第3話人狼族×エルフ=出会い
読み方
() ←主人公などの心の声
「」←セリフ
" " ←主人公目線の表現
"" "" ←効果音
←表現
' ' ←誰かの考え
3・人狼族×エルフ=出会い
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朝日が昇り日差しが強くなり始めた。気温は低い気がしていた。
「ジークさんが居たから...??」
「ジークは元々正義感が強くてね。まあそれは私達の息子も受け継いではいるのだけど。話を戻すと、エルフであろうがどの種族であろうが偏見で見るのでは無く、相手を見てあげることから始める。それから決めてみる。って考えなのよ。族長に対して従えない者ももちろん居る。そんなことしてたらいくら生命があってもそう長くは生きれないからね。この世界では...。」
「従えない者..ジークさんに従わない人?人狼達はどうするんですか?」
「それでもついて行く。従わないのはその意思だけ。もし相手に敵意があると認識されれば、貴方も同族に殺されていた可能性は十分にある。」
「...マジですか...。と、とりあえずお...私はどうすれば...?」
「とりあえず名前を変えた方がいいんじゃない?呼び名が男だと転生者とはわかられても、生きにくいよ。」
(名前...名前かぁ...。)
「なんでもいいんですかね?」
「変な名前じゃなければ」
「マリィ...ってどうですか?」
「良い名前ね。どうしてその名前にしようと思ったの?」
「私の母が'お前が女の子だったら真理って名前にしてた'と言っててそれから取りました」
"俺の母親は俺を女手一つで育ててくれようとした人だ。
でも、もうその人は俺が中学の時に交通事故で亡くなった。
母がいなくなったそのショックでオタクになった...と言えば伝わるだろうか。心の拠り所が欲しかったのだ。"
「そうなのね。あ、これからどうするかだったわね?そうね...さっきのエルフの話を聞いてどう思ったの?」
とりあえずエルフのその横暴は許せなかった。
他の種族が甚振られているのも、自分がエルフであることも少し憎かった。
「...わかりません。でも私は、エルフの行いが許せません。」
「今の返答であなたがどうするべきか考えたわ。ジーク。アトロを呼んできて?」
「分かった。だが何をする気だ?」
ジークとミーナはコソコソと話し合う。
周りの人狼達は俺を睨み続け警戒を解こうとしない。
"その殺気は少しでも気を抜けば意識が飛ぶほど恐ろしい眼光で見つめられていた。"
「お呼びですか?」
そこには好青年と言えるとても爽やかな少年がこちらへ向かって歩いてきた。
ジークの隣を歩いていたその好青年は明らかにしかし冷徹な目で殺意のようなものをマリィへと向けていた。
「紹介しよう。俺達の1人息子のアトロだ。アトロ。こちらは転生者のマリィ。さっきも説明した通り不思議な転生の仕方だがな。」
「父よ。同族も私も同じですが、群れにエルフなぞを引き込めば大変なことになります。即座にこの場からそのエルフを離れさせるべきです。」
アトロはジークに物申すと同時にアトロはマリィに対して睨みをきかせていた。
「だがな、こやつはエルフを許せないと言っているのだ。こやつに少し期待したいのだ。」
「甘いです。いいですか?これがもしエルフの策略ならまんまとハメられています。さらに言えば実際に体験もしたことがないくせに許せない等とどの口が言えたものか。」
「口を慎め。彼女だってこの世界の住人だ。世界を平和にするため他種族と連繋を取るのは必要な事なのだ。それは例えエルフであったとしてもだ。」
ジークはそっと目を瞑り、眉間に皺を寄せ始めた。
2人とも、腕組をし心情身を守るような形で話をしていた。
「やはり甘すぎます。夢物語です。こんな事のために私を呼ばないでいただきたい。」
ジークの隣にいたミーナが口を開く。この圧に押されていないだけとても肝が座ってると言えるだろう。
「アトロ...。あなたは人一倍正義感が強い。でもその正義感が差別になってきているのよ。」
「母は何を言っているのですか。私は極めて冷静に物事を見ているんです。」
ヒートアップする両者はまるで同族そっちのけで議論をしていた。マリィは痺れを切らし、多少怯えながら申し訳なさそうに、そして悲しそうに言う。
「あ、あの...そんなに迷惑なら私ひとりでどっか行くので...もう見捨ててくれていいですから...。」
ジークは"これではいけない"という心を胸に強行手段としてアトロに命令する。
「いや、それには及ばないよ。息子が失礼をした。アトロ族長命令だ。このエルフ。マリィと別働隊として行動をしろ。行動ルートや方針は自由だ。」
その言葉を聞いたマリィとアトロは驚きを隠せずにいた。
「お断りさせていただきます。何故ここで分断させるのかよくわかりませんし、このエルフと共にいれば他の種族から狙われる可能性も...」
「お前のその偏見を治す為だ。その偏見は今後この人狼族をまとめあげる上で最も厄介な課題になるぞ?」
アトロは確かにその偏見に対して負い目を感じてはいた。この機会を逃せばきっともうこれ以上のチャンスはないだろう。
しかし、マリィは一方的に決められたこの話を良いと思うことは無い。
"あんなめちゃくちゃに言われていいと思えるはずがない。
だってめっちゃ言われたもん。"
「...分かりました。確かにその通りです。マリィ殿、先程は失礼をした。我々は別働隊として分断する。しかし、同族の部隊と離れる距離は10キロだ。なにかおかしな真似をした場合、お前の首を噛みちぎってやるからな。」
「え...あ、はい...」
(ひゃぁこわ。なにあのマジで殺しにかかってきそうな顔!あれもうあれですわ。ガン飛ばしてるだけで人殺せますわメドゥーサですわ。)
「よし。ではもう夜明けが近い。エルフの食事はした事があるか?マリィ殿」
ジークは狼の姿に戻るとミーナやアトロも狼の姿へと変化した。
他の人狼族は警戒を解いてないためずっと狼のままだった。
「えっ、いや...右も左もわかりません。」
「そうか。基本的にエルフは肉や魚などの生物的な食材を食すことが出来ない。なんでも不味く感じるんだとか。その代わり木の実や草や葉っぱは美味しく食べれる。俺達は食えないがな。」
「そうなんですか。肉食べたかったなぁ〜」
「食べれるは食べれるがまずいぞ?俺達は美味いと思えるがな。この近くに小さな森がある。お前はそこできのみやらを調達しておけ。俺達はそこで狩りを行う。」
ジークはそう言うと他の人狼族に呼びかけるように遠吠えをした。
「乗れ」
「分かりましたー...」
マリィはアトロの背中の上に乗り、この広い平原を疾走していく。
山は差ほどの高さはないが人狼族のスピードは高さによる恐怖より速さによる恐怖を物語っていた。
山を下り、湖を越え、湿地帯を抜けると山のような岩肌の見えない森が目の前に聳え立っていた。
移動時間は1時間くらいだろうか。
"こ、腰が痛い...。頭ガンガンする...クラクラする..."
「よし、着いたぞマリィ殿。狩りは一応俺一人で行う。お前は木の実でも取っていろ」
「あっ...はっはーい...ってあれ?...皆さんは...?」
「この森の反対側に行っている。あちらの方が数が多いからな。」
本当にいきなり森である。徐々に木が生えている訳でも無い。何かに線をひかれたかのようにそれ以降に木はない。
「そ、そうなんですか...」
「安心しろ。お前と二人きりになったとしても襲わないし、怯える必要も無い。それとこの近くはエルフが所有する牢獄がある。ここの付近であればお前は見つかることは無いだろうが、くれぐれも気をつけろよ。」
「わ、分かりました...」
「もう敬語はよしてくれ。俺自身、先の態度は反省するべきだとちゃんと認識はしている。しかし、それほどにエルフが皆憎いんだ。同族を目の前で陵辱されたり、恋人を目の前で殺されたり色々とな...。」
悲しげな顔を浮かべるアトロは、その光景を思い浮かべながらそっと目を閉じ、そして目を開くと強い眼差しでマリィを見つめる。
「だからこそお前が全くの無関係であったとしてもこの憎しみは掻き消えることは無いだろう。」
目眩や吐き気は薄れ始め、意識がはっきりしてきた時、いい匂いが森からしてきた。
そして何か嫌な気配も森からは感じられる。
「感じるか?エルフ特有の能力、《【草】採取》と《敵感知》が、定着してきたんだろうな。耳がぴくぴくと動いているぞ。」
(草採取?敵感知?)
「草感知とか敵感知ってなんです..か?」
「エルフには5つの固有スキルがある。1つ目は《【草】採取》木の実や果物、食べれる薬草や葉っぱなどを感覚だけでわかる。
2つ目は《敵感知》自身にとって害意を持つ者、または身の危険がありそうな相手を敏感に感じ取ることが出来る。
3つ目は...ん?なんだ?」
いきなり険しく眉間にシワを寄せる狼姿のアトロ。
物々しい雰囲気を出しマリィを見る。
「マリィ殿、早く俺の背中に乗れ。危険信号だ。走りながら説明する。」
慌ててアトロの背中に乗るマリィ。一体何があったのだろうか。
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