No.20 女子か男子か

俺は今、痴漢されている。

一人称からわかる通り、俺は男だ。なのに、痴漢されている。別段、容姿に長けているわけでもなければ、女っぽい見た目の訳でもないし、筋肉がムキムキな訳でもないのにケツを触られている。その辺の一般人と何ら変わりない俺を痴漢しているのはどんなやつかと視線だけを後ろに向けると思わず困惑した。

服装はなんてことない普通の服だ。問題は、性別がどっちか分からないのだ。

女性なら(美人だったら)喜びたいところだし男だったら恐怖に怯えるという反応が出来ただろう。だが、どちらか分からないのである。

これはもう痴漢どうこうの問題じゃない、気になって仕方がない聞きたくて仕方がないのだ。この際尻は触らせてやるから交換条件で君の性別を教えて頂きたいとさえ思うのだ、自分でも問題にする点が的を外しているのは重々承知しているがそれでもやはり気になる。思い切って、聞いてみることにする、それ以外に道はない。

「あ…あのう…」

恐る恐る声をあげる。

「oh No worries.」

流暢な英語で返された。

なんで英語なのだろうか、見た目はどう見ても日本人だ…まさか!帰国子女か?

日本に来てから日にちも経ってないから日本語も分からないのか?もしかして、向こうではこれが普通のスキンシップなのか!?

色々な考察が頭を飛び交い、俺の脳みそはパンク寸前だ。頑張ってもう一度会話を試みる。

「ワット ドゥー イット?」

気が動転して訳の分からない英語を口走る。

「ワット ドゥー イット?Ah!I understand. I'm good.」

なんかよく分からないが、聞きたいことと違うと思われる。もう完全にお手上げだと言わんばかりに俺は吊革に手をかけている。

駅に着くとドアがゆっくり開く、触られていた感覚が消えたのを感じると後ろを振り返る、そこにもうさっきの人の姿は無かった。

触られていた自分のケツを自分の手で触ると、ポケットの中の小銭と小銭入れと財布が抜き取られていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る