ミドル4-3:仮面の集団

GM:では先程のシーンから再開していくよ。シーンは継続だから、登場侵蝕は振らなくて大丈夫。


 仮面による生徒たちの暴走から十数分後、彼らは意識を取り戻した。念のために検査として保健室送りにされ、他生徒たちや教員たちは通常運転へ戻っていくのだが……


生徒たち(GM):「いやぁ、さっきのはビックリしたな。急に暴れだすんだもんよ」

「まぁな。でもあれだな。番長連の人やあのイケメン、格好良かったな!」

「だな! やっぱり、"高ランク"オーヴァードは一味ちげぇや!」

「俺たちにできない事も、ささっとやっちまうもんな。やっぱすげぇよ」

 ——と、熱に浮かされたかのように低ランクオーヴァードたちは高ランクへの羨望も兼ねた話題で持ち切りになっている。


アリス:人の口に戸は立てられぬ、か。あぁぁぁ。


 そんな所へ、教員たちのお手伝いに駆り出されていた千代が戻ってくる。その表情は少し曇ったものになっていた。


立花 千代(GM):「……お疲れ様。2人共強かったんだね。遠くから見てたけど、凄かったよ」

アリス:「ふぅ、怪我がないようで何よりだ。ですわ」

ライザ:「ありがとう千代さん。なんとかしなくちゃ、と思って全力以上の力が出せましたよ」

 口上では何ともないと涼しい顔をするも、脳内では冷や汗をかいてる。

「(職務上としても、彼女にとってもこれはマズい。これでは——)」


 そこで、不意に千代が口を開いた。


立花 千代(GM):「……ねぇ、少し聞いてもいいかな」

ライザ:「……何でしょう」

立花 千代(GM):「2人って、いつからオーヴァードなの? どれくらい努力すれば、それくらい強くなれるんだろう」

 千代が2人に向けた目は、先程の親しみから憧れへと。羨望と期待の眼差しに変貌する。


ライザ:「それは……」 言葉に詰まる。


 デザインベイビーであるライザは、生まれて間もなくオーヴァードになった。チルドレンとしての訓練も合わせれば、膨大な時間が注ぎ込まれている。1年やそこらで身に付くものではない。

 しかしその事実は今、力を欲しているであろう彼女にとって——


 絶望的な時間が無限にも続くことを意味している。


 更にはライザは設定上、覚醒したばかりのニュービーとしてここにいるのだ。下手に口を開けば……。


GM:ふっ、答えにくかろう。

アリス:このGM……!


立花 千代(GM):「それは?」

アリス:「……気付いたら覚醒してたってパターンもあるらしいし、明確にいつから、と答えるのは難しいな。ですわ」

立花 千代(GM):「でも、ライザさんはアカデミアに来たばかりだし、訓練してた訳でもないんだよね?」

 彼女の羨望の眼差しが、ライザに深く突き刺さる。


アリス:このGM……!!!

ライザ:ふとしたキッカケで覚醒した、と会った時に言いましたね……。


立花 千代(GM):「……やっぱり、生まれで全部決まっちゃうのかな」 小さく、ライザにしか聞こえないような声で呟く。

ライザ:「——っ」 それは、その言葉はいつも自分が——


アリス:あぁ~^^絶望の音ォ~^^


ライザ:カヴァーを貫き通せば、彼女を深く傷つけるだろう。しかし、真実を話せば、自分は失敗作の烙印を押されることになる。


 自身から正体を明かす潜入員など、あってはならない。


 そうだ。そんな事はあってはならないのだ。


 だというのに"私は"……この開こうとしてる口を止められなかった。


ライザ:「……千代さん、アリスさん。内緒にするのは、得意な方ですか?」

アリス:「? 自慢じゃねぇけど口は硬いぜ、ですわ」

立花 千代(GM):「? えっと、ライザ君——」


 しかし、ここで3人の元に人影が近づいてくる。アリスと千代にとっては見知らぬ人物だが、ライザは彼が首元につけた紋章がUGNのものであることを見抜けるだろう。


UGN役員:「話の途中すまない。ライザ君、少しいいだろうか」

ライザ:「——。ええ、構いません。どうしましたか」

UGN役員:「書類や寮の件で問題が発生してしまってね。すまないが少し顔を貸してくれるかな」

ライザ:「分かりました。案内してください」 若干ぎこちない笑顔を浮かべて答えます。

アリス:「……次の授業も近いし、先生に事情は説明しとくぜですわ」

ライザ:「お願いします。では、また後で」


 ここでライザはUGN職員に連れられ、彼女たちから離れることになった。


ライザ:「(そうだった。僕は職務を放棄するわけには、いかないんだ)」

「(たとえ、どれだけ感情移入しても。職務が終われば、ここ《アカデミア》を去るのだ)」


「(この仮面カヴァーを、外すわけにはいかない)」


 ふと空を見上げるとそこには大きな雲が学園へと掛かり始めていた。澄んでいた筈の空が、隠れてゆく。

 君たちは別れる。その心が曇ったまま。

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