第4話 再誕
ぼくはおつりを、取り落とした。レジのカウンターから、その五円玉は転げ落ちて床を突き抜けた。
五円玉はそのまま地面をえぐりながら落ちていった。ぼくはそれを見続けながら、つぶやいた、「深いな」
店員は見てみぬふりをしていた。
おそるおそる突き抜けた穴をのぞくと地球の反対側から誰かと目があった。
ぼくは心のなかでそいつに言った。(やるよ)
そして穴を足で塞いだ。
その日からボクの足元は穴が空いていて、常に落ちてしまいそうな感覚が付きまとっていた。歩くときは常に足元を見ていた。
怖かった、歩くのが
怖かった落ちるのが、 そして生きるのが・・・・
だからボクは引きこもった、自分の心の中に、
世界は回り、動き続け、ボクは静止していた。
どのくらい時間がたったのか、死んでいるのか、生きているのかもう分からなかった、どうでもよかった。
ドアがノックされた、ボクは出たくなかった、ノックは鳴り止まない。
永遠に近い間ノックは続いた、だからしょうがないからボクは出ることにした。
ドアを開けるとそこにはぼくが立っていた。
そしてぼくがボクに言った、「かえすよ」
そして五円玉は還ってきた。
その五円玉には、ボクの失った時間とぼくの歩いてきた時間が刻まれていた。
大きな喪失と小さな感慨の中で、僕は決意した、外に出て歩くことを
もう足元の落ちそうな感覚は消えていた。
僕は鏡を見た、そこにはあの日地球の反対側で見た目が映っていた。
僕はこころの中でそいつに言った。(やるぞ!)
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