クライマックス-1:Elektrisch Flügel

クライマックスフェイズ:Elektrischエレクトリッシュ Flügelフリューゲル(シーンプレイヤー:ライザ)


GM:さぁ、遂にクライマックスだ。シーンインをどうぞ!

ライザ:シーンイン!(侵蝕:114→118)

アリス:シーンイン!(侵蝕:129→133)


 攻撃ドローンの隙を掻い潜り、何とか空中庭園へと着陸した3人。しかし、本来戦闘を想定されてない飛行機は被弾によってボロボロになってしまっていた。寂しそうに、または誇らしそうに亮は役目を果たした機体を撫でている。


聳城 亮(GM):「……よくやってくれたね。僕に手伝えるのはここまでだ。ここから先は2人に託すよ」

「一般人じゃ、どう足掻いても足手まといになっちゃうし」


 アハハと苦笑して申し訳無さそうに頬を掻く彼に、ライザとアリスはそんな事はないと首を横に振った。


ライザ:「いいえ。貴方は足手まといどころか、立派な立役者ですよ。後は任せてください」

アリス:「ここから先は私たちが頑張る番だぜ。ですわ!」

聳城 亮(GM):「……うん、ありがとう。立花さんを頼むよ。僕はここで、皆の帰りを待ってるから」

アリス:「おぅ! 行ってくるですわ!」


 亮は2人に激励を贈り、共に空を飛んだ相棒と君たちを送り出す。ライザは少し目を閉じて覚悟を決めた。たとえ己の身が危ぶまれることになろうとも、UGNの監査員としてではなく自分自身の意志で彼女の元へ向かうのだ。


ライザ:「——行きましょう」



 2人が少し入り組んだ道を進むと、彼女はそこに立っていた。その背中には手にも見える機械の偽翼が創造されている。


立花 千代(GM):「……何で来ちゃったの。大人しくしててもらえれば怪我をさせずに済んだのに」

 千代は君たちへと振り返り、表情の伺えぬ仮面を向けた。氷のように冷えたその声音に背中に薄ら寒さが奔る。

アリス:「そう言われて腐ってるようじゃ、番長失格ってもんだぜですわ」

ライザ:「言ったでしょう、勝手かもしれませんが放っておきたくないと」

立花 千代(GM):「本当に勝手だよ。何でそこまで私に関わるの? ついこの間会ったばかりなのにさ」

「こんな危険な目に自分から遭う必要なんて、ないよ」

「アリスさんならまだ分かる。番長という役職があるから。でも私にはアナタが分からない」


「何故、アナタはそこまでして戦うの?」 壊れた機械のように早言はやことに疑問を繰り返し、更にそれをライザに投げかける。


ライザ:「……きっと、いつもなら役目だからと、そう応えるのでしょうが」

 少しの逡巡。しかし、ライザの答えはもう決まっていた。あとはこの気持ちを彼女に届けるだけ。

ライザ:「——今、ここに経つ理由はひとつです。似てるんですよ、僕と貴女は」

立花 千代(GM):「……似てる? 綺麗で運動神経もよくて、能力も手も腕もあるアナタが、私に?」

「おちょくるのもいい加減にして!! 一体、どこが似てるなんて言うんですか!!!!」


 それは、自分が持ち得ないものを全て持つライザへの嫉妬であり慟哭。しかし、ライザは目を逸らさない。真っ直ぐに仮面の奥底に隠れた彼女の双眸そうぼうを見つめ返した。そして全てを伝えよう。自分ライザという存在の真実を。


ライザ:「……僕は、とある有力者に造られたデザインベイビーです。苦しむ部分は異なりますが、僕も"生まれつき"に苦しんでいます」

立花 千代(GM):「デザイン、ベイビー……?」


 仮面で表情は伺えようもなかったが、その声音は驚愕の一色に染まっていた。


アリス:「……そうだったのか。ですわ」

ライザ:「役に立つよう、役目を十全に果たせるように。それだけのために造られました」

「だから僕は、"自分である"ことを諦めていたんです」

立花 千代(GM):「……じゃあ私と一緒じゃない。同じ諦めた同士なら、私の苦しみも分かる筈でしょう!?」


ライザ:「分かりますよ。でも僕と貴女では、決定的に違う部分がある」

「貴女は、僕のように夢を諦めてなんかいない」


立花 千代(GM):「——……ッ」

ライザ:「だから——今ここで貴女を止めたい。夢を掴み取った、貴女の"将来"を見たいから」

立花 千代(GM):「か、勝手ですよそんなの! 自分勝手です。そんな、そんな理由で!!」

アリス:「いいじゃねぇか。勝手上等。勝手に互いの事を大切にしてしまい、勝手に互いのことを思いやってしまう。そういう関係、なんて言うか知ってるかですわ?」

立花 千代(GM):「し、知らない。そんなの……」


 そっとアリスはライザをそっと見やる。きっとこの答えは彼の口から直接伝えたほうがいいから。そして、ライザがそれを見逃す筈がなかった。


ライザ:「あぁ、考えてみれば、言ってませんでしたね」

「……"私"は、千代さんと『友達』だと思ってるんですよ」


立花 千代(GM):「とも、だち? 私たちが、友達?」


ライザ:「勝手ながら、船上で初めて会ったときから、ずっと。密かにそう思っていたんですよ?」

 そう、これが心の奥底に隠していた私の本当の気持ち。ずっと、ずっと伝えたかった。

 だからこそ、私は——。


立花 千代(GM):「……でも、それでも私は、私は自分の腕が欲しい! 空に伸ばせる手が! 空を飛べる翼が、夢を追う資格が欲しい!!」

「これが間違ってるって言うのなら、友達だって言うのなら……2人が私を止めてよ。私は今持てる全力で、2人を倒して前に進むっ!!」


 仮面で増幅されているのは、彼女の奥底に眠っていた衝動。その名は『憎悪』。


 『何も持ってない自分が憎い』


 そんな強い想いがレネゲイドを伝って君たちを包み込んでゆく。


アリス:「友達同士、喧嘩上等! 全力で止めてやるから歯ァ食いしばれ! ですわ!!」

ライザ:指輪入れのようなケースから能力を抑制するバッジを取り出して——

「貴女が諦めないというのなら、僕が止めてみせる。そして——"私も"、諦めたりしない」


 それを天高く放り投げる。こうして、彼女たちの戦いの火蓋は切って落とされた。



GM:さぁ、それではクライマックス戦闘を開始しよう! まずは状況説明から。

 まず、この戦闘で君たちが千代に負けた場合、Eロイス《憎しみの楔》を《傲慢な理想》×3でシーン外へ効果を適用する。これにより対象が取得しているロイスをひとつタイタス化させるわけだが、これで千代は自身にロイスを取得しているキャラクター全てのそれをタイタス化させてしまう。結果、彼女は現実との絆を失うことになる。

 これは仮面の効果としてEロイス《ファイトクラブ》で表現しているが、君たちが負ければ彼女の帰り道は途絶えてしまうだろう。頑張ってほしい。


ライザ:これは負けるわけにはいかないですね……。

アリス:うむ、頑張らないとね。


GM:エネミーは『立花 千代』1体のみ。戦闘終了条件は彼女の戦闘不能になる。

 彼我の距離は10m。また、この時点で公開されているEロイスの数は5個だね。

 ここから更に増えていくので、バックトラック計算の指針にして欲しい。さて、何か質問はあるかな?


PL一同:なーし!


GM:よろしい。それでは戦闘を開始しようっ!

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