オタク×転生=エルフ

@amamesan

第1話オタク×転生=エルフ

読み方

() ←主人公などの心の声

「」←セリフ

" " ←主人公目線の表現

"" "" ←効果音

←表現

' ' ←誰かの考え


1・オタク×転生=エルフ

ーーーーーーーーーーーーーー



ーーーあたりはすっかり暗く寝静まっていた。

ただ聞こえるは狼の遠吠え。

そして、「起きろエルフ」の掛け声のみーーー


某県白玉町

"俺はこの何もない田舎町で生まれ育った。

高校二年の17歳。

趣味はアニメとゲーム。田舎ではあるけどバスで都市部にはいくことが出来る。

彼女?ナニソレオイシイノ?

今日も俺はアニメの為にアニメグッズを買って夕方、帰宅するのだった...いや、帰宅出来るはずだった。"


「いやぁ...限定特典GET!家帰ったら早速開けないとなぁ。いや、開けないで飾っておくか?」


後ろからものすごい殺気を感じ振り向く。人気のない道。夕暮れの茜が脈打つ鼓動。


「えっ?く、黒ずくめ!?」


そこには道に俺しかいないはずなのに遠くから猛烈な突進をしてくる一人の男。

"黒ずくめであり、体格差は大してないが俺はオタク。そして荷物もってる俺は、逃げてもすぐに捕まるだろう。

そしてそいつは手にサバイバルナイフを持ってる。

うん。これあれだ、通り魔というか殺人鬼に近いわ。"


「いや、ちょ!まじ待てって!!!」


烏は吠える。太陽は唸る。地面は足繁く行く手を阻む。それは紛いもなく常日頃に欠かしていた運動の不足。


"荷物を投げ必死に逃げるが、めっちゃ追っかけてくる。"


「いやマジでそんな本気で追いかけてこなくていいって!!!!」


"このまんまじゃ埒が明かない。

俺は立ち向かうことにした。実際、俺が好きな漫画やアニメには格闘アニメがある。

そこの技を使えば何とかなると思っては...いないが、とりあえず驚かすにはそれがいいと思った。"


「さぁ!喰らえ!」


"某漫画のセリフ。だがそれでも、まじで追ってくる。

まあ俺が言ってることは矛盾している。

逃げながら"さぁ!喰らえ!"って喰らわせたいのか喰らわせたくないのか。

ぶっちゃけ食らわせたいわけがない。

しかしこれでも逃げないか。

俺は立ち向かうことにした。

某アニメ、某漫画のとある立ち姿。

オーガのポーズである。両手を両方左右対称に125度ほどあげる。そして手のひらを全力で広げ両足のかかとをくっつけ、つま先は少し開く。全力で背中 とお腹と胸と足に力を入れると完成なのだが、筋肉がない俺は全くの無駄である。"


""グサッ...""


"はい。知ってました。刺されました。しかもこんなグッサリしますか。

あ、これ死ぬやつだ。

うん。死んだ。寒い。夏だぞ?

夏イベ帰りだぞ?なぜ寒い?

夜になるからか?いやさっき走ったから?

んなわけあるか。刺されたからだよ。


彼女...1度は欲しかった...。"


空気は冷たく空は黄金色。黄金と紅が眼に焼き付き、草原と森を描く。


ーーーーー


"んっ...

あれ?死んでない?

いや死んだよな?刺されたし...

まさかあれか?転生か!?

夢にまでみた転生か!?"




"ほうほう...胸...あるな。女に変身したのか?

耳が動く。長い。

俺の推測だが俺はエルフに転生したようだ。

髪は...緑色だな。

すごい遠くまで見えるけど、どこを見ても平原だな。

だいぶ遠くまで見てるけど、全然なんも見えない。

てか寒。えっ、服1枚?特典無し?

なんか転生したら普通特典あるでしょ。ないの?

まさか目が良いだけ?え?それだけ!?"


歩けど歩けど先の見えぬ平野に独り。

道無き道をひたすらにただひたすらに野原を歩く。裸足で歩くが石などがないが故に土踏まずにかけての痛みはない。


"はぁ...だいぶ歩いた。

転生した時は昼だったのにもう夕方に近い。

しかし、裸足。足の裏若干痛いな。

でも人間の時は裸足で歩いた時はもう、少し歩いただけで痛いって言うのに、そんな痛くないな。エルフに転生したからか?"


辺りはうっすらと暗く、月のようなものは浮かんでいた。

生物の誕生に欠かせない、ある位置にあった引力を生み出していた衛星である。

空は照り返しがないが故の満天の星空をうっすらと描いていた。


"あぁもう夜だ。流石に夜行動するのはあまり良くないな。

だが、本当に転生したのか...?

夢って可能性もあるしな…。

でもこんな綺麗な空、うちの方も綺麗は綺麗だけどこんな運河見れない。

しかしどうするかな。

寝ようにも木生えてなければ、地面に寝たくもない...。"


地面を歩く音は聞こえど虫の音色も他の音も聞こえない。

聞こえるは風の靡く音とそれに誘われた草の擦れる音。


"...ってあれ?動物1匹...いや、虫も見てない。

確か生き物が少ないのって...確か高山だよな。

まさか...高い山なのか?こんな平野みたいな高地があるのか?

そういや、確かに酸素が薄いな。

あれ...いきなり睡魔が..."


筋肉を使う場合血液が送り込まれ、その血液が体内に回ると同時に脳の体温が下がることで意識的に睡魔を襲わせ睡眠を取るという行為が体の中で行われる。

高山病の場合気圧による血液中の流れ自体が変化する事によって手のむくみや吐き気等を伴うが、殆どのものが一時的なもので、慣れることによってその現象は収まる。尚、高山に居る場合執拗に筋肉の疲労を繰り返すため、睡魔が襲ってきやすい。



"俺は寝てしまった。いきなり倒れるようにして。

だが深い眠りではなかった。

とても浅い訳では無いが、何処からか駆け抜けてくるような足音が聞こえた。

更に大きな遠吠え。

これはあれだ。狼だ。

確か死んだフリしておけば、食われることは...な、無いよな?無いって信じてるぞ。"



誰もいなかったはずの草原で草を踏むサクッサクッという音。

もう既に意識はあって起きてはいたが、筋肉が動こうとしない。


(やべぇ、完全にこっち来てるよ...!!どうしよう。転生した初日に俺食われちゃうの?まさか転生前に"喰らえ"って言っちゃったからか!?)


「おい」


(どうか殺されませんように...!!)


「おい起きろエルフ」


(って...人の声?)


"恐る恐る目を開ける。

はい。狼の顔が俺の顔の目の前にあります。これあれだ、人の声をまねされて食われるやつだ。"


「起きたかエルフ。その貧相な服装。こんな場所に何の用だ。そして何故立ち上がらない?」


"あれ?狼って人間の言葉喋れるの?ってか何で言葉わかるの?

話して伝わるのかな。"


「き...、筋肉が思うように動か...あ、動いた。えっと...あの、やっぱり俺エルフなんですよね...?」


"筋肉が動き始めふらふらするが、立ち上がることが出来た。ていうか、いや何?

何この変な回答。

パリピ(自称)なこの俺がコミュ障ぶりの回答。

その狼は、仲間に気づかれぬよう、静かな声で俺に質問をしてきた。"


「その口ぶり...お前...もしかして転生してきたのか?」


「え、あ...はい。刺されて死んで転生したらしいです。」


「ほう。だが珍しいな。うちの人狼族にも、1人転生者はいるが...このタイプは...転移か?おいミーナ。ミーナよ。来るがいい。」


"えっ?人狼族?転生者、他にもいるの?転生ってすごい珍しいことでもなかったりするの?でも、何...珍しい?エルフが珍しいのかな…?"


「もう...そんな大声で呼ばなくても心で繋がっているのだから聞こえてますよ」


"歩いてくる服を着た一人の女性。人間の形をしてはいるが尻尾と本来耳がある部分に耳はなく、本来耳がある部分に毛の生えた犬のような耳がある。

立っている耳をピクピクとさせていた。"


「紹介しよう。彼女は我が妻で、異世界からの転生者だ。そして俺はこの人狼族の長...」


するとその狼は上に回りながら飛ぶ。

そしてその瞬間その狼は人の姿になった。

狼の姿の時のこの狼は何も着ていなかったが、人の姿をすると変身すると服を着るようだ。


「ファンク・ジークと言う。お前の名前は?」


「俺は、高瀬 遥太...って言います...」


(内心ガクブルだよおい。こわいよ。人間になっても怖いものは怖いよ。)


「ほう...その名前ならばミーナと同郷か。」


「え?ミーナさんも日本なんですか?」


「えぇ、私も日本から転生してきたの。でもたしかに不思議ね。」


"ミーナは考える人のように、顎を手の上にのせなんなのだろう?と考えていた。"


「何か...おかしいんですか?」


"俺はエルフに転生するのがおかしいという事かと思っていたが、どうやら違うようだ。"


ミーナは口を開き何が珍しいのかを語り始めた。


「本来転生とは、他の世界で死んでしまった場合、稀に起こる事象で、記憶を受け継ぐ場合と受け継がないがあるのだけど、本来転生は新しい生命としてゼロから誕生するんです。」


ミーナは更に語り続ける。


「そして転移というのもあります。転生と似ていて他の世界で死んでしまった場合に稀に起こる事象で記憶を引き継ぎながら、特別な力を持ちながら転移する前の姿で転移後の世界にいることが出来るんです。」


"そういう事か。そうなるとたしかに俺は異例だ。

転生といえば転生だ。だが、新しい生命ではなく人生...いやエルフ生...。

だがゼロからではないし、転移とも違う。

日本の時点でエルフの姿なわけないしな。"


「つまり...俺は、おかしいってことか...?」


「端的に言えばそうなるな。だが俺的にはもっと興味深いものがお前には備わっている。」


ジークは他のことに興味があるように俺を見つめた。


「え?まだ他にも俺に何かあるんですか?」


"まさか転生して特典無しかと思ったらめっちゃあるのか?これ!?俺が気付かないだけで実はやばい能力があったり..."


ミーナがその珍しさを語り始める。


「えぇ。貴方はエルフなのだけど。

本来、エルフの髪の色は金や白、黒、稀に赤や青もいるけど、緑というのは見たことも聞いたことも無いわ。」


そしてジークがミーナに続けて話し始める。


「それにその瞳。お前からは見えないだろうが左眼が神格の眼だな。オッドアイはよくいるが神格の眼は高位の能力を持っていたりする。片目の神格の眼を持つものは俺の知る限り、現エルフ王、人間のファイター族に1人、龍族の長...くらいか?神格の目は黄色い。もう片方は赤の目だが赤の目はエルフにもよくいるからそこは珍しくはないな。」


「い、意外に居るんですね...」


"なんだよ転生特典がめちゃくちゃ凄いのかと思ってたら結構いるんじゃないか。

期待して損した。"


「まあこれくらいで話は終わりにするか。お前、これからどうするつもりだ?」


「えっ!?これから...ですか...。そうですね...とりあえずエルフの国に行ってみようと思います。」


するとミーナがすぐに静かな声で呟いた。


「それはやめておいた方がいいと思う」


「えっ、な、なんでですか?」


"俺は困惑した。エルフなら、エルフの国に行ったって別に良いじゃないか。"


「この世界のエルフは貴方が思っているエルフとは全然違うから。」


その声は澄んでいてそしてその瞳はとても鋭く内に秘めた怒りを押さえ込んでいた。


"俺はその彼女の瞳の奥底に眠る怒りの眼差しを感じとった。"


それは憎いや悔しいといった感情に近いものだろう。

周りの狼達も彼を見た時そういうような目を

していた。

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