第4話別れ×出会い=緊急
読み方
() ←主人公などの心の声
「」←セリフ
" " ←主人公目線の表現
"" "" ←効果音
←表現
' ' ←誰かの考え
4・別れ×出会い=緊急
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"さっきまでのスピードとは桁違いに速い。焦り、急いでいるのを背中に乗っていて感じられる。"
アトロは上に乗るマリィを気にしながら走ってもいた。
「マリィ殿。きつくはないか?」
「急いでるんでしょ、全然平気だよ!」
「ならば、もう少しスピードを上げながら話そう。」
するとアトロは騙り始めた。
人狼族の固有能力が3つあること、他の種族も最低3つは保持していること。
人狼族の固有能力
《能危険信号》
仲間同士で危険が迫っている場合、その場所を特定し、即座に迎えるように自動で伝達される。
《人/狼変身》
人型になったり狼型になったりすることが出来る。
人型の時は走るのが遅くはなるが手先が器用になる。
狼型の時は足が早く牙は鋭くなる。
人型の時の見た目は尻尾と耳が生えている以外は人間と大差がない。
狼型の時は非常に狼に近いが、人間の髪のようなものが生えている。
《超共有》
人狼族が持つ能力は全て個の能力では無く全の能力として扱われる。特殊能力を会得したとしても仲間の人狼族に共有されていき、仲間の人狼族全員が使えるようになる。
そしてジークとアトロが所有していた特殊能力である
《暗視》
夜でも昼と変わらないほどにものや周りがよく見える。
《超嗅覚》
敵や味方の位置や、獲物の種類、罠の匂いなども全て嗅ぎ分けることが出来る。人狼族は元々嗅覚は鋭いが、これ程鋭くはない。
「だから分かったんですか...エルフの能力あと二つはなんですか?」
「3つ目は《鈍老》人間の歳で10歳の見た目をしたエルフの少女は20年生きている。20歳なら40歳の見た目だ。そしてその分寿命も長い。そして1つは、《無言語意思疎通》言語を習得していなくても全ての言語を使うことができ、エルフ自体独自言語を持たないが故にできた能力だ。
そして5つ目は、《睡眠術》任意の相手を確実に眠らせることが出来るが、自分も寝てしまうのが欠点なんだ。」
"走りながら説明するアトロ。アトロ自身も仲間のことが気がかりだろうが、その感情を押しつぶすように説明をしてくれる。案外、親切な奴だ。"
ーーーーーーー
一方、マリィ達が森に着く少し前
「捕らえろ!!」
「逃亡者だ!!捕まえろ!!」
森は怒号に包まれていた。
そのざわめきは森の動物達を怯えさせていた。
男のエルフ5人に対し、女のエルフが1人。
追われているのは女のエルフの方だ。
この世界のエルフは耳の先端がとんがっていて長く、手足も長い。そして、肩幅は広くなく、首が長いのが特徴。
人に近く、体毛はない。人間は大事な箇所を守るために毛が生えているが、エルフは髪の毛とまつ毛、眉毛以外の毛はない。
肌が白いものはスタンダードエルフと呼ばれ、褐色の、肌をしているものはダークエルフと言われているが、基本的に、種族としての違いはない。
森に住まうエルフだが、相手もエルフだ。5人係で捕まえようとしている。捕まるのは時間の問題であろう。
想像してみて欲しい。
鬼ごっこをした時に鬼が5人で自分一人になった時、あなたは逃げられるだろうか?
回避だけではない。飛び道具も飛び交う。
もう少しで森を抜けるという所で蔦が足に絡み付き、盛大に転んでしまう。
逃亡した女エルフは髪の色が金髪で青眼というとても青い目をしていた。
そのエルフが、もうだめかと思われたその時、自分より少し大きな狼が目の前に現れ匿ってくれた。
その後その狼の仲間達がこちらに向かってきて森の外へと逃がしてくれたが、あの助けてくれた狼は、森から出てこない。
それどころか、追っ手がまだ来る。
狼は逃亡した女エルフを背中に乗せ全力で走る。
飛んでくる弓矢、三矢それをたったの一矢で防いでみせた女エルフ。
丘まで逃げると、もう追っ手はいなかった。
ーーーーーーー
同時刻。マリィとアトロは、同胞である人狼族の群れが森から離れていく所を目にした。
人狼達の中に1人だけ人狼に跨るエルフの姿があった。
「アトロ、エルフだ。急ごう。」
「あぁ、匂いで分かってはいる。少し口を閉じておけ。舌を噛み切ってしまうぞ?」
そう言うとアトロの走るスピードは先程の約20倍程になった。時速にして凡そ2000キロである。
時間にして3秒ほどで人狼族の群れがに近づいた。速度はだんだんと落ちていく。
「何があった?」
「ア、アトロ様!!ジーク様が!!ジーク族長が!!!」
「父に何かあったのか?とりあえず止まれ」
その命令に従い、人狼達は次第に足を止めていく。
「ジーク族長が、このエルフをお助けになると同時にエルフ共に捕まってしまいまして...」
人狼族と共にいたのは逃亡してきた女で金色の髪をした青眼のエルフだ。
「なるほど。おいそこのエルフ、名をなんという?」
(以外に冷静だなアトロ。俺と会った時はめっちゃ殺しそうな勢いだったのに...)
「はっ、はっ!私はエルフ十将が1人、アルクセア・ムーン・ルード様の配下でありました、シスビィ・ガルフロット・バンケラスであります。」
「そうか、シスビィ。お前は一体どうして我らが族長を失うまでにしてお前は生きている?」
"言っている意味がわからなかった。きっとアトロも気が動転しているのだろう。言いたいことは多分これだ。「一体どうして族長が死んでまで、お前を生かそうとした?理由を知っているなら述べよ」とそう言いたいのだろう。"
「はっ。私はアルクセア様の側近でありまして、エルフが王であらせられます、アルシュット・ゼルファ・マクリス様が、アルクセア様にあるご命令をなされました。それは今年中にエルフ以外の全ての種族の根絶やし。淘汰をする。その尖兵隊の御旗となってくれとの話でした。」
アトロは、人間の姿になり他の人狼族を宥めるような仕草を取ると少し驚きながらも質問をした。
「だが、5000年前の神の盟約により、全ての種族は他の種族を絶滅させてはならぬ。と記入がされ...まさか。」
「はい。そのまさかでございます。その条約の期限は5000年。つまりつい最近その盟約は、無効となってしまったのです。これをいいことにアルシュット様はエルフ以外の種族を絶滅させようと企んでいます。アルクセア様と私は他の種族が居なくなるのはとても悲しいと感じ、辞めて頂くよう申し出ましたところ、アクリアの森、先の森の牢獄にアルクセア様と閉じ込められてしまったのです。」
「ふむ。なるほど」
アトロの姿は、もう既に族長のような風格を持っていた。雄々しい背中に中身は男ながらも女の体をしたマリィは少し心惹かれていた。
「それで私達は森の牢獄に囚われていたわけですが、アルクセア様が、私を逃がしてくださいまして、他の種族すべてに警告に向かおうとしておりましたところ警備兵に見つかり、このような事態に...」
「それで父は捕えられたというわけか。それでシスビィ、お前に質問だが、もし仮に警備兵がいなかったとしてお前が無事逃げれたとしてもお前がそれを伝えたところで他の種族はそれを信じず真っ先にお前を殺すだろうな。前の俺ならそうしていた。」
「っ...」
「だが今はここにいるワールドアイの持ち主であるエルフマリィが居るから俺達はまだお前を慣用的に受け入れることは出来る。だが、エルフの事だ。これ全てが罠である可能性が高い。」
「なっ...いえ、確かにそう思われても仕方ありませんね。不意打ち騙し討ちは私たちエルフの専売特許。私がそういうものだと思われても...」
「いや、そうではない。お前だけを騙してお前という罠を仕掛けてきているという事だ。例えば我らの族長であるジークを捉えるためや、人狼族を根絶やしにするためだとかな。彼の王は、ワールドアイの持ち主で、影の王は戦略の神だ。俺たちの行動くらい容易く読み取れるだろう。だからその作戦に乗る。」
「えっ?」
「えっ?」
シスビィとマリィは、同じタイミングで驚いた。その作戦に乗ってしまえば人狼族の勝ちは必死。絶滅の後一歩のところまではさえされるだろう。
「簡単な話だ。シスビィ。お前が俺達と絡んだらお前はまず何をする?それをしながら知っていると知らさせないように動く。だが相手の思惑通りにはさせない。」
「はっ、はい!私はまず成功を祈って神の祠、太陽神ホルティス様の砦に向かいます。あと、伝え忘れていたことなんですが...」
「なんだ?」
「私が牢獄に入れられる少し前に聞いた話では、エルフの狂乱隊が放たれるとの事で、もう時間が無いかと...」
するとアトロは驚きと怒りを顕にし、狼の姿へと変化すると怒鳴るように言い放った。
「それを早く言え!行くぞお前達。休む暇はもうないと思え!」
「エルフ狂乱隊ってなんだ??」
「マリィ殿それは後で話す。とりあえず今は太陽神の砦まで行くぞ!」
そしてマリィは、アトロの背中のうえに乗ると全速力で丘を抜け、山を越え、砂漠地帯へと足を踏み入れた。
距離はどのくらいだろうか。脱落する人狼はいないが、だんだんと移動速度が落ちていく。
そして見えてくる。砂漠に聳え立つ大きな大きな砦のような物。
そこは太陽神ホルティスがエルフによって封印され、閉じ込められた場所でもある。
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