目指すは最果ての地"ユートピア"

白兎P

第一章 外の世界と籠の中

第1話 とある場所の部屋


「デスさんお願い!私を外に出して!」


「テト、それは無理だ。………いいか?外の世界は酷く、とても醜く、危険なんだ」


 小さな女の子ーーテトと呼ばれた子は、三十代に見える男の人、デスに必死に部屋から出してもらうことを望んだ。


「テト、お前は知らないかもしれない………そうだ、こいつを倒したら外に出してやろう」


 デスはそう言って部屋から出た。

 テトはきょとんとして突っ立っていると、突然地響きがなり、その地響きはだんだん酷くなっていく。


「な、何事………」


 自身の場所が暗くなったと思い、上を見あげれば、そこには巨大な鼠が緋色の目を光らせテトの方を見ていた。


「……巨大鼠!?」


 チュウチュウと、巨大鼠はテトの方を見て口から大量の水を流す。

 唾液だ。恐らくテトを食料として見てるのだろう。


「わ、私は食べても美味しくないよ!」


「どうしたテト。これくらい序の口だろう」

「そ、そんなことないよ!私は……戦ったことないし!」


 その時、上から鋭い爪が降ってきた。テトは急いで横に走る。


「っ痛い」

「終わりか……黒炎のブラッドシェル


 デスが突然現れ、手を翳すと鼠の足に黒くいかにも不気味な炎が現れて鼠を一瞬で消し去った。


「………」


「テト、分かったか。あの鼠は外でも雑魚に等しいんだぞ?」

「………う、うん。ごめんなさい」


 テトはデスの足にしがみついて、涙目で謝罪を述べた。


 ✱


 テトは暇で仕方がなかった。

 その空間はテトの思ったものを生み出す能力があり、不自由はない。

 だけど、彼女には必要はなかった。


 なぜなら、"外の世界"を望んでも何も無いから。


 ✱


「リンゴ?」


「ああ。リンゴというのはな、魅了する悪の果実とも呼ばれ、大変危険なものなんだ」


 そう言ってデスは懐から、真っ赤だが少し薄ピンクな場所もあるとても美味しそうな"リンゴ"を取り出した。


「なんでそれがあるの?」


「テト、お前にはいざと言う時のためにリンゴに対する抗体を作ってもらわなければならない」


 デスはその言葉と共にテトの口に無理やり押し込んだ。

 テトは驚いて、飲み込んでしまった。このリンゴは手のひらサイズより少し小さいため直ぐに飲み込めるのだ。


「っ………から、だが…いたいの」

「耐えろ。直ぐに治まる」


「いや、だ………くるしいよぉ」


「頑張れ」


 テトはキツすぎるために、息を切らし潤んだ目をしていた。そのままテトはデスの膝の上で横になる。

 デスはテトの背中を摩ってあげていた。


「はぁはぁ………」


「………寝たか」


 テトは次第に言葉を発しなくなり、とうとう目までも瞑ってしまった。

 デスはテトを横抱きにしてベットまで運び寝かす。


「………デス様」


「ネメシスか、目を覚ますまで頼む」


 ネメシスと呼ばれた包帯だらけで一つ目の描かれた不気味な人はデスに一礼してテトの眠る天蓋付きベットのそばに立つ。


「博士」

「ああ、今回も抗体完了じゃ」


「………テトは強い。」

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