終 「聖夜、傍には君がいて」
ジャラジャラジャラ――。
煙草の煙が充満する中、部屋の中には
今日はクリスマスイブ。聖夜恒例、涼太の家での麻雀大会に勤しんでいる。
メンバーは、僕と涼太、それに涼太の4つ上の兄と黒木家の
イブまでの間に、晴夏と結以はまた一悶着あるかと思ったが、学校にいる限りでは何も起きなかった。
おそらく文明の利器的通信手段を使ったか、直接どちらかの家で相談をしたのだろう。学校が主となる舞台設定とは言え、必ずしもイベントが校内で起きるとは限らない。こうなってしまえば、もう僕はお手上げである。
海斗の言っていた駅前にも行こうかと思っていたが、さすがに屋外で延々と彼らを追いながら会話も聞き続けるというのがあまりにも困難な事だというのは、少し考えれば容易に分かる事だ。おそらく最も重要なシーンではあるはずだが、ここは無理をせず、成り行きを見守ることにした方が良い。
また年明けにでも様子を伺えばいいだろう。今日は、ここのところ迷惑を掛けっ放しだった涼太に、付き合うことにした。
現在の麻雀の局面は
しかし今回の対局では、既に涼太兄は振り込みが嵩み7,000点と風前の灯、逆に涼太が38,300点で大きくリードしている状況である。ちなみに僕は29,400点、涼太父は25,300点と言った所で、リードされているとは言え、まだどちらも1位を狙える状況だ。
親は
この局の
しかし
その後、涼太の
そして迎えた東4局。
現在の点数は先程の涼太の
今回の配牌は、
とりあえず、基本的には
自摸るうちに索子とは関係のない
周囲を見渡すと、涼太兄は明らかに手が苦しいことが分かる表情をして、
涼太は既に
緊張感が漂う中、次の自摸は七索。三索こそ来なかったが、恐れていた事が起きてしまった。
しかしもう後は自分を信じるしかない。対面の涼太から圧力を感じるが、ここは勝負だ。
「立直」
1000点棒を供託し、立直を宣言。僕はこの時のために取っておいた西を、横に寝せて捨てる。
周囲から一瞬、警戒の視線を感じた。門前である以上、僕の手の高さは分からないが、それでも親の立直に振り込むわけにはいかないはずだ。
ふと腕時計を見ると午後10時。夜も随分と深まって来た。
手牌を指で弄びながら、ふと海斗と晴夏の事を思い出す。
2人のデートは上手く行っているだろうか。そもそもちゃんとデートとしての体を成しているだろうか。
しかし、僕がそんなことを考えたところで何が出来るわけでもない。ただ僕は彼らの成功を願うことしか出来ない。
――聖夜、2人が結ばれることを僕は祈る。
そして僕の最後の自摸が終わり、
――と思われたその時、僕は最後の最後に
「栄!」
彼が捨てた最後の牌は、六索。まさしく僕が求め続けていた牌だ。
僕は手牌を公開する。自摸では和了れなかったが、
そのおかげで、僕の手は跳満。満貫を超えて跳ね上がる。
跳満により僕の点数は46,100点となり、涼太を上回った。加えて涼太兄の持ち点は0点を切るため、「
「くっそ、最後に譲次に持ってかれたなー」
「ははは、そういう事もあるさ。また次はどうなるか分からないよ~」
涼太が悔しがる中、洗牌をして次の対局に備える。
ツいてる。今日はいけるかもしれない。
そんな時、ふと妙な考えが脳裏を
――海斗と晴夏が結ばれたら、そこで物語が終わる可能性も大いにあるのでは?
その瞬間、僕の意識は跳ね飛んだ。
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