6話、vs動物園のパンダ
だんだんとこの街にも慣れてきたから、思いっきり行動範囲を増やしてみたけど、なんだか変な場所に来ちゃったみたいね。
家族連れの人間が大勢いるけど、全員が全員、四角い大きな箱みたいな物を見てすごくはしゃいでる。何か面白い物でもあるのかしら? 私も覗いてみよっと。
なんか大きいな物が動いているけど、よく見たら生き物みたいね。猫みたいな見た目をしてるけど、街で見かける猫よりずっと大きいわっ。
首の周りがやたらモフモフしてるけど、暑くないのかしら? ……あらっ、看板がある。えっと……、ライ、オン? この猫、ライオンっていう名前なのね。
この広い場所、同じ四角い箱が沢山あるけど色んな生き物がいるのかしら? 面白そうだから、私も見て回ってみよっと。
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やっぱりっ! どの四角い大きな箱の中にも、色んな生き物がいるわっ! 全員名前が付いてるみたいだし、そっちで言った方がいいわよね。
えっと、ライオンに似たオレンジ色のトラでしょ。バナナを食べてたチンパンジー。ものすごく大きなゾウ。可愛いアライグマなんかもいたわね。
そういえば、触ってみたい奴がいたのよ。確か……、そう、パンダっ! 全身がフワフワしてて、とっても気持ちよさそうだったの。大人しそうだし、ギュッてしても平気……、よね?
この四角い箱、棒がいっぱい付いてて中に入れそうにないんだけど、私はすり抜けられるから関係ないわね。
なにか食べてるようだけど、長い葉っぱが付いている緑色の木、かしら? ムシャムシャとおいしそうに夢中になって食べてるわっ。
「この葉っぱ、そんなにおいしいのかしら? ……私も食べてみよっと。……うえっ!? なによこれっ、苦くて食べられたもんじゃないわっ! こんなの食べるなんておかしいわよ、あんた達! ……お腹壊しちゃうわよ?」
なんで、こんなおいしくない物を食べてるのかしら? ポップコーンやバナナの方がおいしいのに。こいつらに教えてやりたいわっ。
あらっ? 端っこで仰向けになって寝ているパンダがいるわね。……寝てるし、お腹の上に乗っても、大丈夫、よね?
目の前で見るとかなり大きいわっ。うわぁ~、触ってみたけど、やっぱり予想通りにすごいフワフワしてるっ! ええいっ、乗っちゃえ。
ふぇあっ……、全身フッカフカ。温かくて気持ちいい。……なんだか、眠くなってきちゃった……。このまま寝ちゃおう……。
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「……ううんっ。……あらっ、夜になっちゃってる、寝すぎちゃった。……あっ」
や、やだっ。私が乗ってたパンダがいつの間にか起きちゃってるし、目が合っちゃった。早く降りないと怒られちゃう。
目の前で座られると、やっぱりすごく大きいわね。見上げないと顔が見えないわっ。
私が乗ってたパンダが、顔を近づけてきた。顔もかなり大きいわね。なんか私の匂いを嗅んで……、ひゃあっ! お、大きいベロで顔を舐められちゃった……。うぇぇ、ビッチャビチャ……。
「早く顔を洗いに行かないと……。あれっ、前に進まない……? あっ、ちょ、ちょっと、進まないと思ったらパンダが私の服を噛んでるじゃないの! やめてっ、離してっ! ちょっと、引っ張らないでよ! ……げっ」
や、やだっ、今度は私がパンダにギュッてされちゃった……。温かくて気持ちいいけど、顔が気持ち悪いから早く洗いに行かないと……。
「ちょっと、離しなさいよ! ねぇっ、聞いてるの? 離し……、やだっ、このパンダまた寝ちゃってる?」
ど、どうしよう? パンダの手は重くて一人じゃ動かせないし……。強くギュッてされてるから、全然動けないわっ……。
……身体中が、とっても温かい。さっき起きたばかりなのに、また眠くなってきちゃった……。もう、今日はここで寝ちゃおう、かしら。とっても気持ちよく……、眠れ、そう……。おやすみ、なさい……。
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……結局、朝まで寝ちゃった。私をギュッとしていたパンダはいつの間にか起きていて、葉っぱを夢中になって食べてるわっ。呑気でいいわね。
あらっ、葉っぱが付いた小さな木を、咥えてこっちに向かってきてる。目の前で止まって、その木を私の前に落としたけど、いったい……。
「これ、私にくれるの?」
「あ、ありがと。また来るわね、バイバイ」
本当に私の言葉がわかってるのね。健気に手なんか振っちゃって、カワイイ奴だわっ。
この場所はしっかり覚えておかないと。今度は私がギュッってしてやるんだからね。覚悟しておきなさいよっ!
あれっ? そういえば私、壁や扉をすり抜ける事ができるのよね。パンダにギュッてされた時、脱出できたじゃない!
……生き物の体もすり抜けるのかしら? やった事がないからわからないけど、気持ち悪そうだからやめておこっと
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