12話、実践するメリーさん
さてと。かうんせりんぐっていう所に電話をしたら、とても参考になる驚かせ方を教えてもらったし、早速試してみよっと。
そういえば最近、清美の部屋に行ってないから、そっちから行こうかしらね。驚かせ方は何にしようかしら。
確か清美は、ずっとベッドで寝てるから、目の前に急に現れるヤツにしようかしらね。そうと決まれば、清美に電話しないと。
プルルルルルル……、プルルルルルル、ガチャッ。
「はい、ゴホッ……。秋野原です」
「私、メリーさん。いま、住宅街にいるの」
「あっ、メリーさんか。電話をしてきたって事は、この部屋に来るんだね。待ってるよ!」
ピッ……。
香住もそうだけど、なんで私が部屋に行くとわかったら喜ぶのかしら? これから驚かせに行くっていうのに……。
まあいいわっ。前よりもうんと怖くなった私が、頑張って恐怖のどん底に落としてやればいいんだしね。それじゃあ行こっと。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
姿を消しつつ、清美のベッドの上まで来たのはいいものの。清美ってば、なんで扉の方を見てワクワクしてるのかしら。
そんなに私に驚かされるのを楽しみにしてるのかしらね? うんうん、良い心構えだわっ。
えっと、清美は完全に油断してるから、目の前に立って、急に現れて大声を出すと効果がありそうね。よしっ、清美の前に立ってっと……。
「ワアァァァァーーーーっっ!!」
「ひぇあっ!?」
「やったっ! 驚いたわねっ!」
おおっ、予想以上に効果があるじゃないのこれっ! ふふんっ、久々に清美の驚いた表情を見られたわっ。
やっぱりいつ見てもいいわね、私に驚かされて恐怖に陥る表情は。最近ご無沙汰だったから、余計に嬉しいわっ。
「び、ビックリしたぁ~……。急に目の前に現れるなんてずるいよぉ」
……あらっ? 普通だったら泣き喚くハズなんだけど、なんですぐにおっとりとした表情に戻っちゃうのかしら。なかなか手強いわね。
「ずるいも何も無いわっ。人を驚かせるのが私の目的だもの。じゃあねっ」
「えっ、もう帰っちゃうの!?」
「そうよ、なんで?」
「せっかく来たんだから、もう少しここにいなよ。果物もいっぱい用意したんだからさ」
くだもの……。この前くれたバナナっていう黄色いヤツもあるわね、食べたいなぁ……。だけど、香住の怖がっている顔も早く見たいし……。
そうだ、香住を怖がらせてから、またここに来ればいいわよね。そして、また清美を驚かせてやろっと。
「ちょっと待ってて、少ししたら戻ってくるわっ!」
「……そう、分かった。それじゃあ待ってるね!」
よし、じゃあちゃっちゃと香住を驚かせてここに戻ってきましょっ! 先が見えない廊下には誰もいないし、ここで電話をしちゃおうかしらね。
プル、ガチャッ。
「もしもし、メリーさんですか?」
「ちょっと! なんでわかるのよ!?」
「合ってた! 自慢じゃないですけど、お母さんかメリーさんしか電話が掛かってこないんですよね」
「あっ、そう、なのね……」
「いつものようにポップコーンを作って待ってますから、早く来て下さいね!」
ピッ……。
香住ったら、出るのがやたら早かったわね……。暇なのかしら? 清美以上に喜んでいたけど、まあいいわっ。
これから、完膚無きまでに驚かせてやろうじゃないの! ふっふっふっ、震えて待ってるがいいわっ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
さてと、香住の背後まで来たけど……。香住の場合は色んな方向から驚かせてきたから、私がどこから来てもいいようにひっきりなしに辺りを見渡してるわね……。
しかも、たまに後ろも見てくるもんだから目が合うのよ。私が居るのがバレてないか心配だわっ。どうしよう、出るタイミングが掴めないわね……。
それにしても、ポップコーンをもう作り終えてテーブルの上に置いているのね。とってもいい匂いがしてくるわっ。
香住は何で驚かせようかしら? 肩を叩くか、耳元で囁いてみるか……。でも香住の奴、心なしか興奮してるみたいだし、耳元で囁いても効果は薄そうね。
そうだ、耳に息を吹きかけるのはどうかしら? ふう~って。……良さそうじゃない、これでいこっと。それじゃあ香住の横に立ってっと……、今よっ!
「ふぅ~っ」
「ふぇあっ……」
あらっ? 倒れちゃった。耳を抑えているけど、なんか体中がピクピクしてる。驚きすぎて気を失っちゃったのかしら?
いや、意識はあるみたいね。でもなんだか、目がトロンってしてるし、ほっぺと耳が真っ赤になっているわっ。
「香住っ、驚いたかしら?」
「め、メリーひゃん……。今ぁ、耳にぃ……、息を吹きかけ、まひ、ひゃ……?」
「吹きかけたわっ、ふぅ~ってね」
「み、耳は弱いんで……、やめひぇ、くらひゃい……」
へぇ~……。香住って耳が弱いのね、いい事を聞いたわっ。反応が面白いし、今度来たらまたやってやろっと。でも、これだと趣旨が違うような気が……。
次は、肩をポンッて叩くのを試してみようかしらね。何事も試してみるのが大切だわっ。そこから色々アレンジして、もっと怖がらせてやるんだから!
……香住の奴、未だにピクピクしてるわね。ポップコーンが冷めるといけないから、先に食べちゃおっと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます