2018年10月17日 17

花本真一

第1話 病院にて

「記憶喪失ですか」

「はい。昨日、高校時代の友達と集まって飲んだんです。そして、気が付いたら家の中で寝ていました」

 都内の某病院を訪ねた一人の男性がいた。彼曰く、昨日一日の記憶が丸々抜けてしまい、不安に駆られたからここに来たと言うのだ。

「それで、何か困ったことがあったのですか。仕事の面とかで」

「いや、僕は自営業をしていまして。基本仕事上の人間関係とかは会社勤めの人と比べると、困ったことにはなりません。ただ」

「ただ? 」

「ポケットに変なメモが入っていたんです」

 男はメモを見せた。そこには2018 10/17 17と書かれていた。

「筆跡は僕の字なので、恐らく、友達が言ったことを書いたのだと思うんです。だけど、全く分からないんです」

「その友達に聞いてはどうですか」

「……お恥ずかしい話、誰と飲みに行ったのかも覚えてないんです」

「なるほど。それは困りましたね」

「何とかならないでしょうか。先生」

「う~ん。記憶はかなりデリケートな所なので、これと言った処方箋とかはないんですよね。だけど、このままにして帰ってもらうのも何なので、頭部に軽い電流を流す、所謂、ショック療法を試してみましょう」

「お願いします」

 こうして、男はそのための部屋へと連れていかれた。

 しかし、これと言って思い出せることはなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る