ジェイコブの章

Ⅰ少年ジェイコブとグイド

第1話 序章

『旅人』――それは例えるなら、渡り鳥である。


 暖かい場所を求め、自由に空を飛ぶ習性にならい、旅人も謎に包まれたものを求め、その足で歩み続けた。


 しかし、どんなに旅を続けても、踏み込んではならない領域に、踏み込んでしまうことがある。


 郷に入って郷に従え――そうでなければ、旅人も等しく災いが降りかかるであろう。


 ――これは、全ての始まりの物語である。


 突然、失踪した父が遺した本を手掛かりに、歴史に葬り去られたある国と、世界の深い闇に踏み込んだ1人の旅人の話。

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