第16話 予定
「それは素行調査だな」
五時限目。教室を移動した俺は、先に来て一人で席に着いていた
「素行調査? なんでまた」
「大方、友達が悪い先輩に
「だといいけど」
千里の言う事は一理あるし、俺もそう願いたいのだが、
「まぁ、
「モてねーよ、別に」
どいつもこいつも、俺をそういうキャラにしたいらしいが、俺からしてみれば、仲のいい知り合いがそこそこいると言うだけで、そこから恋人に関係が発展するかどうかは別問題で、むしろ関わりが少し薄いくらい方が発展しやすいんじゃないかとすら俺は思っている。近過ぎる関係性も考え物とかそういう話だ。
「まぁ、本人の自己評価はどうであれ、
「……なぜ、そっちをチョイスする」
普通、隣の
相変わらず千里は、独特の感性をしている。そういう意味では、
意外と話し始めたら、意気投合したりして。
「ところで話は変わるが、今度の土曜日もし暇なら、どこか遊びに行かないか? ほら、前にゴールデンウィーク中、どこかのタイミングで遊びに行こうって言っていただろ?」
「あー」
確かに、そんな話したな。
「けど、土曜日か……」
「なんだ、都合が悪いのか?」
「ちょうど先約が入ってて。二時に人と待ち合わせしてるんだ」
「デートか?」
「違うわ」
多分。
「冗談冗談。じゃあ、金曜日ならどうだ? 隆之のバイトもないし、三連休の頭だから羽目も外しやすいだろう」
「金曜日は……別にいいけど。羽目外すつもりなのか?」
「さぁー。どうだろう?」
そう言って千里が、意味ありげにニヤリと笑う。
こいつの場合、本当に有りそうで怖い。
「でも、どこ行くんだ? どこか
「うーん。映画なんてどうだ? 友人が勧めてくれたやつがあるんだが、なかなか一人で行く勇気がなくて」
「……」
まぁ、別にいいか。どうせ、こういう機会でもないと映画なんて
「ちなみに、どういう映画がなんだ? それ」
「アニメ映画なんだが、なんでも大人が観ても泣けるやつらしい」
「あー。一昨年ヒットしたやつみたいな?」
世界的にメガヒットしたあの映画は、俺も鈴羽に誘われて映画館でちゃんと観た。内容もさることながら、何より映像が
「てか、アニメ映画なんて観るんだな、千里」
勝手に、そういうのとは無縁な生活を送っているとばかり思っていた。
「まぁ、確かに、映画館で観る事はないかな。けど、テレビで放映されたやつは、たまに観たりするぞ。一昨年のアレも話題になっていたので、テレビ放映された際にはしっかり観させてもらった。いい作品だったな、アレは」
「あぁ。特に前半から後半への移り変わりというか、雰囲気の変化が
前半と後半では、内容が全くと言っていい程に違い、映画を観る前のイメージをあの変化がいい意味で裏切ってくれた。
さすが、プロである。
「いつも思うのだが、ああいうのはどうやって思い付くんだろうな。我々とはやはり、脳の作りが違うのだろうか?」
「うーん。どうだろう? 種の分からないマジックみたいなもので、意外とやりだしたら物語を作る手法的なものが徐々に見えてくるものなのかもしれないけど、結局のところ、それを上手く遣いこなせる人間を天才とか才能のある人って言うのかもな」
まぁ、どちらにしろ、俺のような人間には程遠い話ではあるが。
マジックは種を知らない方が面白い。世の中には知らない方がいい事もたくさんあるだろう。
「で、だ。急に話を戻して申し訳ないんだが、金曜日はオッケーという事でいいんだよな」
「あぁ。待ち合わせの場所と時間は、この前と同じでいいか?」
「うん。それで大丈夫だ」
にしても、ひと月に二度も映画を観に行く事になるとは……。ここ半年は一度も行っていなかったのに、重なる時は本当に重なるな。
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