第1話 ①

 テトは目を擦りながら不思議とスッキリとした頭を起こす。


「………デス……?」

「テト、起きたか。調子はどうだ?」


「うん。元気だよ」


 デスはテトを抱き上げると、歩き始めた。しかし、その行先は不明だ。


「デス、どうして私は痛いことしなくちゃいけないの?」


「テト、お前には強くなって欲しいんだ。そのためには色んな抗体を作らなければならない。」


 ふと立ち止まったことに気がついたテト。デスの目線の先には………


「泉?」


「ああ、この泉は 女神の住む泉。女神ヘラ!いるだろう」


 デスはそう言って金のコインを投げると、泉は淡い光を放ち、中心から影が見えてきた。


『女神はもっと敬いなさ』

「テト、なにか願うんだ心の中でな。こいつはその願いを読み取ってくれる」


「ほんと?」


『はぁ………デス様が言うんですから仕方ないです。テト、汝は何を願う』


 テトは目を閉じて強く願った。

 "外の世界に出たい"と。

 その願いを読み取ったデスは少し微笑みながら静かに頷いた。


『分かりました。………叶うかどうかは不明ですけど、叶えてみせましょう』


「?テト、何を願ったんだ?」


「ひーみーつー」


 テトはとても嬉しそうな顔をしてルンルンと歩いていった。


 ✱


『外に出たい………か』


 二人が去って静かになった泉ではヘラは苦い顔をして考えていた。


「テトがそう願ったのか?」


『まだ居たんですか!?………違いますよ、私の願いです。少しくらい外の世界に行ってみたいものですよ』

「………いいか、テトを外に出すことは絶対に許さないからな」


 デスのその殺意の篭もった目を向けられて、ヘラは少し目を伏せるも微笑んだ。


『貴方は相当彼女にご執心なようですね。あの子の………"血統"ですか?』


「まぁそうかもな。………だが、あいつは俺の大切なものだ。外に出せば簡単に汚される。」


 デスはそう言って森から去っていった。



 ✱



「………願い叶えてくれるかなぁ」


 テトはベットに寝転がってそう考えていた。

 デスも誰も来ないので、本人は暇なのだ。


「寝飽きたし………そうだ!」


 テトは引き出しから銀色の金具がついた木の横笛を取り出す。そして、銀色の金具の部分に口を当てて、息を吐く。


 フォーフォー………


 その音色は少し鈍くも透き通っており、とても美しく飽きない音色だった。

 一時すると、テトの周りに沢山の光る何かが集まっていた。


「電鼠さん!今日も遊びましょー」


『いいよー!何するの?』

『僕は鬼ごっこしたい!』

『僕は………外に出たい!』


『やめなって!デス様に怒られるぞ!』


 外に出たい………?外に出られるの?


 テトは一瞬時が止まったように感じた。

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