3話、vs時報、アポイントメント、英語
とっても怖い大妖怪に電話をしてから、かれこれ一週間以上経ったし……。そろそろ大丈夫よね。妖怪も電話を持つ時代になったのね、末恐ろしいわっ。
それじゃあ気を取り直して、活動を再開しよっと。今日はちゃんと、人間に掛かるといいんだけど……。前回のせいで不安しかないわっ。
怪しい奴だと思ったら、すぐに電話を切っちゃおうかしら? そうね、そうしましょ。
プルルルルルル……、ガチャッ
「私、メリーさん。いま、住宅街にいるの」
「ピッピッピッ、ポーン。午前十一時、丁度をお知らせします」
「へっ? あっ、本当だわっ。もうこんな時間なのね。……って違うっ! 私、メリーさんっ。いま―――」
「ピッピッピッ、ポーン。午前十一時、二十秒をお知らせします」
「時間はもういいのっ! 私、メリーさんよ!? とっても怖いメリーさんなんだからっ! 少しは怖がったら―――」
「ピッピッピッ、ポーン。午前十一時、四十秒をお知らせします」
「もっと違う事を教えなさいよっ! この、あんぽんたんっ!」
ピッ。
まったくもうっ、また一件目から変な奴に掛かっちゃったじゃないっ! そもそもの話、時間なんて時計を見ればすぐにわかるじゃないの。
なんで、わざわざ電話で教えてくるのかしら。そういうのが趣味な奴かもしれないわね。それでも、かなり変わった奴だけども。
はぁーっ……。今日も先が思いやられるわっ。こういうのって最初が肝心なのよ、最初が。次はもっと、まともな人間に掛かりますようにっ。
プルルル……、ガチャッ。
「お電話ありがとうございます。こちら、鬼ヶ島カンパニー、受付の
「私、メリーさん。いま、住宅街にいるの」
「メリー様ですね。お電話、誠にありがとうございます。今日は、どのようなご用件でございますでしょうか?」
やっとまともな奴が出てきたわね、よかったよかった。それじゃあ、張り切って驚かせてやらないとっ。
「今からそっちに向かうから、震えて待ってなさい」
「大変恐縮でございますが、メリー様は、事前にアポイントメントをお取りでございますでしょうか?」
「えっ、あ、アポン……? い、いいえっ」
アポン? アポン……、なんなのかしら、アポンって? 何かの呪文? はたまた、また別の私対策かしら? とりあえず、話を聞いてみないとわからないわね。
「大変申し訳ございません。そうなりますと、今日の面会は厳しくなってしまいます。今からアポイントメントをお取りになりますと、最短は三日後の夕方五時になってしまいますが、それでもよろしいでしょうか?」
「三日後……? え、えぇ、それでいいわよ」
「かしこまりました。三日後の夕方五時、メリー様ですね。それでは、お待ちしております。本日は受付けの桃頭が承りました。お電話ありがとうございました」
「あ、ありがとうございましたっ!」
……カチャリ。
結局、アポンイって、いったいなんなのかしら? 三日後の夕方五時とか言っていたわよね。その時間にしか行けないのなら仕方ないわっ。
まったく、決まった時間にしか行けないなんて、不便な世の中ね。まあいいわっ。その時が来たら、たっぷりと驚かせてやりましょっと。
さてと、次よ次。今の電話相手はかなりまともな奴だったから、いい流れになっているハズ。この流れを切らさないようにしないとね。
プルルルルルル……、プルルルルルル……、ガチャッ。
「私、メリー様。……間違えた、メリーさん。いま、住宅街にいる」
「Hello」
「は、はろう? ……はろう」
「Who are you?」
「はう、あう、ゆ?」
……こいつ、いったい何を言ってるのかしら。たぶん言葉だとは思うけど、意味がサッパリで、ちんぷんかんぷんだわっ。
「What was that?」
「あんたが何を言っているのか、サッパリわからないわっ」
「Will you speak English?」
「携帯電話の調子が悪いのかしら? いいや、切っちゃえ」
ピッ。
携帯電話の調子が悪くなるって初めてね。無くしたりしても、勝手にポケットの中に戻ってきちゃうからいいけど、壊れたらどうなるのかしら?
壊れちゃ仕方ないわっ。今日はまだ早いけど、山奥に帰ろうかしらね。携帯電話、すぐに直るといいんだけど……。
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