ミドル8:夢

ミドル8:夢(シーンプレイヤー:ライザ)


GM:ここも全員の登場を推奨するよ。それではシーンインどうぞ!

ライザ:(コロコロ)5点。まぁまぁですね(侵蝕:89→94)

アリス:(コロコロ)こっちは7点。熱くなってきたな(侵蝕:84→91)

GM:そういえばふと思ったけど、君たちこのアカデミアステージのつよつよアイテム『スペリオルミックス』に手を出さなかったね?

アリス:……はっ。

ライザ:購買に行ってる余裕がなかったですね……(ということにさせてください)

GM:アッハイ。


GM:君たちは足を棒にして学園中を走り回り、遂に千代の姿を見つけることに成功した。

 電波塔だ。彼女は電波塔のふもとに佇んでいる。日陰のため表情は伺えないが、その佇まいは確かに立花 千代、彼女だ。


立花 千代(GM):「…………」

ライザ:「……探しましたよ、千代さん」

アリス:「ようやく見つけた……ですわ」


 話し掛けられた事で初めて、彼女はその目線を2人に向けた。その表情は何処か虚ろで、心がここに無いかのようだ。


立花 千代(GM):「2人共、どうして?」

「どうして、私なんか探しに来たの?」

ライザ:「理由は……すみません、僕にも分かりません。ただ——」

「"放っておきたくなかった"。ただそれだけなんです」

アリス:「そういうことだ。ですわ」

立花 千代(GM):「私のことなんて、放って置いても目標を達成できると思う。むしろ、マイナスだと思うけど」

「だって、私を探すために学園生活も番長連のお仕事も、全部ほっぽりだして来たんでしょ。私なんかに構ってる暇はないんじゃない?」

「アナタがどうしてそんな格好をしてるかは分からないけど。でも、理由があるんでしょう。ねぇ——」



「ライザ"さん"?」



ライザ:「——!」


 千代の口から放たれた、"さん"という呼称。それはまるで自身のバックボーンを見据えて口にしたかのようだった。まさか、勘付かれてたか? ライザの額に冷や汗が滲む。


ライザ:「……——千代さんの言う、目標とは何ですか?」

 彼女が事あるごとに口にする、"目標"という言葉。それはまるで、自らの夢から目を逸らすためにこじつけたかのように感じられて……。

立花 千代(GM):「だってさ、皆はどうして夢なんて手が届くかも分からないものを目指すの。目標の方が、身の丈に合ったものに向けて歩めると思うけど」

「決して届く筈のないものに手を伸ばして、身を滅ぼす人だっている。非論理的じゃない?」

「ねぇ。そうだよね?」 薄ら寒い笑みを浮かべて、2人にそっと問いかける。


 ……ここで彼女に、何と声を掛ければいいのか。いくらノイマンの高速思考を巡らせても答えは出ない。いや、正しく言うのであれば最適解はある。彼女の問いに同意してしまえばいい。そうすれば彼女は己の気持ちに蓋をして、今後のアカデミアでの生活を"目標"を立てて慎ましく生きていくだろう。

 でも、それで良いのだろうか? ノイマンとしての自分と、Cランク生徒を演じる"ライザ"が葛藤する。ここで自分ライザが彼女に投げかけるべき言葉は……いや、違う。

 ここで投げかける言葉は義務めいたそんなものではなくて、"私"が想うがままを彼女へ——!


ライザ:「……えぇ。それはきっと、ひとつの答えだと思います」

「けれど、——それが全てではないことを、貴女も知っているのではないですか?」


立花 千代(GM):「…………」


 少しばかりの静寂が場を包み込んだ後、千代は震え声ながらもそれを口にする。ずっと、己の中に封じ込めていた想いの丈を。ライザの言葉は彼女の枷を、ほんの少しだけ緩めてみせた。


立花 千代(GM):「……私、私ね。小さい頃はパイロットになるのが夢だったの」

アリス:「……!」

立花 千代(GM):「翼のない人間が、空を自在に飛ぶのが素敵で、カッコイイってずっと思ってた」

「でもさ、パイロットって凄く厳しい審査と試験をくぐり抜けてやっとなれるお仕事なんだ。なのに……」


「私はっ! その参加資格さえなかったんだっ!!!!!!」


 千代は、心の中に必死に溜め込んできた思いの丈をぶちまける。彼女の夢見た『パイロットになる』なんてそもそも不可能で、そんな気持ちを誤魔化すために掲げたのは『目標』という紛い物。それを達成することで自分の心をずっと騙してきた。でも、腕を作るという目標すら私には叶えられそうにない。

 そんな自分が、腕のない醜い身体で産まれた私が……心の底から憎かった。


立花 千代(GM):「努力して、頑張ってどうにかなる問題じゃなかった。夢見る事さえおこがましい」

「お父さんとお母さんに介助してもらって、やっとどうにか生活できる人間が、パイロットになんてなれる訳がなかったんだよ!!!」


ライザ:「……それでも、貴女は、諦めきってなんかいない」

「僅かな可能性であろうと、どんな些細な希望であろうと。貴女はこうしてアカデミアに来ています」

立花 千代(GM):「でも、それももう難しいの。力の弱い私じゃ、腕を作ることさえ無理なんだ」

「Cランクじゃ、私の理想の腕は、作れない……」

ライザ:「では、諦めるのですか? 生まれには勝てないのだと、貴女"も"そう結論付けるのですか?」

立花 千代(GM):「……ぃ。諦めたくない。私だって、私だけの腕が欲しい!」

「腕が無くたってパイロットはできるって! この世界に生きる人たちに証明したいっ!!」


アリス:「……私は難しいことは、正直よく分かんねぇ。千代さんの苦しみも、100%は理解できないだろうですわ。だから、私からはこれだけ」

「ひとりで背負うだけが、夢じゃないんだぜ。ですわ」

立花 千代(GM):「どういう、意味?」

アリス:「言ったろ、私の秘密を教えるって。それにも関わる話だ。ですわ。ゆっくり話してやるから、そんな所にいないで一緒に帰ろう、ですわ」


 千代の目には、ライザとアリスの優しさが眩しいものとして映った。心の底から自分を心配して選ばれる言葉の数々。興味本位な視線や心ない言葉をぶつけてくる人たちと比べて、とても優しくて、嬉しくて……でも、だからこそ、私には……。


立花 千代(GM):「……羨ましいよ。腕のある人達が、夢を追える人達が、力のある人達が」

「それでも、私は諦めたくないから……」


 ひとりでに、とあるものが千代の眼前に浮かび上がる。恐らく彼女が《テレキネシス》で操っているのだろう。その時、天から一筋の光が差し込んだ。


「これで、私は私の夢を叶えるよ」 紺碧色が刻まれた、女性らしい花の装飾のなされた仮面を掲げて、


アリス:「仮面——まさか、ディオゲネスクラブの!?」

立花 千代(GM):「もう誰も、私の夢を邪魔させないんだからっ!」


 彼女はそれを自らに嵌めてみせた。その刹那、強大なワーディングが島全体を包み込んだ。仮面によって千代に絶大な力がもたらされている。それに加えて……。


立花 千代(GM):「まだ足りない。私にはブラックドッグの力が足りないの。だから……」 見上げるのは、傍らにそびえ立つ電波塔。

「貰うね」


GM:ここで千代がエネミーエフェクト《ラビリンス》《キングダム》《通信支配》を宣言!

 電波塔を中心とした空中庭園を生成。これにより彼女は島中の電力を自身のものとして操ることができる!

 加えて、島中が電力不足に陥るためにライフラインはストップした。


 ここオーヴァードアカデミアは海に浮かぶ孤島。外部へと通じる手段は海路か空路のみだが、それら全ては外に用意されている。加えて、外にエマージェンシーを送るための電力は千代によってカットされてしまった。

 この瞬間、アカデミアは孤立無援の危機に陥ったのだ。


ライザ:「これは——」

アリス:「相変わらずデタラメだな、仮面ってやつは! ですわ!」

立花 千代(GM):「これで、私は夢への階段を登るの。邪魔は、させない」

ライザ:「…………邪魔したくはないんですが。他者を犠牲にして叶えさせるわけには、いかないんです」

アリス:「心苦しいけど、やるしかねぇですわ」

ライザ:「ええ。貴女を止めなくてはいけない。いえ——」


「止めます。それが、僕自身の願いだから」


立花 千代(GM):「……そう、邪魔するの。でも、そうはさせない」

 その言葉を受けて、表情の伺えぬ千代が一段と低い声音で宣言した直後、千代の周囲に大量の機械部品が生み出され、自動的に組み上げられていく。

 結果、その数たるや10や20ではくだらない、大量の攻撃型ドローンが生み出された。


立花 千代(GM):「私の夢は私のもの。どうしても止めるって言うのなら追って来てよ」

「まぁ、この空中庭園に届く"手"があるのなら、だけど」


GM:ここで千代がエネミーエフェクト《見えざる道》を宣言。彼女の背中に機械部品が集まったかと思うと、瞬く間に機械仕掛けの翼が生え揃う。しかしその形はどこか歪で、まるで機械で構成された"手"を思わせる風貌だった。

 それを羽ばたかせ、彼女はこのシーンから離脱していく。


アリス:「カルペ・ディエムが言っていたのはこれのことか……とにかく追うぞ! ですわ!」

ライザ:「……はい(空中庭園に向かう手段として、もっとも効率的かつ最善なのは——)」


 2人は彼女の暴走を止めるため、学園の平和のために空中庭園に挑む。しかし、ひとつ大きな問題が浮上した。そう……彼女の言の通り、空へ至る手段が我々には無いのだ。


 夕焼け色に彩られる空へ、千代は独り飛んでいく。機械仕掛けの偽翼を羽ばたかせて。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る