ミドル6:ジェラシー

ミドル6:ジェラシー(シーンプレイヤー:アリス)


アリス:誰も彼も、重たいもの背負ってるですわ……。

ライザ:今ところ、アリスさんと亮さんがこのシナリオの清涼剤ですね。

アリス:伊達にですわ口調じゃねぇですわ!

GM:ぉ、そうだな()

 さて、では次に行こう。こちらはアリス視点のシーンとなるため、先とは逆にライザの登場は不可だ。

アリス:OK、それではシーンイン! ですわ!(出目9:侵蝕:71→80)

 ライザと別れたアリスと千代の2人。スケジュールも順調に進み、いよいよ明日が新入生歓迎会と相成った。

 そんな所へ、慌ただしそうに準備を進める亮が姿を現す。

聳城 亮(GM):「あ、早乙女さんに立花さん。お疲れ様、いよいよ明日だね、歓迎会」

アリス:「り、亮さん! 準備の方は順調か? ですわ?」

立花 千代(GM):「お疲れ様。あの時は飲み物ありがとうね」

 想い人の出現に頬を赤らめるアリスと、表情が曇ったままの千代が各々彼にねぎらいの言葉をかける。

聳城 亮(GM):「うん。ライザ君と早乙女さんのお陰で何とか間に合いそうだ!」 日輪のように眩しく笑う亮に、アリスの心のボルテージは最高潮! もはや止まるところなし!

アリス:「(トゥンク///)」

聳城 亮(GM):「僕が手配するよりも何倍も早くて助かっちゃったよ。本当にありがとう」

アリス:「(ぁぁもう色々と我慢できなくなりそうだ。ですわ!!!!)」


アリス:さっきまでのシリアスどこ行った()

ライザ:……あぁ、成程。そういうことですか。

アリス:あー、ジェラシーってもしかして。

GM:(ΦωΦ)フフフ……。


立花 千代(GM):「……アリスさん、何かお手伝いでもしてたの?」 疑問そうに、千代がアリスへ問う。

アリス:「亮さんが所属してる、航空部の助っ人をな、ですわ。航空部では飛行機を作って——」

立花 千代(GM):「……へぇ、面白そう。ちゃんと空飛ぶの?」

聳城 亮(GM):「勿論っ! いやぁ、自分の作った飛行機がちゃんと空を飛ぶんだよ!」

「これが上手くいけばグンと出来ることが広がるから、”夢”が広がるよ!!」

アリス:「……!(あ、これやっべぇですわ)」


 亮の口から放たれた"夢"という単語。それは彼女にとって禁句であった。表情の沈む千代の様子に、アリスは内心冷や汗をかく。


立花 千代(GM):「……"夢"。聳城さんって、確か一般人だったよね。普通の人」

聳城 亮(GM):「? うん、そうだね。残念ながらオーヴァードじゃないね」

立花 千代(GM):「オーヴァードなら、きっと空を飛ぶことも難しくないよね。それなのに何で空を目指すの?」

「叶うかも分からない事を追い続けるのって、残酷だし茨の道過ぎるよ」


「出来もしないことをいつまでも追い続けるより、身の丈にあった目標のほうが、いいって思うこと、ないかな」


 千代は壊れたラジオのように、自分の考えを吐露し続ける。それはまるで、同意してほしいと言わんばかりに。


聳城 亮(GM):「そうでもないよ」 しかし、そんな言葉に亮は笑顔を浮かべて否定してみせてしまった。


アリス:あぁぁぁ……。

ライザ:……。


立花 千代(GM):「……それは、どうして?」


アリス:「(やべぇ、よく分かんねぇけどこの流れは絶対にやべぇ、ですわ!!)……と、ところで、今日は天気が中々——」


 声音が低くなった千代に、アリスの心はレッドアラートを鳴り響かせている。必死に話題を切り替えようと試みるも、それは既に後の祭り。その言葉を言い終わるより先に、彼は告げてしまう。彼にとっての信条を。彼女にとっての絶望を。


聳城 亮(GM):「確かに叶わないかもしれない。でも、今は考えようもない高みに、いつか"手"が届くかもしれない」

「それは……ロマンのある話だと僕は思うんだ」


立花 千代(GM):「……ッ」

アリス:「っ……!」


 そんな理想は、そんな希望は……彼女、千代にとってあまりにも致命的な一言だった。


アリス:前振りしておいてあれだけど、誰だこんな酷い(褒め言葉)展開考えたの()

GM:わ た し だ

アリス:許さ"ん"(よくやった)


立花 千代(GM):「——それは、そんなのって!!」


 もう耐えられなかった。心の奥底にしまい込んでいた言葉が、氾濫はんらんした濁流だくりゅうのように溢れ出す。


立花 千代(GM):「そんなの、いつだって"出来る人"の台詞なんだっ!! 私が、私だって……!!!」

聳城 亮(GM):「ぇ、千代さ——!」

アリス:「千代さん——」


 なんでもいい、何か声をかけようとするが……2人の言葉が届くよりも早く、彼女は駆け出してしまう。両腕がない彼女にとって、走るとは大変に危険な行為だ。しかし、上手くバランスをとって走っていく……。

 しかし、その姿はまるで彼女にとっての限界を示しているかのようだった。


 千代の姿が見えなくなって、深呼吸を十分に挟めるだけの時が経った頃、亮はおもむろに口を開いた。


聳城 亮(GM):「……ごめん、早乙女さん。僕、言葉を間違えたんだね」

アリス:「……亮さん。悪気がないのは分かってる。けど、今のは失言だった、ですわ。特に手の話題は……」

聳城 亮(GM):「そう、だね。配慮すべきだった。酷い、ことを言っちゃったな」

「——っ! 立花さんを追いかけよう。彼女を放っておけない!」

アリス:「……そうだな、ですわ。このまま放っておいていい問題じゃない。ですわ」


GM:さて、ではこの辺りで情報収集に移ろうか。宣言をお願いね。

アリス:それでは千代さんの能力について。アイテムの宣言はなしで、素振りで参ります! (ダイスロール)達成値17で成功ですわ!

GM:素晴らしい。それでは情報を開示するよ。


*立花 千代の能力について

└彼女のアカデミアでの目標は、自身の腕となる義手を作成する事だった。

 しかし、それには強力なオーヴァード能力が必要であるが……ランクテストの結果、彼女に言い渡されたのはCランク。それもイージーエフェクトを使うのがやっとのCⅡランクだ。

 今、彼女は一生義手を作れなかもしれないという現実に絶望している。先程の行動はそれが起因しているだろう。


アリス:確認しあばばば。

ライザ:確認しました。やはりCⅡランクでしたか……。

GM:そういうことだ。さて、何かやりたいことはあるかな?

アリス:それなら……。


 そこでアリスは基本ルルブ2に記載されている『スニーキングスーツ』に挑戦し、見事に難易度の倍の達成値を叩き出して購入判定に成功した。


GM:君、社会系強過ぎない???

ライザ:凄い出目ですね(笑)

アリス:ふはははですわ! これは装備せずに所持するだけにしておく。後でライザに渡しておこう。ですわ。

ライザ:ありがたいです……。


 その後、アリスたちは千代の姿を探すものの、結局彼女の姿を見つけることはできなかった。

 雲が心を曇らせ、夜は絶望を濃くしていく。ライザが千代の行動を知ったのは、これから暫くしてのことだった。


アリス:「(……確かに、このまま放っておくのは良くない、ですわ。けど……)

「(仮に見つけたとして、彼女が私たちの言葉を聞いてくれるか……。ですわ)」


 彼女は曇りだした空を、八つ当たりのように睨みつける。しかし、そこから太陽が顔を覗かせることは決してなかった。

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