2.旅立ち

 ワタルがモモンタ島へ来て1週間が立ちました。

 長老とアリス、そして他の島にいる亜人達はワタルの適正を試しました。


 剣、槍、斧、弓、爪、魔法。


「まさかここまでポンコツとはね……」

「本当に勇者の素養があるのじゃろうか……」

「お前らが呼んだんだろバーカバーカ!」


 結果は散々。それどころか体力もなく、力もないと来ていました。特にひどいのは重さで剣・斧は振るう事すらできず、弓もダメ、爪をつけるが使い方がわからず、槍はまだマシというレベルで実用に耐えられるレベルではありませんでした。

 魔法については炎系魔法は習得の素養はあったものの、使えるのは掌から炎を出し、あたりを明るくする程度の初級魔法のみでした。


「結局は短剣、重いのはアウトだから旅人の服、頼りない勇者様ね」

「うっさいわ!」

「アリス、すまないが旅にはお主も行ってくれないか。さすがに心細すぎる」

「仕方ないわねー、長老、高くつくわよ?」

「仕方あるまい、では頼んだぞ」

「こいつら……」


 怒りで暴れてやろうと考えていましたが、自分の不甲斐なさもまた事実であり握った拳を下げました。

 一方で長老は彼の知恵には一定の評価を出していました。

 元々ゲーム好きの彼にとってファンタジー世界の仕組みなどは朝飯前で、魔法の知識やこの世界の造詣への理解は素晴らしいものがありました。


「さて、ワタル殿。魔王討伐、よろしく頼みましたぞ」

「はいはい任されましたよ。討伐したらちゃんとご褒美頼むぞアリス」

「わかってるわよ、このド変態!」

「一言余計だ!」


 喧嘩の光景を見て長老は不安な表情をします。

 杖で船をポンポンと2回叩くと、スーと海へと流れていきます。


「おーすげー、じゃあ行ってくるよ」

「頼みましたぞ!」


 船が見る見る島を離れていきます。

 ゆらゆらとゆれる船の上から小さくなっていく島をワタルは眺めます。


「で、魔王ってどこいんの?」

「そこもわかってないからまず最寄の街で聞き込みしたりかしらね」

「ゲームだったらだいたいわかってること多いけど、まぁラスボスわかってるだけマシか」


ボーと島を眺めていると、空から赤い球体が表れました。

その球体はそのまま島へと落下していきます。


ドォォーーーーーーン―――


島から轟音が響き渡り、一気にあたりが赤い光景へと変わり、燃え盛ります。


「お、おい!」

「し、島が……!」

「な、何が起こったんだ」


ワタルは状況をうまく飲み込めてませんでしたが、隣でアリスは震えていました。

彼はスッと手を出し、彼女を両手の中へと納めます。


「たぶん魔王の仕業だよなこれ」

「う、うん……」

「短い付き合いだったけど、少し嫌な気分だ。魔王、待ってろ!」

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