコーンとバナナ以外食べた事がないみたいだ。
それだったら、私が食の素晴らしさ、美味しさを一から教えていくしかない。これは、私の使命である。たった今、私が決めた。水炊きを食べ終えたら、また夕飯のお誘いをしてみよう。
箸の持ち方と使い方もバッチり教え、ここから楽しい夕飯タイムである。他の人と一緒にご飯を食べるなんて久々だ。さあ、いっぱい食べるぞ!
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