第2話 喫茶店にて
病院を出た彼は少し遅めの昼食を取ることにした。ハムカツサンドとコーヒーである。
しかし、どこか空虚な目で手を進めていた。無理もない、わざわざ電気ショックをしてもらったのにも関わらず、思い出せることも何もないまま、高い病院代を支払うことになったのだから。
「ほんと、何なんだろうな。この数字」
記号からして、日付を表しているのは分かる。しかし、次の17というのがどうにもしっくりこない。
17日の部分を間違えて二回書いたとか? でも、今時そんなうっかりミスをするとは思えないし、思いたくもない。
いっそのことスマホで検索してみるか? だけど、それをしてしまうと何かに負けたような気分になってしまうから、出来ればそれはしたくない。
編集さんとの打ち合わせ兼締切日は一週間後、このメモの日付は二週間後。と、言うことは仕事上の打ち合わせとは考えにくい。じゃあ、一体、これは何だ。
そんなことを悶々と考えながら食事をしていたら隣から話声が聞こえてきた。
「先輩、いよいよですね」
「ああ、長かったな」
「かれこれ半年ですもんね。ずいぶん待たせてもらいましたよ」
「まぁ、何だかんだ言って楽しみだけどな」
「本当に。10/17日、楽しみですね」
「全くだ」
そんな会話を繰り広げた二人の男は喫茶店を後にした。
そして、彼はびっくりしたのか、口に含んだコーヒーを少し吹いてしまい、周囲のひんしゅくを買っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます