第10話同盟×恐怖=決断

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10・同盟×恐怖=決断

ーーーーーーーーーーーーーー


ファイターの国【ガディオン】ーーーーーーー


「陛下、人狼と思わしき種族と、エルフが2人、こちらに向かってきております。」


兵士は王に告げる。王はガタイがよく、姿勢がいい。

王は玉座から立ち上がり、兵士に命令をくだす。


「エルフ…か、戦士長を呼んでくれ」


「はっ」


そう兵士に告げ、兵士は瞬間移動で休暇中の戦士長のもとへと呼びに行く。

そして、時間にして5秒、瞬間移動で戦士長は、王の元へと馳せ参じた。


「お呼びですか?王よ。」


英隊式の辞儀は左膝をつき、右脚を立て右手で左肺を右手で剣を支えるようにしてお辞儀をする。

まさにそのお辞儀は王の話を聞く姿勢である。


「今エルフと人狼達がこちらに向かってきている。神格の眼を持つお前であれば相手の嘘などを見抜いて交渉できよう。」


戦士長は顔を上げ、王の言葉を聞いた。


「なるほど、かしこまりました。直ぐにあって参りましょう。」


そして即座に瞬間移動で城門へと向かう。


ーーーーーーー


「マリィ、ここはファイター族の村だが、村と言うより国と言われている。そしてここの戦士長は神格の眼を持っていて、相手の心を読むことが出来る。ある意味この状況下では最強の手駒だ。」


「手駒って…」


「おっと早速戦士長殿のお出ましのようだな」


突如そこに現れたガタイが良く、転生前の日本にいた時の人間とは比べ物にならないくらいの腕の太さと胸板の厚さ。

そして小麦色の肌をした短髪で金髪の左目が神格の眼をしている人が立っていた。


「止まれ」


アトロと他の人狼達は足を止め、マリィ、そしてシスビィは人狼の背中から下り、シスビィ、マリィ、アトロはその人間の元へと歩いていった。

アトロは人の姿になり、初めに挨拶をし、要件を話す。


「初めまして。私は人狼族、族長代理のファンク・アトロと言います。そしてここにいるエルフ2人は橙色の髪をした方がマリィ=ホルティス。そして金髪のエルフはシスビィ・ゼルファ・マクリスという者達だ。今回来たのは、同盟を申し込みに来た次第。その神格の眼を持つ貴方なら、真実かどうか全て見極められるはずだ。どうか力になって欲しい。」


「ほう、して俺は何を見ればいいんだ?」


戦士長は堅苦しくなく、寛容的でとてもおおらかであった。

アトロは話を続ける。


「まずはシスビィと、マリィの情報。そして話の真偽だ。罠ではない可能性も踏まえてそこら辺を見てもらいたい。」


戦士長はマリィ達を見て頷く。


「分かった。だが、この国に入国するなら一応全員見るぞ?いいな?」


「勿論だ。マリィとシスビィもいいな?」


「あぁ、問題ない」

「私も問題ないです」


戦士長は、アトロ、マリィ、シスビィそして人狼族たちを1人ずつ見つめていく。


「よし。お前達は嘘をついていない。そしてそのマリィとやらはこの戦いにおける勝利の鍵だな?私とマリィとやらはこの戦争における最高の鍵だ。

そしてシスビィは嘘はついておらぬし、とても辛い経験をしてきたのだな。お前達は信用出来る。

そして信用できるからこそ名乗ろう。」


「俺の名前はマーウェン。マーウェン・ハロウ・キャメロットだ、よろしくな!だが同盟の件は私の王と話をしてもらう。少し待っててくれ」


マーウェンはそう言うと姿を消した。

まるで嵐のように起こる怒涛の日々をマリィは、他人事の様に考えていた。


(なんか展開はやいなー。でも夢とかなら、あのオーク達との交渉も上手くいってるもんなー)


そしてマーウェンではなく、この国の兵士らしきもの20人ほどに囲まれ1人が要件を伝えてきた。


「代表アトロ殿、シスビィ殿、マリィ殿。並びに人狼族の皆様、戦士長、マーウェン並びにガディオン国、国王レット・ガディオン四世様から同盟の件についての相談があるとの事で、至急貴公らを王の御前まで、《瞬間移動》させる。」


兵士はそう言うと、他の兵士たちはマリィ達全員を囲むように手を広げ、手を握り合う。

囲まれたマリィ達は、兵士達に強制的ではあるがワープされてしまう。


「初めまして、私はレット・ガディオン四世。同盟の件は受け入れるが、同盟の詳細案件を聞きたい」


突然瞬間移動されて、困惑するマリィ達だったがアトロ、シスビィは全く表情を変えなかった。

強い意志がそうさせているのだ。

アトロ、シスビィは立膝をつき礼儀を示す。

それを真似するように、人狼族達も人の姿になり、マリィと人狼族達も立膝をつく。

アトロは、代表としてあいさつをする。


「初めまして、レット・ガディオン四世様。私はクァサ山に生息しております、元北人狼族、現全統合人狼族代表代理、ファンク・アトロと申します。本日は急用とはいえ、急な押し掛け大変失礼致しました。本日の同盟受入の件誠にありがとうございます。つきまして詳細ですが」


マリィは、顔を伏せてはいるがその丁寧な言葉遣いに驚かされていた。


(マジかよ、アトロ氏!!!そんな綺麗な言葉遣い出来たのかよ…!!!)


「ここを最終防壁として、他の種族たちを守りつつ陣を形成。後退しつつエルフ軍を各個撃破この国の前にありますバンセラ平原を最終地点としたいと考えております。」


ガディオン四世は、玉座に座りアトロを見つめていた。


「なるほど、して私達は何をすれば良いかな?」


「魔物人間族など、全て問わずに訓練場としてここら一帯をお貸しいただきたいのですが可能でしょうか?」


この一帯は、湿地、海、砂漠、草原、森、山等、全てが揃っている地帯であり、全ての種族が訓練をするのにはもってこいの場所だ。でも他にどんな種族がいるのかをアトロは細かくは知らなかった。


「私達の利益は如何程に考えている」


「この世界の完全統合の後、魔物を虐げないという盟約を締結。そして全てを平等に扱うことを約束していただけるのでしたら、政治の統治または軍備、警戒兵など様々な役職を無条件でお渡しするというのはどうでしょうか?」


なんとも上からの目線な要望だ。条件をつけ、さらに相手側に選ばせる自由はあれど、何もしないという自由は与えないと言っている。これは、人間種と魔物種の違いなのだろう。


「マーウェンから、全ての種族がエルフの手で絶滅に追いやられる可能性があることは聞いた。

このまま決断を後日にしても解決にはならんだろう。

戦争終結後の処理は、勝利の兆しが見えてからにする。

それ以外の詳細は引き受けよう。」


レット・ガディオン四世は、魔物と、人間の違いをよく分かっていた。そして理解を示していた人物だった。だからこそ交渉の不義は、問わなかった。


「感謝致します」


ーーーーーーー

数分前、マリィ達をマーウェンが、認めた時。

それを見ていた1人のバードマンはある者に《伝言》の魔法を使い、指示を仰ぐ。


「エルシオン様。ファイター族の神格の眼を持つものが彼のエルフ一行を認めました。どうなされますか?」


「ほう、ならば話が早い。全バードマンに告げる。全種族の元へ行き、保護、救出をせよ。十二騎士は、リザードマンの部族を守れ。他種族への説明は分かるな?彼らと我々で同盟を組む。」


ゼクス・エルシオンの言葉を聞いた。バードマン達は一瞬の迷いもなく一斉に高速で飛び立つ。

そしてゼクス・エルシオンは、人間種で最も最弱のプーロ族の元へと向かう。


「はっ!」


十二騎士は即座にリザードマンの村へと赴いた。

ーーーーーーー


プーロの国【マンダ】


「なんだ?あれ?」

「ん?どうした?」


見張り台の一角から何やらざわつきが聞こえる。


「いや、なんかこっちに向かってくるんだよ」

「気の所為だろ」


確かにそれは高速で、しかし、10メートル離れている蚊のような大きさの何かがこちらに向かってくる。

それは次第に大きくなっていき、色や形が鮮明に見え始める。


「あっあぁぁぁ…!!」

「うるさいぞ?」


「カグラ…っカグラ・マサムネだっ!!!」

その言葉を聞いた兵士たちは一斉に身を隠すように身を守った。

見張り台は、見ていたものも含め粉々に切り裂かれる。

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