No.21 卍

僕の弟はある時期から卍と言い出した。

弟がその言葉を頻繁に使いだした後から卍という言葉が流行していたので別段、流行り言葉にあやかったわけではなさそうだった。

その言葉を使う時は母が弟を注意した時や、僕が弟に嫌味を言った時や、その他弟が不快に感じる時に言っているようだった。

ある日弟が一日に最低4回は言ってた卍をピタリと言わなくなった。そして、その日が弟の命日になったのだった。


卍とは些か認識に誤りがあったのだ。弟はずっと満持(満を持す)していたのだった。

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