第5話 入学


 桜が芽吹く、青い春空の下。

 私立鳴川なるかわ学園の校門は入学式に訪れる生徒やその親族たちで賑わっていた。

 職員たちが誘導で、入学式に参列する保護者のほとんどは会場に向かう。

 生徒たちはそのまま会場に行くか。

 あるいは一足先に自分に割り振られた教室に向かうか。

 またはその場に留まり、新しい学園生活を思い描くなど皆が様々な行動をする。

 学園に辿りついた弦木つるぎタケルと輝橋かがやばし生鐘うがねは、校門で自分たちのクラス割を紙で受け取った後でそのまま学園敷地内に足を踏み入れる。

 遅刻を按じた割にはまだ余裕があることに安堵し、一先ず荷物を置きに教室に向かうことにする。


「しかし……一緒のクラスなんて、まるで運命ですね」

「何言うか。絶対差し金だろ、これ」


 道中、主と同じクラスで顔を輝かせる生鐘に、タケルは歩きながら呆れる。

 態々、護衛者ガーディアンを同じ学園に通わせるのならば、同じクラスにした方がいいだろう。有力な家柄ならその程度の配慮を行う様に学園へ促すことは簡単だ。

 タケルとしても別に生鐘と一緒のクラスでも問題ない。

 しかし、あからさまな手引きを運命と言うのは如何なものか。

 運命というよりは、作為、あるいは策略と呼んだほうが相応しいだろう。

 だが、生鐘は顔を輝かせたまま、その首を横に振った。


「いえ。確かに弦木家の方から何かしらのアプローチはあったでしょう。しかし、結果がそれならば、それもまた運命です」

「誰かに作られた運命ねぇ……」


 自分が誰かの思い通り、具体的には人離れした兄が脚本した舞台にでも踊らされていると考えると、タケルはあまり面白くなかった。

 自分の運命は、自分が決める。

 そもそも、運命とは本来、後から生まれるものだというのがタケルの信条だった。

 誰かが先に作ってしまうのは、それこそ操り人形のようで気分が悪い。

 しかし、それでも生鐘は眩い顔で微笑みながら、陰鬱顔のタケルに言った。


「誰かに作られた運命だとしても、結果として幸せならば僕はそれで構いません」

「…………」

「それとも……タケルさまは、僕と同じクラスになるのは嫌でしたか?」


 生鐘から少し不安げな声で訊ねられ、思わずタケルは溜息を吐いた。


「愚問だ。嫌だったら嫌だって真っ先に文句を言う」

「そうですか。よかった……」


 安堵して、生鐘は穏やかに微笑む。

 そんな彼女を気恥かしくて直視できなかったタケルは、わざとらしく視線を逸らす。


「あん?」


 途端、思わず呻いた。

 偶々視線を逸らした先、校門から校舎に繋がる並木道からそれた場所。普通に歩けば、目を向けないような人目が少ない一画に、タケルは不穏な光景を見つけた。


「タケルさま?」


 生鐘も突然、顰め面になったタケルを見て異変に気づく。

 タケルは彼女の呼びかけに応じず、そのまま視線の先に向かった。

 生鐘の後に続くと、彼女もタケルが見た不穏な光景を目の当たりにする。


「なんて日にくだんねぇことしてんだ」


 はっきりとした苛立ちを、タケルはその場で吐き捨てた。

 彼の視線の先、数人の男女が何やら揉めている。

 いや、よく見れば新入生と思わしき女生徒たちに、武装をした男子生徒たちが囲むように絡んでいるのだ。

 帯刀ではなく、すでに武器を曝しており、囲まれた女生徒たちはより一層怯えていた。

 その様子をタケル以外の生徒が何人か気づいているが、どう行動するか悩んでいる。

 助けに向かるのが正義だろうが、実行しないゆえ惰弱な人間とは罵れない。

 女性たちに絡んでいる男たちは全員武装して、体格も良い。周りと比べて年上に見える。

 上級生。彼等が着る制服が使い古したものも証拠だろう。

 そして、誰しもが武人とも解る。

 別に、学生の武人、武術者など珍しくはない。

 先進国であるこの国は、武器の所持が一般人にも認めらており、武術も盛んだ。

 だが、誰しも武術に打ち込んでいるわけでもない。

 学校側も、必ず武術関連に力を入れている場所ばかりでないのだ。

 この学校、私立鳴川学園もその一つ。

 私立鳴川学園は歴史が長く、裕福な家庭や、歴史ある血を持つ家柄の人間が通うものの、分類は一般高校である。よって一般家庭の人間も通っていた。

 武術に関する運動部が全くないわけではないが、タケルの調べたところでは武術関係の部活動の成績は中の下。武術専門学校や部活動に力を入れる強豪校に比べると見劣りする。

 そのような学園で、複数の武術者が問題を起こしているのを発見した。

 助けに入るのが善行だが、仮に自身が武術者であっても、多勢に無勢は状勢が悪い。

 武術者ではなくても助けを呼ぶことはできるだろうが、今日は新入生の入学式。

 しかも、場所はそこまで目立つ場所でもなかった。

 私立鳴川学園の敷地内は広く、校門から校舎に続く並木道だけでも長い。

 場所が分からない新入生では、何処に行けば上級生や教師たちを呼べるかなど、咄嗟に判断できるほうが稀だ。

 それを分かった上で在校生である彼等は、恐らく自分達には登校義務がないことにも関わらず、気弱そうな女子生徒に言い寄るために態々入学式に赴いた、とタケルは考えた。


 なんて、くだらない。


 苛立ちながらタケルが彼等に近づこうとした時、生鐘が手を前に出して彼を止めた。

 その行動の意味をタケルが彼女に問いただす前に、生鐘が静かな声で提案する。


「僕が行きます。念の為、タケルさまは教員たちをお呼びくださってもよろしいですか?」


 彼女の意図を察したタケルは、僅かに悩んだが、それも一瞬のことですぐに首肯する。


「解った、任せる」

「はい。では、後ほど」


 そう言ってタケルたちは互いに背を向けて、それぞれの場所に向かった。

 タケルは前もって学園の敷地内を把握していたので、何処に向かえば教員に巡り合えるか当たりをつけることができた。

 いや、そもそも、会場である講堂に向かえば教員は必ずいるだろう。

 よって、タケルは全力で入学式の会場である講堂に向かい、教員と思わしき大人に声をかけた。


「す、すみません!」


 息を切らしながらタケルが叫ぶと、教員と思わしき大人はやや驚いたが、すぐに柔和な顔を浮かべる。


「はい、何かね?」

「この、学園の先生とかですか?」

「そうだが──」

「並木道の外れで、この学園の上級生と思わしき武術者が新入生の女子に絡んでます」

「!?」


 タケルがそう説明すると、教員は驚愕で顔を歪ませた。


「一応、止めに入った人がいますけど、大人達も対応した方が良いかと思います」

「……解った。後は我々が処理するから君は講堂に向かいなさい」

「いえ、友人がその場に居るので、俺は戻ります」

「え? ちょっと君、待ちたまえ!?」


 制止を呼びかける教員の声を無視して、タケルはすぐに先程の場所に戻った。

 全力疾走。

 体力がない癖に今日は何度も走る日だと、タケルは内心で愚痴を漏らす。


「はぁ、はぁ、はぁ──!!」


 息を切らしながら、タケルは再びその場所に戻る。


 だが、すでに事態は、全てが終わりかけていた。


 人が──飛んだ。

 

 比喩的な表現ではない。

 身長二メートル近くはある男子生徒が空中に身体を浮かせ、突風に煽られたように体の移動は後ろへと加速し、並木道に植えてある一本の木に背中から激突し、男は失神する。

 周りで眺めていた登校中の生徒たちのほとんどが、その光景に驚きを隠せなかった。

 

 それも、見た目が麗しき一人の少女が、たった一撃でしたのなら、驚愕は凄まじい。

 

 彼女は、タケルが居た先程までには居なかった。

 見て解るように、生鐘の助太刀をしたその少女は、美しかった。

 年頃の女性では理想的な肢体を持ち、その肌は雪のように白い。腰まで届く髪も同様、汚れを知らぬと思える程の純白。整った顔には円らな赤い瞳が宝石の如く輝き放ち、まるで御伽話の妖精にでも出逢うかのように他者を惹きつけた。

 だが、周囲の人間が彼女に目を奪われていたのは、美しい外見だけではない。

 白い太刀。

 幻想的な少女が右手に持つ刀は、刀身、鍔、枝、全てが彼女同様白く、美しい。

 斬るだけ道具あるはずのそれは一種の芸術品に見えて、幻想的な彼女の魅力を損なうことなく、むしろ、彼女の存在を更に強める如く、日の光をその刃に照らし輝いている。

 刀を握る可憐な白き少女。

 それだけでも人の目を奪うには十分。

 更に、倍近い体格の男を吹き飛ばしたのがその細腕とても想像できない。語るだけではもはや驚きを隠せない衝撃であろう。

 何も、女が男を倒すことが珍しいということでもない。

 現在の世界では多くの人間が武術を嗜んでいる。

 最低でも十人に一人は武術の経験を得ていることが普通だ。

 そんな武術が盛んなこの時代。心得がある人間なら、腕一本で自分の数倍はある相手を投げ飛ばせることも、賞賛されるほどではあるが、なくはない。

 だが、得物を持った相手、両腕で抱えるほどがやっとな巨大な斧槍──ハルバートを持った自分よりも体格が二回りは大きい男を、自身も武器を持ったとはいえ、簡単に降すことはそうない。

 少女と男の距離がある段階で、彼女は刀と同じく白い鞘から、抜刀した。

 瞬間、何かが破裂したかのような音と共に、少女と数メートルは距離があった男が吹き飛んだのである。

 剣圧による衝撃波。

 抜刀と共に発生した巨大な剣圧で相手を吹き飛ばしたのだ。

 これが空想の中で起きた事象ならば、代わり映えもないかもしれない。

 しかし、それが現実で起きたのならば。絶句する者が多発するもの必然だろう。


 だが──驚愕の念は彼女だけに注がれてはいなかった。

 

 彼女を背にして、男子制服を着た生徒がいた。

 タケルと共にいた生鐘である。

 小柄で華奢な体。だが、纏う空気はか弱さからは程遠い。

 男女問わず綺麗と称する程の人形めいた童顔だが、表情は厳格にして清廉。

 両手に握る二体一対の刀を握る姿はまさしく武人。

 聳え立つ氷山のような冷酷さで、立ち塞がる者共を威圧する。

 対するは同じ制服を纏った相手で、複数。

 各々が、剣や槍といった武器を所持していた。

 一対多数を前に、生鐘は作りが似た二本の刀を両手に持ち、対峙する。

 先に決着を言ってしまえば、生鐘の圧勝だった。

 背中を預けた少女が抜刀し、相手を吹き飛ばす僅かな間。

 その間に、生鐘は目にも止まらぬ峰打ちの連撃で、数人を瞬時に倒したのだ。

 初動は抜身の二刃が翼を広げるような動作で振られると、一番近くに居た二人の首筋を強打。そのまま、目の前で仲間がよろめくことに動揺する者たちの懐を駆け抜けて、すれ違い際に後頭部、首筋に刃を叩きつける。

 その動作は鮮やかであり、舞う様に美しかった。

 白い刀の少女が一刀で強大な大木を千切り飛ばした突風のならば、こちらは一陣の風で周りの木々を纏めて薙ぎ掃ったというべきか。 

 白い少女はその赤い瞳で後ろを確認してからようやく刀を納め、対する生鐘も同じように後ろの様子を確認すると二本の刀を納める。

 

 そこで周りの歓声が響き渡った。


 無理もないだろう。

 周囲にも見て明らかな状況は、他人に迷惑をかけていた粗暴で悪辣な複数の相手を、颯爽と現われた見た目がよろしい二人が完膚なきまで倒した、というものだ。

 二人が倒した男たちはとある女子生徒のグループに無理やり言い寄っていた。

 しかし、そんな彼等はそろいも揃って気絶中。

 彼等を倒した二人は刀に人を殺さない為の透明な外装──不殺外装をしっかり装備していたので死人はでていない。

 もっとも、病院行きすら免れたところで、このような事態起こした彼等は、明日からまともに学校には行けないだろう。最悪、停学、退学処分すら有り得る。

 そんな彼等を倒した彼女たちは助けた女子生徒たちに御礼を貰いながら、周りから声援を浴びていた。

 生鐘は周りの歓声は気にせず、爽やかな微笑みを助けた少女たちに向けている。

 白い少女は照れ臭そうにしながらも同じように助けた少女たちの身を按じている。

 その光景がまた花を咲かせた。せっかくの入学式で起こった不愉快な出来事。

 それを壊してくれた二人は、まさしく若き英雄だろう。


「はぁ、はぁ、はぁ───ふぅ」


 周りが万雷の喝采が響き渡る中、ようやくタケルは乱れた息をようやく整えると、周りから賞賛を浴びながら、助けた女生徒達を気遣っている二人を改めて見る。


 実はタケルは生鐘の近くにいる白い少女、彼女とは知り合いだった。


 まさか生鐘と揃って、不遜な輩を退治するなどとは思ってもよらなかったが、二人が揃った光景を見て、複雑な気持ちが胸に湧き出てくる。

 自分の知る可憐な少女たちが、正義を掲げ、悪を退治した。

 それに比べて自分は、僅かな距離しか走っていないのに、無様に息を切らしている。

 きっと目の先にいる二人に比べなくても、今の自分の様子を他の人間が見れば、きっと随分と脆弱な姿に見える事だろう。

 事実、そうだ。タケルは人並み以下の体力しか持ち合わせていない。

 虐げられた者を、誰に言われずとも颯爽に助けた二人の知り合いとは、違う。


 もっとも、彼の胸中が複雑なのは彼女たちと比べて自分を卑下にしているだけではない。


 さて、これからどうするか。

 そうやってタケルが頭を抱えているところで、教員らしき人物が数人やって来た。

 彼等も新学期早々トラブルの処理など災難だろうに憐れみながらも、タケルは直ぐに彼らに近づき、素早くことのあらましを無駄なく説明する。

 改めてタケルから事情を聞いた教員たちは、彼に礼を言った後で、三手に別れた。

 一つはここまで立ち止って事態を眺めていた生徒たちの先導。教員の呼び声によって、その場から動かなかったものがぞろぞろと動き出す。

 二つめは負傷者であり、犯行に及んだ生徒の処理。

 最後は被害者と彼女を助けた生鐘たちに事情を聴くため、現場に足を向けられた。

 一連の流れを見た後、ようやくタケルはこの件に関しては、一先ずは安心する。

 これ以上、この場での騒動は誰も得はしないだろう。

 そもそも、本日は入学式。開会する時間も刻一刻と迫っていた。

 だが、大人達の手で事態の収拾をすればこれ以上は波風も立たず、平常に戻せるだろう。

 今日は多くの人間が、初めての高校生活を歩む日。

 多少の騒動は刺激になるかもしれないが、それで栄えある日が慌ただしいものだけになることを良しする人間は多くない。

 しばらくすると、教員たちの誘導により立ち止っていた生徒達が完全にいなくなった。

 タケルも教員から周りの生徒同様講堂に向かうように指示を受けたが、助けた側の生徒が自分の知り合いだからと説明してその場に留まる。

 彼女たちを置き去りにして、自分だけがその場を離れる訳にはいかないだろう。

 タケルがしばらくその場で待っていると、事情を聞いた教員たちが被害を受けた生徒たちを連れて何処かに向かった。

 タケルは遠目から眺めたやり取りから、被害者の女生徒たちを落着ける場所に移動させるのだろうと察した。助けられたとはいえ、直前まで怖いお思いをしたのだ。このまま他の生徒と同じように行動することを強いるわけにもいくまい。

 残された生鐘たちは教員たちにそのまま入学式向かう様にと言われた。

 事情説明は後ほど再びあるかもしれないが、教員たちから解放されたのを見て、ようやくタケルが二人に近づく。


「お疲れ様」

「タケルさまッ!!」

「タケルくんッ!!」


 タケルが人声かけた途端、場の空気が一変した。


 先程からまだ彼女たちを眺め続ける者が居たのならば、その変わりように驚いただろう。

 白い少女は可憐な花が咲いたように『にぱー』と、微笑みを浮かべる。

 生鐘など星の煌きのように『キラキラ』な笑顔で喜びを表現した。

 これだけで、二人がどれほどタケルに信頼し、情を抱いているか解る。

 幸いなことに、その場には既に三人しかいない。先程の騒動を眺めていた人間が残っていれば、活躍した二人にそのような笑顔向けられるタケルも注目されたことだろう。

 タケル自身も二人に慕われているのは好ましく思う反面、冷や汗を浮かべた。

 そして、同時にタケルの名前を呼んだ二人は、すぐさま表情を変えて互いに隣に立つ相手の顔に目を向ける。

 タケル自身は二人とも知り合いだが、当の二人は初対面。

 今日会った人間が、自分の知人と知り合いなどと、互いに驚くのは無理もない。


「えっと、タケルくんの友達?」

「……タケルさまのご友人でいらっしゃいますか?」


 同時に質問し、互いに微妙な顔を浮かべる。

 白髪の少女の側は、『タケルさま』と呼んだ目の前の生鐘をやや困惑気味に見つめる。

 生鐘も一見無表情でありなら、相手を値踏みする視線を向けており、それが益々白髪の少女を困惑させていた。


「やめろ、生鐘。その子は正真正銘俺の友人だ。構える姿勢はよせ」

「……申し訳ありません、タケルさま。貴女様もタケルさまのご友人と真に受けずに大変失礼しました」

「わ、私は別に気にしてないよ。だから、頭を上げてくれないかな?」

 

 頭を下げる生鐘を見て、白髪の少女は余計に戸惑う。


「しかし────」

「向こうが気にしないて言ってんだ。素直に頭を上げろ」

「タケルさまがそう仰るのでしたら……」


 タケルの言葉に従い、生鐘は頭を上げるものの、未だ微妙な空気は変わらない。

 タケルは何故こんな気まずい空気になっているのか。

 心辺りは、一応、タケルの中にある。

 だが、これ以上ここに留まる訳にもいかなかった。そろそろ自分達も入学式を向かわないといけないからである。

 しかし、その前に一つだけタケルは片づけておくことにした。


「とりあえず、お互いに名乗ったらどうだ?」


 タケルがそう言うと、二人は我が返ったかのように表情を改める。


「あ、そうだね」

「僕としたことが失念していました」


 そして二人は、少し相手を見据えた後で、口を開いた。

 ──何処か誇るように。

 ──あるいは、何処か牽制するように。

 どちらも、真っ直ぐと相手に向かって名乗りを上げた。


「私の名前は園原そのはら天花あまか──タケルくんの弟子だよ」

「僕の名前は輝橋かがやばし生鐘──タケルさまの護衛者ガーディアンです」


 再び、微妙な空気が濃くなる。

 対峙する二人は互いに怪訝な顔を隠さず、互いから警戒する様な緊迫感が広がった。

 先程の騒動とは比べものにもならないくらい、張りつめて、重々しい空気が流れる。

 そんな二人を見て、タケルはこれからどうするべきかと、憂鬱気味になった。


 高校生の春、少年は修羅場を経験する。

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