第8話他種族×交渉=不如意
読み方
() ←主人公などの心の声
「」←セリフ
" " ←主人公目線の表現
"" "" ←効果音
←表現
' ' ←誰かの考え
8・他種族×交渉=不如意
ーーーーーーーーーーーーーー
走っている途中、アトロとマリィは移動しながら会話をしていた。
「なぁ、アトロ」
「なんだ?」
「昨日、質問し忘れたことなんだけどさ、ジークさんとの記憶があるって事はまだジークさんは生きてるってことだよな?
それにアークさんって人も多分ミーナさんが覚えてるってことは生きてるよな?」
「そうなるな。母は血は繋がっていないのに覚えているのであればきっとアークさんも父も生きている…まぁ、シスビィの話にでてきた洗脳魔物隊に入ってるだろうが…」
「どうするんだ?」
「どうするも何も無い。同胞であっても殺さなくてはこちらが殺される。躊躇すれば死ぬのが戦争だ。」
「そっか…。アークさんってどういう人だったんだ?」
「聞いた話だが、カグラ・マサムネに目をつけられてやられたらしいが、カグラ・マサムネとの戦闘で、苦戦しながらも何とか戦えてたらしいぞ」
「えっ!?まじか…めっちゃ強いんだな」
「それが敵になってる可能性があるんだ。」
「…」
走り始めて半日ほど、目の前には岩肌を剥き出しにした断崖絶壁とも言えよう大きな山があった。
その山の麓には小さな声で洞窟の入口のようなものがあった。
「あの山だぞマリィ」
「あそこに他の人狼族がいるんだな」
「あぁ、全人狼族で動けるのは60人だけだが、全て合わせると600人いる」
「それでも600か…」
"アトロは遠吠えを走りながらあげるすると他の人狼族も遠吠えを上げた。
その遠吠えに応えるかのように山から遠吠えが聞こえる。
その遠吠えを聞きアトロ達は速度を上げて山へと駆ける。"
人狼族たちの住む洞穴は入口こそ狭く、人狼族専用というような入口ではあるものの、中は広く、山を崩さないよう工夫された構造になっていた。
「アトロお兄ちゃんおかえりなさい!ぞくちょーは…?あっエルフ…」
人狼族の子供達はマリィとシスビィを見るなり後退りした。マリィは、エルフはそれほどに、影響を与えて子供達から怯えられているのだと心に響いていた。
「しかた...ないよね...私達エルフがしてることは...許されないもん」
「…」
「だからこそ、止めさせなきゃ。そうだよね?マリィちゃん?」
"シスビィがそう言うとマリィは頷く。たとえどんな事が合ったとしても、今のこの状況は辞めさせなくてはならない。
そう決心したのだ。"
「ほら二人共中へ入れ」
アトロが中に入るよう2人に促す。他の人狼族は、いち早く家族に会いたいと最初に入っていた。
「いいのか?」
「事情は伝える。殺されることはないと思うぞ」
「う、うん…」
恐ろしいから返事に覇気がないのでは無い。
この現状に対して悲しいと言うような気持ちが渦巻いているからだ。
「行こう?」
シスビィはマリィに手を差し伸べ、ニコッと笑いかける。
「そうだな…」
""ゴンッ""
「痛っ!」
"シスビィが、洞窟の入口に頭をぶつけた!"(ドラ〇エ風)
「大丈夫か?」
「えへへ…」
中へと入っていく2人。
人の姿だった人狼族の女、子供や老人は次々と警戒するように狼の姿になり、唸りを上げ警戒する。
人狼の住処の真ん中にある、大きなホールの壇上に人の姿をしたアトロが立つ。
「皆、聞いてくれ。色々と報告がある。」
「まずは悲報だ、我々の長である我が父ジークはここにいる金髪の青眼のエルフを助け、エルフ共に捕まった。
そして我が母であるミーナはそのショックに耐えきれず鬱になっている。
だからどうか母の事を頼む。
そしてエルフが全ての種族を絶滅させようと動いている。」
人狼族はざわつき始め、「ではあのエルフ共は?」などの声が所々で聞こえる。
「次に朗報だ。
ここに2人のエルフがいるが、この橙色の髪のエルフは太陽神ホルティスに選ばれ、エルフを討つべく現れた日本の転生者だ。
これを聞いて気がついた者もいるだろう。ミーナと同郷のものである。
罠かもしれない、だが俺はこいつらを信じてみようと思う。
そして我々は直ぐにここを出て他の種族に同盟を申し込もうと思っている。時間に猶予はない。そして異論は認めん。」
そう伝え終わると、人狼族は俯き、「仕方ない」と声が漏れ始めていた。
アトロは壇上から離れとある人狼の元へと向かう。
"何とも強引な合意方法ではあるが、今は時間が無い。"
「気をつけて…」
「必ず戻ってくる。心配するな。我が部族を頼むぞ」
「うん…」
髪の長い女性の人狼族。
アトロとその女性はおでこを合わせ、アトロはすぐさま狼の姿になる。
「行こうかマリィ、シスビィ」
「いいのか?まだ居た方が…」
「いや、このままここに居たとしても何の解決にもならない。我々は先に進む必要があるしな。」
「分かった、じゃあ行こう」
マリィはそう言い、人狼族の住む小さな洞穴の出口を抜けていく。
"ドンッ"
「いてっ...腰...腰!!」
「大丈夫か?」
マリィは腰を出入口にぶつけ少し悶えたあと、何事も無かったかのように立ち、アトロの上に乗る
"実際めっちゃ痛いです。ずっとズキズキしてます。走る時の振動は耐えれるかわからないけど耐えます。"
「では行くか」
アトロはそう言うといつもの様に遠吠えを上げ、遠慮なく走る。
(あれ…?意外に痛くないな)
向かうは、オーク族の村で、オーク族と言う猪や豚によく似た獣人族の一種。知性は高くはないが力が強いことで有名な獣人族。
先の魔王軍にも加わっていたため、今はあまり数がおらず、それ故にエルフへの警戒心が強い。
マリィ、シスビィそして人狼族一行は2日間休み休み走っていていた。
その間、特に何も無く、エルフからの妨害もなかった。
マリィは《ゴッドアイ》を使いオーク族がいる場所の正確な位置を掴み、人狼族と急いで向かってはいた。
「もうそろだアトロ。ここを真っ直ぐ1キロ先が、オーク族の村だ。」
「了解した。」
2日間走ってはいたが人狼族は疲れていなかった。シスビィも疲れはなかったのだが、マリィは、腰の痛みが続いていた。
揺れでの腰疲れと、ぶつけた時の鈍痛が響いていた。
ーーーーーーー
オーク族の村
「人狼族とエルフらしいものがこちらに向かってきています。どう致しますか?族長」
「警戒は怠るな。だが、何かを伝えに来たのだろう。通して良い。」
「はっ」
ーーーーーーー
オーク族の村は木で作られた城壁のようなものと、大きな門がある。村と言うより国に近い見た目をしていた。
向かう人狼族達と同時にオーク村の門が開く。
「ほう。迎えてくれるんだな、有難い」
アトロはそう言うが見張り台にいたオーク達は、弓を構え、'いつでも打てるぞ'というような威嚇をしていた。
オーク族の村の中には道の真ん中に1人、オークが待っていた。
「物騒で申し訳ない。私はこのオーク族の村の族長であり村長のガズール・ダンという。」
「初めまして私は人狼族代表、ファンク・アトロ。そしてこのエルフはマリィ=ホルティス。そしてその隣のエルフは、シスビィ・ガルフロット・バンケラス」
名前を紹介されるとマリィとシスビィはお辞儀をした。
「そうか、ここじゃ何だ、集会所に来てくれ。こっちだ。」
60人もの人狼族はオーク族の村には入らずに見張りをするような形で、門の前で警戒をしていた。
アトロ、シスビィ、マリィは、ガズールの後をついていき、藁と木でできた集会所の中に入る。
4人は席につき、見張りのようなオークが、それぞれの後ろに一人づつ着く。
「それで…何の話ですかな?」
「我々人狼族と、同盟を組んでいただけないだろうか?」
「理由をお伺いしても?」
アトロは単刀直入に質問した。それに応えるオーク族の反応は最もなものだった。
見張りのオーク達はそのアトロの発言に驚くも、オーク族長は全く微動だにしなかった。
「えぇ、このエルフ、シスビィ曰く…」
アトロはシスビィの事、そしてマリィが何なのかを説明した。
「なるほど。そういうことですか…しかし、光栄なお話ではあるとは思いますが、申し訳ない。断らさせて頂く。」
「理由を聞いてもよろしいですか?」
「まず私がそこのエルフを信用出来ても、同胞が信用するとは限らない。そして貴公らと同盟を結ぶに至る貴公らの戦力不足。
同盟を申し込むのであればそれなりの勝算を見せて欲しいのですよ。
ですから申し訳ない。」
「…分かりました。では日を改めてまたお伺いさせて頂きます。」
アトロは、唇を少し噛み、悔しそうな表情をした。
「お見送りしろ」
ガズールは、集会所にいた1人のオークを見て命令をした。
「はっ!」
そのオークに続き、アトロ、シスビィ、マリィは集会所を出て、オークの村を後にした。
マリィは、アトロに乗り、シスビィは他の人狼族に乗る。
「残念だったな…アトロ、次はどこに行くんだ?」
「次はここから東にあるエルフの国から最も離れた街のファイター族がいるところに行こうと思う」
「ファイター族?」
「人間族の1種だ、人間族は三種居て、肉体的な戦闘を得意とするファイター、魔法や魔術などを得意とするソーサラー、そして何の能力もないプーロがいる。それらは仲が悪く、同じ街にいないんだ」
「へー」
そう言うとアトロ達は東に向かう。
走り始めて30分。マリィの《ゴッドアイ》に異常があった。
「なぁ、アトロ」
「なんだ?」
「着物姿で、刀を構えてて、姫様カットで、半分白髪と半分黒髪のエルフがオーク村の方にめっちゃ早いスピードで向かってるんだけど…」
するとアトロの耳がぴくぴくとうごき、
「まずい!カグラ・マサムネだ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます