11話、カウンセリングを受けるメリーさん
すごく楽しいし、おいしい物が食べられるから別にいいんだけども……。香住ったら、私が驚かせに部屋に行っても「待ってましたよ、メリーさん!」って笑顔で言ってきて、全然驚いてくれないのよね。
そういえば、初めてポップコーンをご馳走になった時。香住は慣れちゃいましたって言ってたけど、私の驚かせ方がワンパターンなのかしら?
いや、そんなハズ無いわっ。毎回違う驚かせ方をしていたんだもの。いきなり背後から現れたり、扉をすり抜けて来てみたり……。
でも、香住が驚かなくなったのも事実だし、悩ましいところね。
はあっ、どうすれば香住は驚いてくれるのかしら。ちょっと自信が無くなってきちゃった。……あらっ? 壁に張ってあるポスターに、悩みを聞いてくれるような事が書いてある。
か、かうんせりんぐ? ここに電話をすれば、私の悩みも聞いてくれるのかしら? ちょうどいいわっ、電話してみよっと。
プルルルルルル……、ガチャッ。
「お待たせ致しました。百鬼カウンセリングの
「私、メリーさん。いま、住宅街にいるの」
「お電話ありがとうございます、メリーさん。今日は、どういった悩みのご相談でしょうか?」
「えっと……。人を驚かせるには、いったいどうすればいいのかしら?」
「人を驚かせる、ですか……」
相談した途端に、電話に出た奴が黙っちゃったわっ。何よ、相談を受けてくれるんじゃないの? それとも、私の相談の仕方が悪かったのかしら?
もっと具体的に言えばよかったかしらね、香住を驚かせたいとか。何回やっても香住が驚いてくれる方法を教えてほしいとか。
それだと、相手がもっと混乱しちゃうかもしれないわね。そもそも電話に出た奴、香住の事を知らないし。じゃあ、何が原因なのかしら……。
「……メリーさんは、人を驚かせる仕事をなさっているんでしょうか? 例えば、お化け屋敷とか」
「いえっ、仕事というよりも使命よっ。私は人間を驚かせる為にこの世に生まれてきたんだもの」
「自分の仕事に強い信念を持っていらっしゃるんですね。とても素晴らしい事だと思います」
「ふぇっ? そ、そう、かしらっ……? えへへっ」
いきなり褒められちゃった。なによこいつ、良い奴じゃない。褒められる事って滅多にないから気分がいいわっ。こいつ、私のファンなのかしら? 一度会ってみたいわね。
「それで、驚かせる方法はどういった物でしょうか?」
「後ろから急に現れたり、大声を出して驚かせたり……。あ、あとっ、扉をすり抜けて度肝を抜かせたりしてるわっ!」
「扉をすり抜けてですか、すごい技術をお持ちなのですね。えっと、それだけでしょうか?」
「んっ……、そ、そうよ」
「そうですか……、ふーむ」
それだけって言われちゃった……。これだけじゃ種類が少ないのかしら? だけど、それだけでも驚いてくれるし、他に何があるっていうのかしら?
「扉をすり抜けるのは大変すごいと思いますが、バリエーションが
「あるのっ!? お、教えてちょうだい!」
「例えば背後に居る時に、相手がメリーさんの存在に気がついていなければ肩をポンッと叩いてみたり。すり抜ける技術をお持ちでしたら、天井からいきなり落ちてきたりとか、床から急に現れたり……、とか」
「おっ……、おお~っ!! いいわねそれ、今度試してみるわっ! ほ、他にはないのっ!?」
「他に……、う~ん……」
相手がビクビクしてる時に肩を叩いたら、ビックリして飛び上がるに決まってるじゃないっ! こいつやるわね……。現役の妖怪なのかしら?
天井からいきなり落ちてくるのもいいわね。いま、扉の前にいるの。って言ったのにも関わらず、天井から落ちてきたら効果があるかも!
床からは……。香住の部屋って、アパートの二階にあるのよね。これは出来そうにないわっ。他の人間を驚かせる時にでも使ってみよっと。
「え~っと、相手の目の前に急にパッと現れたり、とか。不意に耳元で囁いてみたり、とか……?」
「す、ステキじゃないのっ! やるわねあんたっ、尊敬しちゃうわっ」
「そ、そうですか? お役に立てて光栄です」
「ありがとっ! とても参考になったわっ!」
「お悩みが解決したようで何よりです。それでは、またのお電話をお待ちしております」
ガチャッ、ツーッ……、ツーッ……。
そうよ、姿を消せるのよ私っ。なんで今まで気がつかなかったのかしら! それに耳元で、私、メリーさん。いま、あなたのそばにいるの。って急に言ったら、相手は絶対に驚くわっ!
電話してよかったっ! 早速明日にでも、香住や
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