第2話人狼族×転生者=同郷

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' ' ←誰かの考え



2・人狼族×転生者=同郷

ーーーーーーーーーーーーーー



"エルフに恨みでもあるのか?"


「えっと...それはなんで...ですか?」


「多分日本にいた時のエルフのイメージは森の狩人や森の住人みたいなものだと思うのよ」


「そうですね。あとは可愛かったりかっこよかったり。」


「可愛いとかカッコイイはイメージそのままだと思うけど、前者の方は全く違う。何が違うって...」


ミーナはジークの方をちらっと見る。

静かに頷き目を瞑る。それは'いい'という合図なのか、はたまた、'好きにしろ'という合図なのかは伝わらなかった。


「エルフはこの世界の支配者よ。そしてエルフ以外を脅かす脅威の種族でもある。人間も私達も同種のエルフでさえも。」


「なんでですか?あっ、すいません。さっきっからなんでなんで言っちゃって...」


「この世界に最近来たんでしょ?

右も左も分からないのは当然のこと。教えるのは私たちの役目だしね。

兎も角、エルフは人間や魔物、全てを虐げているから、あなたがいくら転生者だと言っても、エルフの巧妙な罠かもしれないと他の種族は疑うのよ。

無論、私以外の人狼族も疑っている可能性はある。」


"だからか。さっきっからジークさんの後ろにいる狼達はやたらと殺意が剥き出しで警戒を解こうとしない。"


草原に波立つ風。日が昇り始めあたりが見え始める。薄暗く見えなかった彼等の顔も。


「そうなんですか。じゃあ、俺...?私?」


「好きな方で呼びなさい。」


"ミーナは優しい声で俺に呟く"


「なれないといけない感じがするので、私でいきます。えっと、私はこれからどうすればいいんですか?」


「そうね...ジーク、貴方はどうした方がいいと思う?」


人狼族の長であるジークは、少し悩み、口を開き一声で言う。


「まずは、この世界の歴史を教えてやれ。それからそいつに決めさせた方がいい。」


「そうね。長くなるけどいいかしら?」


"長くなるのか。まあでも、ここまで色々教えてくれようとしてくれてるんだ。聞かない訳にはいかないか。それに、情報は多い方が今後動きやすいしな"


(この世界に魔法とかあるのかな。歴史ってどんな歴史だろう?)


「是非お願いします!」


話を纏めずに書くとこのような内容だ。


5000年前、元は人間が支配していた世界で魔物などは人間の配下だった。

だが、エルフだけは人間達からの支配を拒否し続け戦争に至った。

その時ある1人のエルフがエルフと魔物達を救った

彼は後にエルフの王となる。

方法は元々魔物に対して軽蔑的な事をしていた人間達に、反感があった魔物達をそのエルフが人間達と魔物を分かれさせるいい手があると話を持ち込みそれに賛同した

内容は、まず魔物にエルフの本当の情報を全て流し込む。

それを全て真実として報告し、きっと人間なら魔物を先に寄越してきて最後に手柄を取るつもり。

と考え、エルフと魔物達を戦わせているようにみせ死体の真似をするから、人間達をこっち側に来させてくれと言った

そして、魔物達はそれを実行し、人間達が来た所でエルフが奇襲を行い魔物もエルフに加勢した。その結果大勢の人間が死に、人間の勢力は大半をそがれて言った。

その後彼はエルフの王となるが、毒殺され、圧政や恐怖支配による世界統治が行われていった。


"話を簡潔にまとめると、最初のエルフ王の作戦が上手くいったことでエルフに活気がつきそれに便乗したエルフが力を増しているという事だ。"


ミーナは話し終えると""ふぅ...""とため息をついた。


「あの、すみません。疲れましたよね?」


「気にしないで。この世界に来た人は皆知らないから元いる人が教えるのがこの世界の暗黙の了解なの。所で向こうで転生系のアニメとか多かったって話を聞いたことがあるけど予想と違った?」


「だいぶ違いますね。転生系は大抵"人間は人間に"とか驚異的な能力での転生とか多いですから。」


「あら、その点でいえば、貴方は当たりくじね。エルフに転生しているのに迫害されることなく、さらにその目を持っている。」


「エルフが...迫害?」


彼女は悲しげな顔を浮かべ次のように語った。


この世界に転生や転移して来るものは多く、ほぼ違う種族での転生が普通である。だが、転生や転移は過去の記憶がある場合が多く、その転生、転移者は原住民に知恵や力を与えたりすることもあるのだとか。

が、エルフは転生や転移したエルフを即座に処刑するというのが掟らしい。

何でも、変に知恵を持ったり力を持つ同族は種の存命を脅かす存在になるだとかどうだとか。

更に聞くとエルフは長命な寿命を持ちながらさほどの知恵を持っていなかったのだが、5000年前に知能だけではダメだと、知恵や力をつけ、200年生きると言うのが長所だと気づき、以降とてつもない力を有してこの世界に君臨しているようだ。


そしてつい最近。50年前に魔王軍対エルフ軍の戦争が起きたそうだ。

エルフは他種族を見下し虐げ支配し続けていた。その行為に腹を立てていた元人間の魔王が御旗となり、魔王軍及び協力した人族や人狼族を除く魔族、精霊種。総勢約1億。対するエルフ軍は500万。

戦力差は圧倒的であった。


結果から言うとエルフ軍の圧勝。エルフ軍は500万の兵のうちたったの10万のみの兵を失うだけで勝利した。

今もなおその王は王として君臨してはいるがその頃からエルフの王が2人居た。

実際には1人だが、影で支える王が1人居た。


表の王の名はアルシュット・ゼルファ・マクリス。

ワールドアイという能力を持ち、視認できるものならたとえ宇宙の果てでも見ることが出来る。

神格の目を持つエルフの王である。

神格の目は、エルフであればワールドアイ。

ドワーフであれば錬成創造の能力

などその種族特有の何かを特化させることが出来るものである。

ワールドアイは障害物があるとそれを透過して見ることなどはできない。


そして陰の王の名はブルシュレア・ゼルファ・マクリス。

究極の参謀。そして、未来予知にさえ到達しうるその予測はまるで神の如き軍師。

500万の兵が1億の兵を討ち取った理由がその2人がいたからなのだと言う。


「そんなこと本当に可能なんですか?」


「分からない。でも聞いた話だと、奇襲や陽動。それらの作戦とは全く違っていたそうなの。内側から殺されていったそうよ。でも奇襲ではない。」


「内側から!?魔法か何かですか!?」


「いいえ。古典的な普通の弓を一晩で5000万の魔族達を...戦争とはいえ一方的過ぎる。」


聞くと一矢一矢が一人づつ確実に正確に絶命させる大矢で貫いていったのだとか。


「エルフはエルフ以外の全ての種族に憎まれているのよ。勿論、この人狼族もエルフを憎んでいる。だから私はエルフの国に行くのは勧めない。同郷の人がそんな所に行って欲しくない」


「確かに...そんな国ならあまり行きたいとは思わないですね。あれ?でも人狼族はその50年前の戦争には参加しなかったんですよね?怯えるのなら分かるんですが、なぜ憎んでいるんですか?」


「人狼族は私が生まれる少し前から掃討されていったの。その戦争で魔族や人間族、精霊種などは少なくなったけど人狼族は少し多かったからね。だからエルフは人狼族を減らす作戦を立てた。エルフはエルフ以外の種族に対して容赦がないの。まぁ、同族でも容赦はないのだけど。戦をいつ行うとかそういう事前通達無しに奇襲するのが普通。勝つためには...いや、これは勝負とは言わないわね。わかりやすく言えば、ババ抜きで最初からペアを全て揃えて置いて勝つ。みたいなものだから。」


人狼族の長ジークの兄アークは元族長でミーナの母が殺されそうになったところを助けたのだ。

そしてアークは人狼族でジークと同じく正義感が強く、エルフを助けようとしたことで、その助ける行為を逆手にとった罠でありそれが原因で殺されてしまった。

だがジークはこれを恨むことも憎むこともせずだた「運が悪かった」とだけ呟いたと言う。

人狼族はこういうことが起こったからこそ、エルフが憎いのだろう。


「そうなのか。それは...恐ろしいな...」


「でも転生した貴方に私は別に害意は持ってない。まぁ、ジーク以外の人狼族は害意と殺意が漏れ出てしまっているけど。寝首を喰われなかったのはジークが居たからなのよ。」


"ジークさん?なぜジークさんが関係するのだろうか?

確かに族長ではあるが、ジークさんもエルフをきっと恨んではいるはずだ。

だがジークさんにはその憎しみや恨みといった負の感情はあまり感じられない。"

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