第6話 決意

勇者と魔王の戦いは熾烈を極めた。

魔法、剣共に圧倒的な力を誇る魔王だが・・・シーティアは読みと技術でなんとかそれに食らいついていった。


「はあああっ!!」

「でやあああっ!!」


二つの影がぶつかり合う。

そして互いに素早く着地し、魔法を放つ。


「暗黒超魔法!!(アルティマダークネス)」

「火炎中魔法!!(ネオファイア)」


炎と闇の魔球が衝突し・・・一瞬で闇の魔球が炎を飲み込みそのまま突き進む。

だが、その先にシーティアの姿は無かった。


「うおおっ!!」

シーティアは魔王の側面に回り込んでいた。


「・・・ぐっ!」


ずばっっ!!


その剣は既の所で避けられ、魔王の肩を僅かに切り裂くだけに留められた。


「・・・ふん、どの道魔法の威力では敵わぬと見て・・・敢えて魔法のグレードを中魔法にまで落とし俺の魔法の勢いを抑える程度にして、その隙に奇襲をしかけたか。なかなか頭が回るじゃないか。」


ほのかに出血した肩に感嘆の視線を送りながら魔王は言った。

シーティアは一切緊張を解かない。



既にお互いにかなり消耗していた。

魔法によって回復したくもあり、一気に攻めたくもある緊迫した状況だ。


受けたダメージの量は僅かにシーティアが上、このまま打ち合えば不利だろう。


(一旦回復して立て直すか・・・?いや・・・!)


一対一の戦いにおいて重要なのは・・・個々の戦闘能力以上に、状況を見極める力と一瞬の判断力であると・・・マスターは言った。


魔法力の最大量は遥かに魔王である向こうが勝る、このまま回復を繰り返し持久戦となればシーティアには勝ち目はないのだ。


となれば・・・!


「うおおおおおっ!!」

シーティアは残る全てのエネルギーをその剣に込めた。


「なるほど、このまま無益な打ち合いを繰り返すより一気に勝負に出たか・・・ならば勿論、こちらも正面から受けて立つさ!!」

魔王もその膨大なエネルギーを槍に収束させた。



ぎゅいいいいん!!

エネルギーが集まる音だけが激しく響く。



「フフ・・・分かっているのか?仮にここで俺を倒せたとしても貴様に待つのは同じ・・・人々に虐げられ絶望する運命だけなんだぞ?」

魔王は自嘲気味に笑った。


「・・・。」

確かに、彼の言う事もまた真実なのかもしれない。

だが、シーティアの意志は固まっていた。


「それでも俺はこの世界が・・・この世界に生きる人達が好きだ。例え千の人に憎まれようとも、一人でも俺を信じてその力を必要とする人がいるなら・・・俺は戦う・・・!」

「・・・!」


一人・・・その言葉がイブの心に響いた。

そうだ、自分にもいたはずだ・・・そのたった一人が・・・。


「・・・いい答えだ。」


瞬間、魔王は飛び出した。その全てを込めた槍を勇者に叩き付ける。

シーティアもまたそれを迎え撃った。思いを込めた剣を魔王に・・・かつて憧れた者に振るう。



黄色と紫の凄まじい閃光を撒き散らしながら、二つの刃はぶつかり合った。


がががががががががががが・・・!!!!





そして勝ったのは・・・黄色の方であった。


一閃・・・!暗黒の槍を真っ二つに折りながら・・・その剣は魔王の体に一筋の光を刻んだ。

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