No.13 視漢

(この人さっきからめっちゃ見てくる。

怖いなぁ、声出した方がいいかな?)

「ちょと!オッサン何見てんだよ!」

友人の川井が助けてくれた。

「いや、床にいるゴキブリが…ちょと気になってしまって。」

中年の男はそう言うが。

「うるせーな、変な言い訳すんなよ。」

川井は引こうとはしない。

「えー、何?痴漢」

「きもちわるー」

だんだん、車内が騒がしくなる。

「捕まえろ!少女になんてことをしてるんだ!」

一人の男が掴みかかる。

「誤解だ!僕は本当に…」

中年の男は必死に弁解するが聞く耳を持たない。

「そうだ!早く捕まえないと次の駅で逃げるかもしれないぞ!」

次々と中年の男にほかの男が掴みかかる。

「助けて…」

中年の男はどんどんと人の下に敷かれていく。

(次は木原、木原、お出口は左です)

車内アナウンスが流れ、駅員が止めに入った時には既に中年の男は事切れていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る