第二話 桜と百合

「本当に退かぬか、このバカめ」


響たちの背後にあるプランターの土に、光弾は落ちた。


「お前! ままままマジで撃ちやがった!」


少ないど言えども、他の人がいる中で迷いなく引き金を引いた。響はエースを抱えて、レオと距離を取る。


「通報したら負けるのまずお前だからな!」

「はぁ…私は大丈夫だと言っただろう。警察だろうが関係ない」


ゴミを見るような目である。警察という単語にも怖じけない。

響も負けじと睨み返す。

レオはため息をつき、名刺を近くにいたクロッツに渡す。


「明日、会社に来い。 そのロボットは連れてこなくて結構。

保護がお前たちなら、そのロボットが犯したことをちゃんと理解してもらおう」


クロッツは響に紙を渡す。名刺には会社の住所が書かれていた。

当然、響は理解できなかった。これ程躊躇ない相手が、来いと言っている。素直に受け止めるわけにはいかない。


「来なければ今ここで、貴様をねじ伏せ、ロボットを奪ってでもいい。 だが私も無駄に関係ない人を傷つけはしたくない」

「何ってんだ! 行ったところで、ロクな事ないだろ!」


見ていたお客達も声を上げる。


「そ、そうよ! むしろ、苦情入れるわよ!」

「響の兄ちゃんには世話なってんだ! エースの味方するぜ!」

「そうだそうだ!」


レオは呆れた表情で、答える。


「勝手にしろ。 私は処罰されん」


自信のあるそのセリフに人々は黙った。何故ここまで自身は罰を受けないと言えるのか。ドゥームトレーサーを躊躇なく放ち、謝りもしない。


「話し合いなど、人間は無駄な脱線をするだけだ。 私は推奨しない。 だから実力で行こうとした。 しかし、とんだ馬鹿がいるのは想定外だ。 仕方あるまい。 いいか、来なければ今度はこの店ごとエースを壊すぞ」


レオは反論を聞かずに荒々しく出ていった。


「エース、お前何したんだよ」

「キョウまで疑うのですか⁉︎」

「疑うというか、お前が何者かわからねーからさ」


お客達もエースの周りに寄ってくる。

エースがどうしてここにきたのか、どうして産まれたのか。高度なAIを前に皆、興味津々だった。

エースは不機嫌そうに答える。


「ワタシは何もしてマセん。 フツーにウロウロして、フツーに生きてるだけデス。

生まれた場所とか、親は誰かとかは覚えてマセんけど(`ω´ ) 」


ツンっと拗ねた顔文字を表示して、そっぽを向く。


「生まれた場所くらい記録してないのか? ロボットなら記録回路くらいあるだろう」


響が優しく問いかけるも、エースの画面の表示は変わらない。


「ワタシは高度な自我を持ったロボットです。 人間と有機か無機かの違いくらいしかありまセン。なので、記憶は人間と同じ。古いものは消えるか曖昧になるンデす」

「…それもう人間じゃないのか?」


響は何気なく、その一言を発した。対して考えた言葉ではなかった。適当にそう思ったから言葉にした。冗談で流れるほど、軽い一言であった。

しかし、エースはその言葉を嬉しく飲み込んだ。


「キョウはワタシの事、人間みたいって思いマス?!」

「え? いや、まぁ食べるし、昼寝するし、色々話すし、何となく?」

「ワーイ! やったやったー! やっぱりワタシここに住む〜!」


響の胸元に飛び込んで行く。褒められて喜ぶ子供のように。

皆、不気味さより「本当に自我があるのではないか」と思うようになった。だが、そうして自我のあるロボットが目の前にいたとして、どうやって産まれたのかがわからないままだった。


「待て待て。 エーゲ社のデータの話が終わってない」

「ダーカーら! 盗むわけないじゃないデスか! だってワタシはこれですでに完結してマス! あんなコテコテなAIデータなんか盗むわけないじゃないデスか!」


言われてみればその通りだと、馬鹿な人間でも気がつく。


「どうするよ、響。 明日行くのか?」


クロッツは心配そうに響に尋ねる。


「こいつは盗んでいないって言ってるんだから、あっちの言い分も聞かないとな」

「マジか…気をつけろよな」

「何人事にしてんだ。 お前も来るんだよ」

「えぇええ⁉︎ 無理無理! 殺される!」

「そんな物騒なことこの日本じゃ起きねーよ」

「じゃあ俺行かなくてよくね⁈」

「俺だって一人は怖い」


クロッツがどれだけ断ろうとも、響の家に泊まっている身である。居候そのものだ。結局は反論できずに同意するしかなかった。


「でもさ、俺も行くとしてエースの面倒は誰が見るんだ?」

「お前、妹いるだろ」

「でも面倒見るには小さいだろ」


客に中で、先ほどエースをいじっていた二人が声を上げる。


「私たち見ようか」

「宮本さんたち、仕事は?」

「大丈夫、嫁はいつでも有給取れるから」


エースは再び響の後ろに隠れる。


「キョウ! この人たち大丈夫何デスか!」

「大丈夫だよ。何年もこの店に来てる常連さんだ。クロッツの妹、サクラだって休みの日はいつも面倒見てもらってるんだ」

「さっきは…ごめんなさいね。 初めて見たからさ!」


エースは渋々、宮本婦人が出した手を握る。


「妹のサクラはまだ寝てるよな。 明日、出る前に話しといてくれよ、クロッツ」

「へいへい。 宮本さん、妹の面倒もまたお願いします」

「任せなさい!」



*



朝日が白い肌を照らす。肌、というべきか。肌に似た素材といったほうが正しいか。元少女…彼女はいつものように意味がないベッドから起き上がる。人が寝る時間に充電をし、起きる時間に活動する。AIロボットなら当たり前である行動。しかし、彼女はAIロボットではない。見た目はロボットと思われるが、製造元はない。中身が機械でもひとつだけ機械じゃない機能があった。

屋根裏で寝ていたクロッツはサクラに起こされる。


「おにいーちゃん! 朝だよ!」

「ん〜? おっけー起きる起きる」


そろそろ秋も終盤で、空気が冷えてきた。響の家は未だに木造で、最低安全基準一歩手前だ。金がないから建て替えていないのもあるが、響はとある思い入れがあるため変えていないのだ。

クロッツは床暖なぞ勿論ない廊下と階段をスリッパを履いて歩き、下にある洗面所に降りて行く。サクラは後ろを小動物のようにトトトトと、素足で付いてくる。

クロッツは顔を洗い、歯磨きをする。サクラはタオルを取ってきてクロッツに渡す。


「んあ、ありがと」


サクラからタオルを貰う時、いつもサクラの手に触れる。相変わらず空気より冷たい。


「あのさ、今日は私、何すればいい?」

「昨日話した、エースの面倒を宮本さんと見ていてくれ」

「…うん!わかった! 宮本さん、いろんな場所の話ししてくれるから好き!」


カジュアルなスーツ姿に着替えて、クロッツたちは営業時間ではないバーに降りる。

響も同じくカジュアルなスーツ姿。すでに身支度は完璧に済ましている。口元にはいつも咥えている白一色の電子タバコ。煙を吸うことはせず、ただ咥えている。

横にある机ではエースがジュースを飲んでいる。


「響おにーちゃんおはよう!」

「おはよう、サクラ」

「サクラ? 先日言っていた子デスね。 ン? クロッツの妹さんデスよね? 明らかに人間じゃな…」


響は勢いよくエースの飲んでいたジュースを取り上げる。


「アー! 返してくだサイー!」


奪い返すためにエースは響の顔に飛びつく。鉄の塊のはずだが、エースは冷たくなく、心地よい温度である。エースの異様さを感じつつ、そのままサクラから距離を取る。


「いいか、エース。 サクラは人間だと思って接してくれ」

「ヘ? 明らかにロボットですよ?」

「それをお前が言うか! サクラはな…う〜ん…」


中々言葉に言えない。エースも大概だが、サクラも普通のAIロボットとは違う。

しかし、言わなければエースのことだ。変な事をサクラに言いかけない。


「元人間…と言っていいのか…。 サクラはな、事故で瀕死状態だったんだ」

「事故? たしかに手足を機械にしたりスル技術はありますが、サクラは全身ですよ」

「そうだよ。 全身機械にした。 脳以外な」

「なんデスと?! それって!」

「静かに!」


飛び跳ねるエースを抑えて、一層縮こまって話す。

エースが驚くのは無理ない。脳だけを移植して、他は機械なんぞ例がない。


「イヤ、確かに移植するために最近は研究していマス。 ですが、本当に完成している例がアルのは初耳デス」

「でもあれは失敗だ。 そうクロッツが言ってた。 本来、同じ人間のように成長し、記憶は引き継がれるはずだった。 だけど、サクラは成長もせず、記憶が引き継がれない。 記録をしても記憶として成長の糧にならねぇんだ。 脳はちゃんと生きてるらしいが、正しく機能しているのかはわからねぇな」

「人間の定義は記憶して成長する事なんですか(´・x・`) ?」

「えっとな、その辺は」


人間の定義とは?響は言葉に詰まる。誰でもこの質問に困るだろう。「道具を使うから」「雑談をするから」など、様々人間を定義するものがある。今、質問にあった「人間は記憶して成長する事」は定義の一つではあるが、それを承諾した時、「記憶障害のあるものは人間ではないのか」という問題にぶつかる。響はよく考え込む。答えが出せないものに頭を抱えることが多かった。



「そういう難しい話は考えなくていいって。 とりあえず人間扱いしてくれ。 ちゃんと面倒見たらこれ、いくら飲んでもいいからよ」


響はジュースをチラつかせる。


「( °ω° )! それを早く言ってくだサイ! 任せてくだサイ! 完璧に留守番しマス!」

「話終わったか〜?」


クロッツが真後ろから二人に話しかける。クロッツがエースを抱えて、座って待っていたサクラに渡す。


「えへへ〜かわいいね!」

「サクラ、宮本さんすぐ来るからな」

「はーい! えっと、お名前なんだっけ」

「エースデス」

「エースちゃん! ほら一緒に手振ろ!」



エースとサクラに見送られ、クロッツと響は外に出る。

空は晴れ渡り、冬の寒さを感じる。住宅街に近いここは朝だと人通りが少ない。向こうから来るバイクがはっきりと見える。

旧型の二人乗りができる大型バイク。カラフルにデコレーションされた機体。大きく「MIYAMOTO」のシールが貼ってある。


「響! 嫁さん連れてきたぜ」


後ろに座っていた宮本婦人が軽快に降りる。


「今日はサクラちゃんに加えてエースちゃんもいるのよね。 あの、昨日のことあるから、私のことエースちゃん嫌がってない?」

「大丈夫っすよ。 ワンダーグレープでもチラつかせてといてください」


宮本婦人は旦那の頰にキスをして、家に入っていった。


「響たちは今から行くんだな? 俺もそっちに用事があるんだが、何で行くんだ?」

「電車」

「電車ぁ?! この時間、絶対通勤と被ってるよね?!」


響は免許を持っているが滅多に乗らない。なぜなら電車の方が数倍やすいからだ。しかし、クロッツは満員電車が大の苦手である。日本に来たのもつい最近なため、極力電車には乗りたく無い。国際免許は持っていない。響が乗らないのなら従うしか無い。


「満員電車とか、世の中で一番不毛だよ〜」

「ほら、行くぞ」


嘆くクロッツは響にとって よく見慣れた表情だった。



*



輝くショウウィンドウ。空の色を反射して青白く光を放つビル群。通る人々も個性的な服装や、スーツ。普通の服なら浮いてしまう。もし普遍で変哲も無い服を着ていたら外国人観光客か地方から来た修学旅行生くらいだ。

響とクロッツの服装はスーツを崩したカジュアルな服装。一番無難な格好である。

名刺に書かれている住所はエーゲ社の本社である。エーゲ社の本社はエーゲタワー内にあるため、馬鹿でなければ迷う事はない。


「あ、YURI新曲出したんだ」


クロッツの視線の先にはビルに映る歌手のPVであった。YURIとは日本の女性シンガーソングライターである。物静かでかつ、クールな容姿。デビューは15歳の頃であり、現在23歳。世界にも進出するほどの有名な人物である。アダルトチルドレンとして大人びた歌詞が話題を呼んだ。ここ最近は海外活動がメインのため日本にいる事は少ないが、国民的歌手として知られている。

映像はとある男性アイドルグループのPVに変わる。YURIほどでは無いが、国内では絶大な人気を誇る5人グループだ。


「あのアイドルグループすごいよな。 最近では海外公演もしてるっぽいよ」


クロッツは映像を見ながら歩くが、響はYURIの映像をチラリと見て、直ぐに目をそらした。歩く速度も気持ち、速くなっている。人混みや、電車の音などで音楽は微かにしか聞こえない。しかし、響はその微かに聞こえる音楽でさえ、耳を塞ぎたかった。

クロッツは周りを楽しそうに覗く。時には印象に残った服やデザインをメモ帳に素早く描きこむ。脚本のネタになろうがならまいが、目にとまるものはなんでも描き込む。響はいちいち止まるクロッツをいつも引っ張る。


エーゲ社はタワーの内部にある。多く人が通る入り口に着いた響とクロッツだが、目の前にある巨大なタワーを眺める。


「すっげーデカイな。 スカイツリーくらいはあんじゃねぇか?」

「さぁ、そんくらいでかいタワーなんて何お役に立つんだが。 クロッツ、あんまりど真ん中に立つと他に人にぶつかるぞ」


一般客がタワーの展望台に行くための受付の遠く先に、訪問者用のインターホンと入り口があっる。 響は名刺を持って、インターホンを押す。女性の音声がアナウンスする。


『おはようございます。 こちらは株式会社エーゲ。本社にご用のある方専用のインターホン、入口となっております。

お名前と。ご用のある部署、又は個人名をお教えください』


インターホンは柔らかな桃色で点滅する。明らかに人の声だが、よく聞けば合成音声だとわかる。しかし、誰も気にしない。当然なことだからだ。


「名前は向坂響。 用のある人は、えっと、レオ・カルティエです」

『さきさか きょう 様ですね。 少々お待ちください』


小さく保留音が流れる。先程、街で聞いた音楽だ。


「この保留音、YURIの曲だな」


興味を示さなかった響がつぶやく。クロッツは耳を立てる。


「さっき街で聞かなかったか?」

「そりゃ、YURIの所属してる事務所はエーゲ社だからな」

「そ…そうなのか。 やっぱりここの事務所に」

「やっぱり?」

「え、あ、そりゃこんなでかい会社だから事務所くらいあるだろーなーって」


響は一つ咳払いする。街を歩いていた時から、考え事をしているようであった。クロッツはどうしたのかと聞こうとするが、合成音声が間に入る。


『向坂様、連絡が通りました。 46階の特別会議室Eにお越しください。

30分後に担当の者が伺います。申し訳ありませんが、お部屋でお待ちください。

こちら、入りまして右前方にエレベーターがございます。インターホン下から発券される訪問書を翳してご利用ください。

それではインターホン左手にあります画面に手を当ててください』


響は黒い画面に手を当てる。スキャナーが指紋を読み取っている。読み終わるインターホン下から訪問書が出てくる。


『次の方、どうぞ』


カメラが響とクロッツを連れだと認識する。そのままクロッツも同じく訪問書をもらう。

入り口が開き、二人は46階へ向かう。

エレベーターは開放感に満ち溢れ、街を一望できるように壁一面が窓だ。苦手な人用に、窓を黒くするボタンも階数ボタンとともに設置してある。

クロッツは子供のようにはしゃぐ。響も外を見るが、つまらなそうに目を背ける。壁に寄りかかり、口にくわえている電子タバコを揺らす。


「さっきからテンション低いけど、どうしたんだ響。 高いところ苦ってわけじゃないだろ? 」

「いや、なんつーか、ま、まぁ、その」


わかりやすく声のトーンが上がっている。仕草も固くなり、露骨にクロッツに背を向ける。


「なんかあるなお前! 怖がってるとかじゃないその態度! なんだ、会社に彼女でもいる感じの態度! 俺がいるから会うの気まずいみたいな!」

「ちちちちちちげぇし!」

「馬鹿か! そんな態度で違うわけないだろ!」


46階に着くと同時に、響は逃げるように飛び出す。誰もいなかった46階が途端に騒がしくなる。

大胆に廊下が広いこの階は、さっさと部屋に入ろうとした二人を惑わせた。はぐらかしているうちに二人は、壁一面窓の空間に出る。陽の光が直接入る車が入れるくらいの誰もない空間は、均等に椅子や机が置かれている。休憩場だ。


「おい、クロッツ! 引っ張るな! 誰か来たぞ」


向こう側にある廊下から誰かが出てきた。

小柄で、ラフな格好をしている女性。その人の顔が二人の方に振り向く。


「YURIだ!」


クロッツの叫び声に驚いたのはYURIだけで、響は電子タバコを落とす。クロッツの声と電子タバコの落ちた音がこだまする。

YURIが二人の目の前に立つ。


「か、顔小さい。 生で見るとオーラすごいな響。って、響どうした? 口空いてるぞ」


響はクロッツの話が全く耳に入っていない。今目の前にいる女性を見て、目が泳いでいる。

YURIは響をじっと見つめ、クールな表情をピクリとも動かさない。長い睫毛、ほんのり茶髪の髪の毛。ウェーブのかかった髪の毛は少しワイルドなイメージを持たせる。ラインに沿ったジーパンに白いYシャツ。なんの飾りもないシンプルなブーツにシンプルな黒いジャケット。派手でも個性的でもない服装だが、彼女には完璧に似合っている。むしろ彼女のために作られたファッションの様で合った。


「貴方、なんでこの会社に?」


響に問いかけている。口調からして、YURIもいる事に驚いているようで合った。そのセリフからクロッツは察することができた。


「お二人さん、知り合い?」

「いや、別に知り合いじゃねぇし。 クロッツ、Eの部屋探すぞ」


響はクロッツをいつもより強く引っ張り、この場から逃げようとする。


「もうアイドル目指さないの?」


躊躇いない発言に、響は一気に心の奥がキュッと締まる。小走りだった足も止め、顔が真っ赤になる。汗が止まらない響の腕からクロッツが抜け出す。


「今の、どういう事ですか! YURIさん詳しく!」


目を輝かし、茶化せるネタにクロッツは食いつく。


「いいわよ。 教えてあげる。 あの響って奴ね、私と同じ時期にオーディション受けててね」

「小百合いいいい! こいつにそれ吹き込むな!」


乱暴にクロッツを抑え込む。


「さ、小百合?! 確かYURIの本名は五十嵐小百合だけど、なんで名前で呼んだ?! 図々しいな響!」

「だって、私の彼氏だもの」


取っ組み合いをしている二人が石像の様に固まる。クロッツは小百合と響を交互に見る。小百合は変らず立っている。響は今にも死んでしまうんではないかと言うくらいに、苦しそうな顔をしている。


「何をしているんだ貴様ら」


眉間にしわを寄せ、馬鹿にした態度でレオが廊下からやって来ていた。

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