第5話  イージーライダー2011

 バイトあがりの夜の道、僕は自転車でかけていく。


 風や街の光を後方に残しながら


 イヤホンから耳へ、脳へ流れるリズム感のあるJ-POPというガソリンが

 僕を加速させる。


 たとえ1ドルが76円になろうとも、原子力発電がとまっても、シツギョウリツがジサツシャスウが過去最高を記録しても、僕は止まらない。


 世界は僕に未来がないと語りかける。


 コンビニの店員のレシートを渡す手が。


 テレビのコメンテーターの無難な正論が


 深夜のスーパーの惣菜に値引きシールがはられる瞬間が


 現実という凶器となり、僕のモチベーションを削ってくる。


 それでも僕は自転車をこぐ足を止めない。速度を上げ続ける。


 夜の闇と夏の風を孤独に変え、孤独を優越感にかえる。


 疾駆する光のごとくイメージして翔る。


 まとわりつく進路希望の教員の言葉が体からはがれていく。


 交差点の信号が僕を真っ赤になって止めようとするが、僕のスピードは、それを

 ゆるさない。


 きっと僕の後方に流れる、日常は朽ち腐り果てるだろう。


 たどりつく先は、考えず僕はただひたすらに走り続けた。

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