第1話 ②


「ネズさん外に出られるのって本当なの?」


『あ、その………』

『そうだよ!僕達はテト様以外言語通じないしいいでしょ教えて!』


 鼠達はテトの背中の方に飛んでくっつくと、テトは空に浮かぶ。


「え?何処に行くの?」


『どこって………お外だよ!!』

「え!?で、でももうすぐデスが来る時間だよ?」


『だから早く行こう!』


 鼠達がそう言ってテトを引っ張ってどこかへと向かってると、鼠のうちの一匹が撃ち落とされる。


「電鼠さん!」

「テト、まさかお前が逃げようとするとはな。………心外だぞ」


『テト!あんな奴に耳を貸すな!あいつは外の世界では悪いやつなんだ!』


「え、でも………」

「鼠ども、テトを誘惑するな」


 デスはそう言って鼠に向かって無数の電撃砲を撃つ。鼠達は何とか避けていた。


「鼠さん!もういいよ………このままじゃ、危ないよ!」


『僕達はテトに知って欲しいんだ!この世の全てを!』


 そして、何かにぶつかるような衝撃を受けたテトは強く目をつぶった。



 ✱



 目を覚ますと、知らない地面に寝ていた。


「………木?」


 起き上がると、何かに押される感覚に襲われた、"風"だ。


「本で読んだ通りだ………無限に続く青い空!!」


 テトは途中で落ちていた銀と木の横笛を拾い、ひたすら森から出るために走った。


 開けてきた視界には………


「うわぁぁ………凄い広い!」


 広大な草原と綺麗な青空に雲が映った。


『これが外………これが世界だよ!』


「電鼠さん!………これが、外なんだ」

『でも、これでも一部なんだよ!』


「へ!?そんなに広いんだね!」


 テトは感心しながら草原に向かって走った。


『テト!まずは何する?』


「んー………人が沢山住むっていう街に行きたい!」


『分かった!なら僕達が運んであげるよ!』

「いや、私は歩いていくよ!もっと色んなものを見たいから!」


『分かった!』


 テトは裸足で痛いと思ったものの、草原を見渡す度に痛みなんか忘れて走り出す。


 自分をどこかへ導くように吹く風

 無限の自由を許された大地

 何かが出てきそうな森


 どれもこれも、何も無い空間にいたテトには感動するものばかりだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る